◯夜の上空。霜月家の屋敷を上から見ている。
伯斗に大事そう抱きかかえられながら彼の棲家である屋敷に帰ってくる。
実家よりも大きく美しい屋敷に奈々は驚きを隠せない。伯斗はそんな彼女を愛おしそうに見つめている。
奈々「ここが伯斗が住むお屋敷なの?!」
伯斗「ああ。これから俺と奈々が棲む所。絶対に気に入ってくれる」
奈々(神様だから当たり前か…。でも…私なんかが此処に棲んでいいのかしら?)
奈々は不安げに赤くなった自分の髪の毛に触れる。
奈々(まだ私が火の巫女だったなんて信じられないのに。巫女の力を私が使えるとはとても思えないわ…)
申し訳なさそうに伯斗をチラッと見る。そんな奈々を伯斗は優しく微笑みかける。
伯斗「どうした?」
奈々「……なんでもない」
伯斗に悟られない様に目を逸らしはぐらかす(けれど奈々の考えはすでに見透かされている為、伯斗の中で更に彼女を幸せにしたいという思いが強まる)
◯霜月家・玄関。
地上に降り、霜月家の屋敷の中に入る2人。
2人を出迎えたのは、灰色の狼の妖で従者である律と屋敷に使える妖達。
律「おかえりなさいませ!!伯斗様!!」
妖達「おかえりなさいませ」
伯斗「ああ。ただいま」
律「この方が伯斗様が言っていた方ですね。まさに火の巫女そのもの…!!」
律は目を輝かせながら奈々を見る。奈々は恥ずかしさでアワアワする。
奈々「あ、あの…」
伯斗「あんまりジロジロ見るな。奈々が困ってる」
律「すみません。あまりにも綺麗だったものでつい。それに…」
奈々「?」
律はどこか切なげな目で奈々を見る。
律「陽菜様にとてもよく似ていらしたので…」
奈々「陽菜様?」
伯斗「先代の日の巫女の名だ。彼女も奈々と同じ火の巫女だった人だ。詳しい事はまた後で話す」
奈々(その人もこんな赤い髪をしていたのかな…?)
律は、はっとまだ奈々に自分のことを教えていないことに気づき改めて自己紹介と周りの妖達の紹介をする。
律「すみません!申し遅れてしまいました!僕の名前は律!氷狼神・伯斗様の従者で狼の妖です!!周りの妖達はこの屋敷に仕える優秀な使用人達でございます!!」
伯斗「此処にいる彼女の名は辻邑奈々。もう律から聞いていると思うが、俺の妻になる人で火の巫女だ」
奈々「あ、あの、よろしくお願いします…!!」
使用人の妖達は奈々を歓迎していたがその中に唯一歓迎せず妬みの目で奈々を睨みつけていた妖が一人。
伯斗のことをずっと想い続けていた狐の妖である女中の杏紗(あずさ)伯斗が自分の花嫁として連れてきた奈々のことを目の敵にしていた。(奈々はその事は当然知らないので、何故恨めしそうな目で見るのかと困惑する)
奈々(すんごい怖い顔で私を見てるけど…)
律「狐族の杏紗が奈々様の侍女として仕えさせます。何か分からないがありましたら杏紗にお伝えください」
奈々「え…ええ…」
律「杏紗。挨拶を」
杏紗「……これからよろしくお願いいたしますね?奈々様」
奈々「あ、はい。よろしくお願いします。杏紗さん…(これから大丈夫かしら…)」
口元は笑みを浮かべているも目が全く笑っていなかった杏紗。
奈々はこの屋敷での生活に更に不安を覚える。
杏紗の様子を見ていた伯斗は何かを察しているが今は泳がせる。
◯火鷹村。辻邑家の瑠璃奈の部屋の前。
伯斗達が去った翌日。
目を覚ました瑠璃奈は両親や静流達に昨晩起きたことを改めて聞き愕然とする。
瑠璃奈は自室に引き篭もり、無能だった筈の姉が実は火の巫女であり美しい氷狼神の花嫁に選ばれた事実を受け入れられず激しい怒りをぶつけ部屋を滅茶苦茶にしてしまう。
心配している静流は扉越しに彼女の様子を伺うがあっちに行けと拒まれてしまう。
静流「瑠璃奈。大丈夫…?」
瑠璃奈「うるさい!!!!あっちに行って!!!今は会いたくないって言ってるの!!!!」
静流「でも、瑠璃奈のことが心配で…」
瑠璃奈「だったら1人にして!!!もう放っていてよ!!!!!」
静流「……わかったよ」
静流は諦めた様にその場を去る(内心では心配はしてるもののこれ以上何か言ったら火に油を注ぐだけだと口を噤む)
◯瑠璃奈の自室。
投げたり壊したりした物が散乱した部屋の真ん中で頭をボサボサで親指の爪を噛んで悔しがる瑠璃奈。
自分より下の立場だった姉が今度は上の立場にいることが許せないこと、伯斗を姉に奪われたことを許せず奈々に呪詛の様な恨み言をブツブツと呟く。
バチバチと黒い電流が瑠璃奈の怒りに応える様に纏わりつく。
瑠璃奈「なんであんな女が火の巫女なのよ。許せない。しかも、あんな美しい人の花嫁になるなんて…!!」
瑠璃奈の脳裏に火の巫女の証である赤髪と翠玉色の瞳を持った奈々の凛々しい姿が過り更に憎悪が増す。
すると、怒り狂う彼女の肩に部屋の小窓から現れた一匹の黒い蝶が静かに止まる。
瑠璃奈「きゃあ!!む、虫…!!!」
虫が苦手な瑠璃奈は慌てて蝶を払おうとする。
すると突然、怪しげな声が瑠璃奈の頭の中に囁かれる。
蝶『可哀想な雷神の許嫁。美しき雷の乙女よ』
瑠璃奈(な、何?!蝶が人間の言葉を話してる…!!)
蝶『私がお前を怒りと苦しみから解放してやろう。あの火の巫女の存在は私にとっても邪魔なのだ』
瑠璃奈はその言葉を聞いて目の色を変える。虫に対する恐怖が消える。
瑠璃奈「アナタ、何者?ただの蝶じゃないみたいだけど」
蝶『フフ…私の言う通りに動けばいずれ分かる。お前が持つ雷の異能以上の力と名誉も全て手に入る。神でさえもな…』
瑠璃奈(神様も…?じゃあ…あの氷狼神様も私の旦那様に…?!)
瑠璃奈はニタリと笑う。
瑠璃奈(あんなヘタレ雷神なんかよりも素敵な神様を私のものに…!!)
蝶『どうする?私と手をくるか?』
歪な笑みを浮かべた瑠璃奈は突然現れた不気味な黒蝶の案にのってしまう。後悔はなく自分に運が向いてきたと気持ちが向上していた。
瑠璃奈「面白そうだからのってあげるわ。それに私を見下してきたお姉様にはキツくお仕置きしてあげなきゃ♪」
瑠璃奈の妄想で出来た伯斗の姿を思い浮かべながら彼女は恍惚な笑みを浮かべてきた。
瑠璃奈(待っていてくださいね?私の未来の旦那様ぁ♪)
伯斗に大事そう抱きかかえられながら彼の棲家である屋敷に帰ってくる。
実家よりも大きく美しい屋敷に奈々は驚きを隠せない。伯斗はそんな彼女を愛おしそうに見つめている。
奈々「ここが伯斗が住むお屋敷なの?!」
伯斗「ああ。これから俺と奈々が棲む所。絶対に気に入ってくれる」
奈々(神様だから当たり前か…。でも…私なんかが此処に棲んでいいのかしら?)
奈々は不安げに赤くなった自分の髪の毛に触れる。
奈々(まだ私が火の巫女だったなんて信じられないのに。巫女の力を私が使えるとはとても思えないわ…)
申し訳なさそうに伯斗をチラッと見る。そんな奈々を伯斗は優しく微笑みかける。
伯斗「どうした?」
奈々「……なんでもない」
伯斗に悟られない様に目を逸らしはぐらかす(けれど奈々の考えはすでに見透かされている為、伯斗の中で更に彼女を幸せにしたいという思いが強まる)
◯霜月家・玄関。
地上に降り、霜月家の屋敷の中に入る2人。
2人を出迎えたのは、灰色の狼の妖で従者である律と屋敷に使える妖達。
律「おかえりなさいませ!!伯斗様!!」
妖達「おかえりなさいませ」
伯斗「ああ。ただいま」
律「この方が伯斗様が言っていた方ですね。まさに火の巫女そのもの…!!」
律は目を輝かせながら奈々を見る。奈々は恥ずかしさでアワアワする。
奈々「あ、あの…」
伯斗「あんまりジロジロ見るな。奈々が困ってる」
律「すみません。あまりにも綺麗だったものでつい。それに…」
奈々「?」
律はどこか切なげな目で奈々を見る。
律「陽菜様にとてもよく似ていらしたので…」
奈々「陽菜様?」
伯斗「先代の日の巫女の名だ。彼女も奈々と同じ火の巫女だった人だ。詳しい事はまた後で話す」
奈々(その人もこんな赤い髪をしていたのかな…?)
律は、はっとまだ奈々に自分のことを教えていないことに気づき改めて自己紹介と周りの妖達の紹介をする。
律「すみません!申し遅れてしまいました!僕の名前は律!氷狼神・伯斗様の従者で狼の妖です!!周りの妖達はこの屋敷に仕える優秀な使用人達でございます!!」
伯斗「此処にいる彼女の名は辻邑奈々。もう律から聞いていると思うが、俺の妻になる人で火の巫女だ」
奈々「あ、あの、よろしくお願いします…!!」
使用人の妖達は奈々を歓迎していたがその中に唯一歓迎せず妬みの目で奈々を睨みつけていた妖が一人。
伯斗のことをずっと想い続けていた狐の妖である女中の杏紗(あずさ)伯斗が自分の花嫁として連れてきた奈々のことを目の敵にしていた。(奈々はその事は当然知らないので、何故恨めしそうな目で見るのかと困惑する)
奈々(すんごい怖い顔で私を見てるけど…)
律「狐族の杏紗が奈々様の侍女として仕えさせます。何か分からないがありましたら杏紗にお伝えください」
奈々「え…ええ…」
律「杏紗。挨拶を」
杏紗「……これからよろしくお願いいたしますね?奈々様」
奈々「あ、はい。よろしくお願いします。杏紗さん…(これから大丈夫かしら…)」
口元は笑みを浮かべているも目が全く笑っていなかった杏紗。
奈々はこの屋敷での生活に更に不安を覚える。
杏紗の様子を見ていた伯斗は何かを察しているが今は泳がせる。
◯火鷹村。辻邑家の瑠璃奈の部屋の前。
伯斗達が去った翌日。
目を覚ました瑠璃奈は両親や静流達に昨晩起きたことを改めて聞き愕然とする。
瑠璃奈は自室に引き篭もり、無能だった筈の姉が実は火の巫女であり美しい氷狼神の花嫁に選ばれた事実を受け入れられず激しい怒りをぶつけ部屋を滅茶苦茶にしてしまう。
心配している静流は扉越しに彼女の様子を伺うがあっちに行けと拒まれてしまう。
静流「瑠璃奈。大丈夫…?」
瑠璃奈「うるさい!!!!あっちに行って!!!今は会いたくないって言ってるの!!!!」
静流「でも、瑠璃奈のことが心配で…」
瑠璃奈「だったら1人にして!!!もう放っていてよ!!!!!」
静流「……わかったよ」
静流は諦めた様にその場を去る(内心では心配はしてるもののこれ以上何か言ったら火に油を注ぐだけだと口を噤む)
◯瑠璃奈の自室。
投げたり壊したりした物が散乱した部屋の真ん中で頭をボサボサで親指の爪を噛んで悔しがる瑠璃奈。
自分より下の立場だった姉が今度は上の立場にいることが許せないこと、伯斗を姉に奪われたことを許せず奈々に呪詛の様な恨み言をブツブツと呟く。
バチバチと黒い電流が瑠璃奈の怒りに応える様に纏わりつく。
瑠璃奈「なんであんな女が火の巫女なのよ。許せない。しかも、あんな美しい人の花嫁になるなんて…!!」
瑠璃奈の脳裏に火の巫女の証である赤髪と翠玉色の瞳を持った奈々の凛々しい姿が過り更に憎悪が増す。
すると、怒り狂う彼女の肩に部屋の小窓から現れた一匹の黒い蝶が静かに止まる。
瑠璃奈「きゃあ!!む、虫…!!!」
虫が苦手な瑠璃奈は慌てて蝶を払おうとする。
すると突然、怪しげな声が瑠璃奈の頭の中に囁かれる。
蝶『可哀想な雷神の許嫁。美しき雷の乙女よ』
瑠璃奈(な、何?!蝶が人間の言葉を話してる…!!)
蝶『私がお前を怒りと苦しみから解放してやろう。あの火の巫女の存在は私にとっても邪魔なのだ』
瑠璃奈はその言葉を聞いて目の色を変える。虫に対する恐怖が消える。
瑠璃奈「アナタ、何者?ただの蝶じゃないみたいだけど」
蝶『フフ…私の言う通りに動けばいずれ分かる。お前が持つ雷の異能以上の力と名誉も全て手に入る。神でさえもな…』
瑠璃奈(神様も…?じゃあ…あの氷狼神様も私の旦那様に…?!)
瑠璃奈はニタリと笑う。
瑠璃奈(あんなヘタレ雷神なんかよりも素敵な神様を私のものに…!!)
蝶『どうする?私と手をくるか?』
歪な笑みを浮かべた瑠璃奈は突然現れた不気味な黒蝶の案にのってしまう。後悔はなく自分に運が向いてきたと気持ちが向上していた。
瑠璃奈「面白そうだからのってあげるわ。それに私を見下してきたお姉様にはキツくお仕置きしてあげなきゃ♪」
瑠璃奈の妄想で出来た伯斗の姿を思い浮かべながら彼女は恍惚な笑みを浮かべてきた。
瑠璃奈(待っていてくださいね?私の未来の旦那様ぁ♪)



