「し、に、た、い。」
赤い空の下、私こと双葉碧はこの言葉を転がしていた。
お父さんもお母さんも私が男であればいいと思ってる。女なら生まれなくたっていいと思ってる。
結婚して家を出て男の子を産んでほしいと思ってる。
誰にも望まれなかった存在・それが私だ。
支えはSNSだけ。
私がいるのは豪邸の屋上だ。5階建てでシャンデリアはいっぱい。
でも正真正銘、私の家だ。
恵まれてるだなんて思わないで。
こんなののせいで私は一番苦しいの。
もし、20分以内に心の支えにしてるフォロワーからのメッセージが来なかったら、私は死ぬ。
別に音信不通とかじゃない。毎日ここで彼女からのメッセージを待つ。そして20分以内に来なかったら飛び降りるって決める。そうしたささやかな賭け。代償は私の命。
別に誰も私の存在なんて望んでない。
こっから飛び降りたところで警察が「自殺です」って判断して終わり。