繰り返し見る悪夢がある。
いや、あれは全部、本当の出来事だ。
悪夢ならどれだけよかったか。

母さんは、僕のヒーローだった。
明るく天真爛漫な性格で誰が相手でも親切で優しい。

外法なんてこの世の理から外れたものを軽々と扱って、
苦しんでいる人達を救って守って。

そして笑って僕の頭を撫でてくれていた。

「コウちゃんなら私よりすごい外法使いになれる。ヒーローになれるよ」

そんな母さんが僕はいつも誇らしかった。
父親なんかいなくても何一つ寂しくなかった。

だけど全部嘘だった。
僕はヒーローなんかになれる器じゃなかった。

あの日母さんが目の前で八つ裂きにされた日、
あのケダモノはこう言った。

「これでお前もオデと同じ一人ぼっちだな」

実際その通りだ。

あの日以来、僕は誰にも優しくできなくなった。

友達にも好きな女の子にも。
大好きだったレイジ叔父さんやリョウちゃん。
そしてあのちっちゃなキミカちゃんにも。
そしてもちろん自分にも。

首だけになった母さんの皮を切り裂き、肉を削ぎ落して
外法頭をこしらえた時、僕は泣けなかった。

僕は笑ったんだ。
あれが笑いと言うのなら。

だから、母さん。
僕はきっとあんたを一生許せない。