掲示板に貼られていた一枚の紙を見た。
　そこには、彼の声が刻まれていた。
　書かれていることは、現実の出来事とところどころ食い違っていた。あの団地ではしばらくの間、清掃も、子供向けのイベントさえ行われていない。ネコのミーは生前303の住民が飼っていた猫で今は亡くなっている。まるで、生前の曖昧な記憶と、訴えたい怨念とが交じり合い、文字となって浮かび上がったかのように。

　私は、あの赤い紙を口実にして管理人から金をしぼり取ってやろうと考えていた。だが、どうやらこちらの算段は失敗に終わったようだ。
　子供の怨念はあまりにも真に迫っており、下手に利用すれば、かえって私の方が呑まれてしまう危うさがある。

　だが、失敗は失敗として受け入れるしかない。
　この地域には、まだ別の「赤い紙」があるはずだ。百目鬼の血族を探すしかない。

　彼の名は、ここに記すまでもない。
　誰の声であるかは、すでに十分すぎるほど明らかなのだから。