あやかしを鎮める契約夫婦ですが、恋だけは禁止です〜陰陽師の契約夫と契る3つの約束事〜

「条件は三つだ」

 人払いが敷かれた屋敷の最奥。屋敷の使用人でも、許された一部の者しか立ち入れない禁じられた一室。
 燭台のわずかな光が灯されただけの薄闇に包まれた室内で、この屋敷の主人にして上座に座る青年の凛とした低い声が響き渡る。

「一つ、恋をしたら即離婚。二つ、子は作らない。そして三つ、任務終了まで夫婦を演じる。この三つさえ守れるのなら、あとは何をしても構わない」

 そして切れ長の黒い両目を吊り上げると、目の前に正座する少女を睥睨する。
 並の人間なら恐れて逃げ出してもおかしくない威圧感のある眼差しだったが、少女はその目を真っ直ぐに見つめ返すだけであった。

「異論は?」

 普通なら傷付いて泣くと考えるだろう。でも少女にはどうしてもこの契約結婚を受けなければならない理由があった。
 どこか機械的にも無感情にも聞こえる言葉で端的に答えたのだった。

「つまり貴方様を好きにならなければ良いのですね」

 迷いの無い少女の即答に、さすがの青年も両眉を上げて「はあっ!?」と声を上げそうになる。
 予想外の答えに表面上は無表情を貫いていた青年は内心で戸惑うが、その間にも今の言葉が間違いではないと太鼓判を押すように少女は「安心しました」と続けたのだった。

「恋愛は苦手なんです。だってそんな愛や恋なんて感情は巫女の仕事をする際に、ただ煩わしくて邪魔なだけですから」

 笑顔で断言すれば、青年はぐうの音も出ないのか黙ってしまう。相手だって同じ考えなのは間違いない。
 そうでもなければ、国のためとはいえこんな契約結婚を申し出るはずがないのだから。

「さあ、私と契約夫婦を始めましょう……()()()()

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