2019年4月10日
・三年ほど前から胸が重い感じがあります。たいしたことはないと放置していたら、息切れが増えてきました。
・医師には心臓が弱っているかもしれないと言われました。
・もともとうちは心臓が弱い家系らしいです。詳しくは知りませんが、そういう理由で亡くなる人が多かったと。
・不安です。
2019年4月24日
・検査の結果が出ました。心臓の筋肉が弱っていて、心不全の一種だと言われました。
・先生からは薬を続けることが大事と言われました。忘れずに飲んでいます。
・体調に変わりはありません。
・不安です。
2019年5月8日
・相変わらず胸が重い感じがします。
・でも、病気とかには思えなくて。もしかしたらぼくは、恋をしているのではないかと思いました。
・だから心臓が、身体が、おかしくなっているのではないかと思いました。
・不安です。
2019年6月5日
・最近、ここへ来ることが楽しみになってきました。
・薬を飲むたびに、ぼくはあなたに生かされていることを実感します。
・薬を飲むたびに、ぼくはあなたとひとつになるような気がしてくるんです。あなたもそう思いませんか? 日を追うごとにひとつになるような。共同体に近づいていくような、そんな感覚が、あなたにもありませんか?
・不安?
2019年7月3日
・変わりはないです。もう何年も前から、ぼくは変わっていないんです。
・いいえ。昔からです。ぼくの生まれる何年も昔から、ぼくは変わらないんです。
・あなたもです。あなたもなにも変わっていない。こうして、ぼくを守ってくれる。
・昔からずっと、ぼくらはつながっていたんです。覚えていませんか?
2019年7月31日
・こんにちは。こんにちは。こんにちは。
・あなたは運命というものを信じますか? ぼくは信じています。目の前に存在しています。あなたはぼくの、運命の人です。
・薬が増えました。ありがとうございました。
2019年8月28日
・「変わりはないですよ」彼は私の顔を見ると、にこやかに笑ってそう告げました。変わりないんだなあ、と、思いました。
・処方せんがぼろぼろでした。前回のものも随分と古びた処方せんでした。私に会うために、大事にとっておいたのでしょうか。
・また会いにきてくださいね。ずっと一緒にいたいんです。
・午後の仕事だる〜
2019年9月25日
・ぼくはいつもあなたのことを想っています。でも、目をつむるといろんな人々の顔が目に浮かぶんです。
・彼女たちはどこへ行ったんでしょうか。あなたもいずれ、どこかに行ってしまうんでしょうか。悲しいことに、ぼくにはそれを知る術がありません。
・こんな結末を望んでいたわけじゃなかった。許さない。許さない。許してほしい。
・あーーーーーーーー
2019年10月23日
・どこかから、あなたを絞め◼️せと声が聞こえてくるのですが?
2019年11月20日
・ときどき視界がまっくらになるんです。彼女たちが目の前に並んでいるからです。なんなんでしょうね。あれらはいつもぼくのそばにいます。正直、どうでもいい。ぼくには関係ない。もう終わったことだし、どうせなら◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️。でもぼくは、本当はうれしいとも思ってるんです。あれらがそばにいると、うれしい。うれしい。かなしい。切ない。はい。ありがとうございます。
2020年12月18日
・そろそろで、いいですか?
※この日から彼は来局しなくなり、その翌年、カザミさんは退職届を出しました。薬歴内の文章で、あまりにも、と思うところは俺のほうで黒くつぶしています。原文を読みたい方はPCをご確認ください。



