「天華君と柊詩。二人はお互いを想い合っているね」
「それは……」
「そんなはずはない! 俺とコイツは『菫花の陣』を展開するまでの協力関係なだけだ!」
柊詩の言葉に重ねるように、怜桜が即座に尖り声を上げる。
あまりにもきっぱりと否定する姿から、自分と違って怜桜は何とも思っていなかったのかと内心で落ち込んでしまう。ただ小倉にはそれさえ計算通りだったのか、呆れたように肩を落としただけであった。
「天華君。君は本当に見習いの頃から変わらないね。図星を言い当てられると、すぐに大声で言い訳する。そんなことではせっかく両想いでも相手に嫌われてしまうよ」
「言い訳ではない。事実だ。俺は愛や恋なんて信用しない。その結果として起こったのが『雪消の変』だ!」
「『本当に恋だけが原因だったのか』。それをこの十三年、調べてきた。なぜ『雪消の変』が発生したのか。そもそも『菫花の陣』とは何か。それを君たち二人が証明してくれると思った。そして一つだけはっきりしたことがある」
「何が判明したのですか?」
「君たちはお互いを愛し合っているが、『菫花の術』は暴走しなかった。それは『菫花の術』を使用した初代陰陽師と巫女の二人と同じだ」
訝しむように怜桜が目を細める。確かに小倉の言う通り怜桜も柊詩を想っていたとしたら、それは「菫花の術」で禁忌とされている「陰陽師と巫女が愛し合う」という項目に一致する。
怜桜を一方的に想っていた柊詩が儀式の失敗を引き起こしたと思っていたが、そうではないのか。
「どういうことだ? 初代陰陽師と巫女は愛し合っていたのか?」
「この『菫花の術』というのは、深い信頼関係を結んだ陰陽師と巫女が行うことで意味を成す。信頼も言い換えれば一つの愛なんだよ。自分の心を預けるということだからね。ただ愛情と憎悪は表裏一体の関係だ。愛が深ければ深いほどに負の感情となって暴走する——その結果として起きたのが『雪消の変』だ。柊詩の父親は、柊詩と柊詩の母親を深く愛していたからね」
伴侶への愛が深い分だけ、相手を独占したい欲と執着欲に塗れて、自分以外の人間や社会から切り離して束縛しようとする。
そんな拘束から逃れたい柊詩の母親と、妻子を自分だけのものにしたいと願った柊詩の父親。
二人の「愛」がすれ違ったことで起こったのが、「雪消の変」ということらしい。
「君たちの間に必要なのは、お互いの気持ちを正直に打ち明けて素直になることだ。芽生えた『愛』がすれ違わないようにね」
「気持ちを正直に……」
ぶるりと柊詩の身体が震える。自分の本音を口にするのが怖かった。
それを言ってしまったら、契約結婚時に結んだ約束を違えてしまうような気がしたから。何よりも怜桜に嫌われたくなかったから。
小倉から「雪消の変」の真相と両親が犯した罪を教えられた日から、愛や恋は巫女の役割を果たすのに愚かでわずらわしいだけと思うようになった。
そんな自分が恋慕を抱くのはおかしいと思っているが、それでも柊詩を信じてくれた怜桜には本当の気持ちを伝えたい。
ようやく覚悟を決めて口を開いた柊詩だったが、それより先に話し出したのは怜桜だった。
「それは……」
「そんなはずはない! 俺とコイツは『菫花の陣』を展開するまでの協力関係なだけだ!」
柊詩の言葉に重ねるように、怜桜が即座に尖り声を上げる。
あまりにもきっぱりと否定する姿から、自分と違って怜桜は何とも思っていなかったのかと内心で落ち込んでしまう。ただ小倉にはそれさえ計算通りだったのか、呆れたように肩を落としただけであった。
「天華君。君は本当に見習いの頃から変わらないね。図星を言い当てられると、すぐに大声で言い訳する。そんなことではせっかく両想いでも相手に嫌われてしまうよ」
「言い訳ではない。事実だ。俺は愛や恋なんて信用しない。その結果として起こったのが『雪消の変』だ!」
「『本当に恋だけが原因だったのか』。それをこの十三年、調べてきた。なぜ『雪消の変』が発生したのか。そもそも『菫花の陣』とは何か。それを君たち二人が証明してくれると思った。そして一つだけはっきりしたことがある」
「何が判明したのですか?」
「君たちはお互いを愛し合っているが、『菫花の術』は暴走しなかった。それは『菫花の術』を使用した初代陰陽師と巫女の二人と同じだ」
訝しむように怜桜が目を細める。確かに小倉の言う通り怜桜も柊詩を想っていたとしたら、それは「菫花の術」で禁忌とされている「陰陽師と巫女が愛し合う」という項目に一致する。
怜桜を一方的に想っていた柊詩が儀式の失敗を引き起こしたと思っていたが、そうではないのか。
「どういうことだ? 初代陰陽師と巫女は愛し合っていたのか?」
「この『菫花の術』というのは、深い信頼関係を結んだ陰陽師と巫女が行うことで意味を成す。信頼も言い換えれば一つの愛なんだよ。自分の心を預けるということだからね。ただ愛情と憎悪は表裏一体の関係だ。愛が深ければ深いほどに負の感情となって暴走する——その結果として起きたのが『雪消の変』だ。柊詩の父親は、柊詩と柊詩の母親を深く愛していたからね」
伴侶への愛が深い分だけ、相手を独占したい欲と執着欲に塗れて、自分以外の人間や社会から切り離して束縛しようとする。
そんな拘束から逃れたい柊詩の母親と、妻子を自分だけのものにしたいと願った柊詩の父親。
二人の「愛」がすれ違ったことで起こったのが、「雪消の変」ということらしい。
「君たちの間に必要なのは、お互いの気持ちを正直に打ち明けて素直になることだ。芽生えた『愛』がすれ違わないようにね」
「気持ちを正直に……」
ぶるりと柊詩の身体が震える。自分の本音を口にするのが怖かった。
それを言ってしまったら、契約結婚時に結んだ約束を違えてしまうような気がしたから。何よりも怜桜に嫌われたくなかったから。
小倉から「雪消の変」の真相と両親が犯した罪を教えられた日から、愛や恋は巫女の役割を果たすのに愚かでわずらわしいだけと思うようになった。
そんな自分が恋慕を抱くのはおかしいと思っているが、それでも柊詩を信じてくれた怜桜には本当の気持ちを伝えたい。
ようやく覚悟を決めて口を開いた柊詩だったが、それより先に話し出したのは怜桜だった。



