どうも、ホラー映画好き薬剤師Aです。ここまで読んでしまった。おもしろかった。ゾクゾクした。昼間はすごい枚数をさばいて、ああようやく帰れると思ったらこんなフォルダを見つけてしまい、さらに帰れなくなりました。残業した甲斐があったというものですね。
読んでいて思ったのは、なぜカザミさんの夫となった◯◯さんは、この薬局に来ていたのかということ。
つまり、5番のテキストを書いた方と同じ疑問ですね。それさえなければ全体としてはあり得ない話ではないと思う。薬剤師と患者が恋愛、というのも絶対にないとは言い切れないし、カザミさんが彼の虜になっておかしな薬歴を書いてしまう可能性もゼロではない。倫理的な面や立場上、すごく考えにくくはあったとしても。
それで、俺なりに考えてみたんです。ふたりについて。
まず、カザミさんですね。俺も以前からこの店舗に何度か応援に来ていたから、カザミさんには会ったことがあります。いい人ですよね。気をつけたほうがいい患者さんの投薬の前には声かけてくれるし、薬を探してるとすぐに察してくれる。いつも気持ちよく仕事できました。と言っても、俺は彼女のなにを知ってるわけでもないです。忙しい日はあまり雑談もできなかったし。
強いて言うなら、結婚退職とは意外だったな、ということです。彼女は恋愛に興味がなさそうだったから。あるとき、カザミさんの投薬中に恋バナが聞こえてきたんです。患者さんがずっと自分の結婚の話をしていて、カザミさんは聞き役になっていて。それで、あなたは? ってカザミさんが振られたんですよね。カザミさんは、そんな予定ないですよ、って笑い飛ばしてました。たしかあれは、まだ夫となる彼とは出会ってないころかな。
偏見ですが、カザミさんってあまり化粧っ気もなくて、恋愛に疎そうでした。退職メールでも触れられていましたけど、会社以外での人との交流も薄いみたいですしね。俺はカザミさんのことをほとんど知らないですが、だからなのか、結婚と聞いて驚いたのを覚えています。
次に、カザミさんの結婚相手、◯◯さんについて。もちろん彼のことも俺はなにも知りませんが、彼のことは見たことがあります。
影のある、クール系でしたね。
俺の印象だと、彼は俳優の井原大雅によく似ていました。彼が映画『忍び寄る』で初主演を果たし、二◯二三年の邦画興行収入二位を樹立して脚光を浴びたことは記憶に新しいですよね。そこから俺は、同性ですが密かに彼のファンなんです。だからよく覚えていました。ただ、ここに書き込まれていた彼の印象とはあまりに違う。3番のデータでは、細身の青年と書かれていた。5番のデータではマッチョと。とても同一人物の造形を説明しているとは思えませんでした。やや怖い印象というところは、共通していますが。
俺が思うに、彼の顔は一定ではないんじゃないかと思うんです。
それは、女性の言う「今日メイク変えてみたの」とは違う。造形そのものが、変わる。誰に対しても好意的に見られるようにできている。振る舞いは取り繕えなくても、顔を偽ることができる。そういう、生きもの……生きもの? なんじゃ、ないかと。
すみません、オカルトな発想すぎましたね。
そして、ここからが大事な発見です。
彼の出身地についてです。
素人が調べたところでなにも出てきやしないと思ったんですけどね。彼の苗字、珍しいでしょう。多くの患者を見てきた俺も聞いたことがなかった。だから、フルネームと出身地で検索したらなにか出てくるかもしれないと、安直な気持ちで試してみたんです。本当に出てきました。
彼の一家……◯◯家は、この薬局とあるつながりがあるようなのです。
ヒントがあったのは、検索でヒットしたウェブサイトからでした。スマホ用に最適化もされていない、古めかしい市のホームページです。市内のマップといくつかの観光スポットが掲載されていて、そこに『旧◯◯家屋敷』の表記がありました。その住所がなんと、パソコンに登録してある彼の住所と一致していたのです。
◯◯氏が本当にそこに住んでいるのかはわかりません。掲載されている写真を見ると離れのようなものもなく、周囲は緑に覆われていて、素人目には住む場所があるようには感じませんでした。ですが苗字は一致しているし、彼がその地と関連しているのは間違いないと思います。
これはどういうことなんでしょう。
もしかしたら、この場所に隠されたひみ



