この恋は上書き保存できない

「光莉、約束だからな」

 白い靄がかかったような視界の中で、中学生くらいの男の子が真剣な目をしていた。

「離れても、俺のこと忘れんなよ」

 その男の子がまっすぐに見ているのは、同世代くらいの女の子。

「うん、当たり前じゃん」

 女の子も真剣にうなずく。

「俺がいなくなったからって泣くなよ」

「泣かないし。そう言う――こそ、大丈夫?」

「はぁっ? 別に俺は光莉と離れてもさみしくなんかねぇし」

 彼は笑顔をうかべる。でも、その表情はさみしそうだった。

「素直じゃないよね、――は」

「うっせ」

 女の子は彼が持っている鞄についたキーホルダーにそっとふれた。

 水色のイルカ。女の子の鞄には、色違いのピンクのイルカのキーホルダーがついていた。

「私たちは、離れても大丈夫だよ。このキーホルダーを持ってると、――がずっと一緒にいるような気がするから」

「俺はそういうのわかんねぇけど。だってこんなのただの物じゃん」

「その割にはずっとつけてくれてるけどね」

 女の子がくすっと笑うと、彼は恥ずかしそうに髪の毛をさわった。

 そして彼は、「あのさ」と、そわそわと口を開いた。

「なに?」

「おれがいなくなっても、他の男と遊んだりするなよな」

「……ふふっ」

 女の子は、大人びた笑みを浮かべた。

「心配してるの? わたしが他の男の子を好きになったりしないか」

「は、はぁっ!? そんなんじゃ……」

「だいじょうぶだよ。わたしが好きなのは、――くんだけだから」

 あの時、一生君だけを好きでいると誓ったんだ。

 その男の子の名前は――。