昔々、その昔。
京都がまだ天皇のおわす都であった頃のお話。

とある高貴な身分の落とし子にカガヒコと名付けられた男の子がいた。

このカガヒコはとても聡明な子供でたった八歳で大人でも難しい経を読み、加持祈祷を行って魔性退散、病魔退散を行えるほどの天才児であった。

しかし、大人たちは、そんな彼を薄気味悪がり、特に彼の右目を鬼のようだ。蛇のようだと意味嫌い、眼帯を押し当てて都から遠く離れた土地、湯浅の里へと流してしまった。

湯浅の里で寺の稚児として預けられたカガヒコであったが、その非凡な才能は、様々な人々を引きつけ、いつしか御曹司の名で、多くの民から慕われるようになった。

これを聞いて、面白くないのは、都の者たちである。
そんな幼児がいるはずがない、きっともののけの類か鬼の化身であろうと決めつけ、二百余りの兵を遣わし撃たせようとした。

兵士どもは荒くれで、たった八つの子供をやってたかって矢を浴びせ、刀で切付け、
カガヒコを守ろうとした大人はみんな殺してしまった。

この惨劇を目の当たりにしたカガヒコは気が触れ、自ら炎の中に飛び込んで命を立つ。

しかし、それで終わりではなかった。

幼児の恨みはあまりに強く、その魂は天狗とかし、この世に災いをもたらし続けた。多くの者が死んだ。

しかし、カガヒコを憐れんだ人々は天狗を討ち、その魂を鎮める。

正気に戻ったカガヒコは自らが成した罪悪の大きさに恐れ慄き、自らが招き入れてしまった地獄の汚れを押し留めるため、地獄に潜り神へとなった。

人々は童ノ宮を建立し、カガヒコと天狗の魂を慰めた。
これが童ノ宮稚児天狗大明神の縁起である。

オン アロマヤ テング スマンキ ソワカ。
オン ヒラヒラ ケン ヒラケンノウ ソワカ。