朱雀機関文書 :笑うカドにはワザワイ来る
怪異登録番号 :わー99
危険度 :松
対応プロトコル :
わー99は白虎機関が管理する■■県の山中に存在する■■神社の境内にご神体として安置されています。偽装シナリオ「廃屋の神社パターンB」に基づいて青龍機関から派遣された警備員を10名以上、玄武機関から派遣された神職の資格を有する職員を3名~5名のチーム体制で常駐させてください。
常に規制線を張り一般人が境内に侵入しないよう24時間警戒し、わー99に対して毎日三回の礼拝を行ってください。
またわー99による精神汚染を回避するため1週間に一度の頻度で人員交代のスケジュール管理を行ってください。
わー99は人語を操ることができるため話しかけてくることがありますが、決して言葉を交わしてはいけません。万が一、わー99の言葉に応答してしまった場合はすぐさま⬛︎⬛︎神社から離れ、安全な場所を確保した後、白虎機関本部に連絡し指示を待ってください。
※わー99は現在、逃走中です。白虎機関本部はわー99を神として奉り鎮めるプロトコルは無効と判断したため、こちらの対応プロトコルは破棄されます。
説明:
わー99は栃木県日光市⬛︎⬛︎町で発見された横幅2.6メートル、高さ4.6メートル、重さ300キロの巨大な岩です。
その表面には中年男性と思しき人面が浮かび上がっており、時折、その表情を変化させます。声をたてて笑うこともあり、俗に「笑ひ岩」と称されます。
所謂「夜泣き石」、「こそこそ石」に類する怪異と思われますが、その性質ははるかに凶悪です。
わー99は普段身動きしませんが、自らのカケラを飛ばすことで分身(わー99―α)を生成し、遠方から操ることができます。
わー99―αはこれと見定めた人間の外耳道に潜り込み、標的を嘲笑、罵倒し、トラウマを抉り出すことで悪夢じみた幻覚幻聴の虜にします。そして、標的の精神が崩壊寸前に至ると、標的の頭上にわー99、つまり本体がテレポーテーションし、その巨体で起き潰すことによって標的を圧死させます。
わー99―αは如何なる外科手術を持ってしても取り除くことはできませんが、加持祈祷によってその声を弱め、標的への影響を弱めることは可能です。
--------------------------------------------------------------------
※場所は■■県童ノ宮市郊外の白虎機関傘下の病院施設。
※白虎機関上級研究員柴崎ゼナとその秘書官姫宮アンナ、怪異に遭遇した一般女性塚森キミカ(13歳)、塚森家の外法使い塚森コウ(18)による議論を録音したもの。
「……これが今日、君達を襲った怪異の正式な登録文書ってわけだ。つまり、我々白虎機関はやつを神として崇め奉り鎮めようとしたが失敗した」
「えっ、えっ? じゃ、じゃあ、このままやったらユカリもあの怪異に、あのあっ、あっ……」
「無理して言葉にしなくていいよ、塚森キミカ。一応、君にも説明しておくべきだと思ったが、辛いならこの辺にしておこうか?」
「ヘ、平気です。せやけど、うちよりユカリの方が心配で……。ユカリの耳の中にはまだあいつの分身がおるってことなん?」
「……その可能性は高い。だから、彼女にはよりセキュリティーの高い地下病棟で休んでもらっている。青龍機関が派遣してくれたベテランの兵士、20名ががっちりガードしてくれているよ」
「せ、せやけど何でこんな酷いことするんやろ? 仮にも神様として崇められてたのに……」
「そう言えば――、飯田サダハル先生の絵本シリーズの『ちごてんぐ』って童ノ宮の神様がモデルなんですよね。……可愛いですよね、ちごてんぐ。強くて優しいし」
「しかし、本来神とは優しいだけの存在じゃない。祟り――、つまり災いをなすがゆえに崇め奉り、この世から遠ざけたり鎮めるべきものだ。それに神と呼ばれる存在達が自らそう名乗ったわけでもない。我々人間がそう勝手に分類しているだけ。味方をしてくれる怪異と、そうでない怪異をね」
「それはそうかも知れへんけど……う、うちは何度も童ノ宮の神様に助けてもらてるし、だから……」
(キミカのすすり泣く声)
「あ、ああ、ごめんね。……君に言う必要はなかったね。本当に済まない」
「で、でもゼナ博士! あの怪異、逃走したとはいえ加持祈祷に力が押さえられるんですよね? ひょっとしたらキミカちゃんの唱え事のお陰で……」
「そ、そうかも知れないな。私の≪センチビード≫だけじゃやつを捕らえるのは難しかっただろうし、長谷川ユカリが今も命を繋げられているのは君の唱え事が本物だったお陰だと思うよ」
「でも、コウちゃんは? コウちゃん、うちらをかばってあんな酷い怪我……」
「ん。それは……」
「もし、このままコウちゃんが目ェ覚まさへんかったら、うちどないしたら……」
「――――おい、さっきからうるさいぞ。人の枕元で」
「コ、コウちゃん!」
「ゼ、ゼナ博士! 塚森さんが目を覚まされました!」
「うん。私も君の隣で見ているからわかるよ、姫宮アンナ」
(舌打ちする音)
「ああ、クソ……。全身がバラバラになったみたいだ」
「丁度いいタイミングだから君にも伝えておくよ、塚森コウ。……私達は子供達を連れて童ノ宮に朝一で向かう。君の叔父上――、塚森レイジに祓いの儀を執り行ってもらうためにね」
「……僕は? 一応、あいつに対抗するために外法の練り方、思いついたんだけど?」
「あ、あかんて。コウちゃんはジッとしとかんと……。コウちゃん、あの怪異に殺されるところやったんやで?」
「……誰に物言ってんの? お前こそ自分じゃ何もできないくせに! いつも血塗れになってるだけのガキは黙ってろよ!」
「……っ!」
(椅子から立ち上がる音)
「ちょっとそれは言いすぎですよ! キミカちゃんはあなたを守ろうとして――、謝ってください!」
「……はぁ? ……初めて見る顔だけど、あんた誰?」
「ひ、姫宮アンナです。ゼナ博士の秘書の」
「いや知らねーって。……そんなことより、ゼナ博士。キミカに怪異記録なんか読ませないでくださいよ。こいつ、まだ十三の子供ですよ。あんなエグイもん、耐えられるわけない。……ホント、少しは考えろよ」
「……子供ねぇ」
「は?」
「いや、子供は君の方じゃないのかな。そして、現実に耐えられないのも君の方じゃないのかな、塚森コウ?」
「あぁ!? 何だぁテメェ! このミソジの■■■■■が!」
「……ほぉ?」
※以下、数十分に渡って不毛な罵り合いが続く。
※削除済み。
怪異登録番号 :わー99
危険度 :松
対応プロトコル :
わー99は白虎機関が管理する■■県の山中に存在する■■神社の境内にご神体として安置されています。偽装シナリオ「廃屋の神社パターンB」に基づいて青龍機関から派遣された警備員を10名以上、玄武機関から派遣された神職の資格を有する職員を3名~5名のチーム体制で常駐させてください。
常に規制線を張り一般人が境内に侵入しないよう24時間警戒し、わー99に対して毎日三回の礼拝を行ってください。
またわー99による精神汚染を回避するため1週間に一度の頻度で人員交代のスケジュール管理を行ってください。
わー99は人語を操ることができるため話しかけてくることがありますが、決して言葉を交わしてはいけません。万が一、わー99の言葉に応答してしまった場合はすぐさま⬛︎⬛︎神社から離れ、安全な場所を確保した後、白虎機関本部に連絡し指示を待ってください。
※わー99は現在、逃走中です。白虎機関本部はわー99を神として奉り鎮めるプロトコルは無効と判断したため、こちらの対応プロトコルは破棄されます。
説明:
わー99は栃木県日光市⬛︎⬛︎町で発見された横幅2.6メートル、高さ4.6メートル、重さ300キロの巨大な岩です。
その表面には中年男性と思しき人面が浮かび上がっており、時折、その表情を変化させます。声をたてて笑うこともあり、俗に「笑ひ岩」と称されます。
所謂「夜泣き石」、「こそこそ石」に類する怪異と思われますが、その性質ははるかに凶悪です。
わー99は普段身動きしませんが、自らのカケラを飛ばすことで分身(わー99―α)を生成し、遠方から操ることができます。
わー99―αはこれと見定めた人間の外耳道に潜り込み、標的を嘲笑、罵倒し、トラウマを抉り出すことで悪夢じみた幻覚幻聴の虜にします。そして、標的の精神が崩壊寸前に至ると、標的の頭上にわー99、つまり本体がテレポーテーションし、その巨体で起き潰すことによって標的を圧死させます。
わー99―αは如何なる外科手術を持ってしても取り除くことはできませんが、加持祈祷によってその声を弱め、標的への影響を弱めることは可能です。
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※場所は■■県童ノ宮市郊外の白虎機関傘下の病院施設。
※白虎機関上級研究員柴崎ゼナとその秘書官姫宮アンナ、怪異に遭遇した一般女性塚森キミカ(13歳)、塚森家の外法使い塚森コウ(18)による議論を録音したもの。
「……これが今日、君達を襲った怪異の正式な登録文書ってわけだ。つまり、我々白虎機関はやつを神として崇め奉り鎮めようとしたが失敗した」
「えっ、えっ? じゃ、じゃあ、このままやったらユカリもあの怪異に、あのあっ、あっ……」
「無理して言葉にしなくていいよ、塚森キミカ。一応、君にも説明しておくべきだと思ったが、辛いならこの辺にしておこうか?」
「ヘ、平気です。せやけど、うちよりユカリの方が心配で……。ユカリの耳の中にはまだあいつの分身がおるってことなん?」
「……その可能性は高い。だから、彼女にはよりセキュリティーの高い地下病棟で休んでもらっている。青龍機関が派遣してくれたベテランの兵士、20名ががっちりガードしてくれているよ」
「せ、せやけど何でこんな酷いことするんやろ? 仮にも神様として崇められてたのに……」
「そう言えば――、飯田サダハル先生の絵本シリーズの『ちごてんぐ』って童ノ宮の神様がモデルなんですよね。……可愛いですよね、ちごてんぐ。強くて優しいし」
「しかし、本来神とは優しいだけの存在じゃない。祟り――、つまり災いをなすがゆえに崇め奉り、この世から遠ざけたり鎮めるべきものだ。それに神と呼ばれる存在達が自らそう名乗ったわけでもない。我々人間がそう勝手に分類しているだけ。味方をしてくれる怪異と、そうでない怪異をね」
「それはそうかも知れへんけど……う、うちは何度も童ノ宮の神様に助けてもらてるし、だから……」
(キミカのすすり泣く声)
「あ、ああ、ごめんね。……君に言う必要はなかったね。本当に済まない」
「で、でもゼナ博士! あの怪異、逃走したとはいえ加持祈祷に力が押さえられるんですよね? ひょっとしたらキミカちゃんの唱え事のお陰で……」
「そ、そうかも知れないな。私の≪センチビード≫だけじゃやつを捕らえるのは難しかっただろうし、長谷川ユカリが今も命を繋げられているのは君の唱え事が本物だったお陰だと思うよ」
「でも、コウちゃんは? コウちゃん、うちらをかばってあんな酷い怪我……」
「ん。それは……」
「もし、このままコウちゃんが目ェ覚まさへんかったら、うちどないしたら……」
「――――おい、さっきからうるさいぞ。人の枕元で」
「コ、コウちゃん!」
「ゼ、ゼナ博士! 塚森さんが目を覚まされました!」
「うん。私も君の隣で見ているからわかるよ、姫宮アンナ」
(舌打ちする音)
「ああ、クソ……。全身がバラバラになったみたいだ」
「丁度いいタイミングだから君にも伝えておくよ、塚森コウ。……私達は子供達を連れて童ノ宮に朝一で向かう。君の叔父上――、塚森レイジに祓いの儀を執り行ってもらうためにね」
「……僕は? 一応、あいつに対抗するために外法の練り方、思いついたんだけど?」
「あ、あかんて。コウちゃんはジッとしとかんと……。コウちゃん、あの怪異に殺されるところやったんやで?」
「……誰に物言ってんの? お前こそ自分じゃ何もできないくせに! いつも血塗れになってるだけのガキは黙ってろよ!」
「……っ!」
(椅子から立ち上がる音)
「ちょっとそれは言いすぎですよ! キミカちゃんはあなたを守ろうとして――、謝ってください!」
「……はぁ? ……初めて見る顔だけど、あんた誰?」
「ひ、姫宮アンナです。ゼナ博士の秘書の」
「いや知らねーって。……そんなことより、ゼナ博士。キミカに怪異記録なんか読ませないでくださいよ。こいつ、まだ十三の子供ですよ。あんなエグイもん、耐えられるわけない。……ホント、少しは考えろよ」
「……子供ねぇ」
「は?」
「いや、子供は君の方じゃないのかな。そして、現実に耐えられないのも君の方じゃないのかな、塚森コウ?」
「あぁ!? 何だぁテメェ! このミソジの■■■■■が!」
「……ほぉ?」
※以下、数十分に渡って不毛な罵り合いが続く。
※削除済み。


