17:カルチャーメディア『■■■■』映画ライター・■■■■連載コラム第■回『60年代アメリカを震撼させた“幻のホラー・ラブロマンス” 主題歌を歌った謎のアジア人歌手“KAIJU”とは』(202■年■月■日更新)
(中略)時は1960年代。伝説のモキュメンタリーホラーの先駆け『ブレアウィッチプロジェクト』が上映される30年以上も前の出来事である。オーソン・ウェルズの小説を元としたラジオドラマ『宇宙戦争』が世界を震撼させたのは1938年のことだから、その頃から聴衆の早とちりぶりは変わっていないといえるのかもしれない。
そんなことだから、映画はあっという間に上映禁止になった。大々的に宣伝を打っていた映画館からも次々と看板が降ろされ、怪奇好きの好事家たちはがっくりと肩を落として劇場から踵を返す羽目になる。一方で話題を集めていたのは、その映画のエンドロールを飾った主題歌だった。
『■■■■■■』と名付けられたその楽曲は、作中ではヒロインに呪詛として付き纏う“恋の呪いの歌”として扱われているが、楽曲単体で評価すれば底抜けに甘いラブソングだ。ロカビリー調のノリのいいオーガニックなギターに乗った、脳を揺らすようなハスキーなボーカルは一度耳にしたら忘れられないほど印象的で、鼓膜を愛撫されるような甘さと枯木のような憂いを兼ね備えており、これは女性視聴者はある意味呪われてしまうに違いない。
しかし何故この曲が話題になったのかというと、この曲を歌った歌手の正体が未だ不明であるためだ。
なんでも、監督の■■■■■■がほかの関係者とラスベガスのナイトクラブへ遊びに出かけた際、ステージに立って歌っていた青年の声に一瞬で惚れ込み、オファーしたのだというエピソードが専らの事実とされている。しかし、これらの逸話も後世に語られた噂、“都市伝説”の域を出ないのが現状だ。
何故“正体不明”といわれているのかと言えば、楽曲の収録後、その場で手渡しでギャラを受け取った青年が、そのまま消息を絶ってしまったためだという。そのときに名乗っていた名前も偽名で、身元を表すようなものも何ひとつ持っていなかったとのことだ。現在、プレミア価格で流通している7インチレコードとその所有者がWeb上で公開している音源のみで彼の歌声を聴くことができるが、そのレコードに記載されている歌手名も偽名であり、本名を知る者は映画関係者やレコード会社にもひとりたりとも存在していないということになる。
(中略)あまりのリアリティの高さに現実の事件を捉えた記録映画だと勘違いする観客が多数発生してしまったのが運の尽き、映画本編自体がお蔵入りとなってしまった今となっては、主題歌を歌った歌手の正体など知る術もない。どうやら彼は戦争孤児のアジア人だったそうで、■■■■監督は晩年に行われたインタビューで「白皙の美貌で背が高く、美しい少女のような面差しからは想像もつかないほどパワフルな歌声だった」と彼を評している。
彼は今やその破壊力満点な歌声と、当時アメリカで流行だった日本の怪獣映画にちなみ、“KAIJU”という渾名で国内外からカルト的な知名度を誇っている。
(中略)時は1960年代。伝説のモキュメンタリーホラーの先駆け『ブレアウィッチプロジェクト』が上映される30年以上も前の出来事である。オーソン・ウェルズの小説を元としたラジオドラマ『宇宙戦争』が世界を震撼させたのは1938年のことだから、その頃から聴衆の早とちりぶりは変わっていないといえるのかもしれない。
そんなことだから、映画はあっという間に上映禁止になった。大々的に宣伝を打っていた映画館からも次々と看板が降ろされ、怪奇好きの好事家たちはがっくりと肩を落として劇場から踵を返す羽目になる。一方で話題を集めていたのは、その映画のエンドロールを飾った主題歌だった。
『■■■■■■』と名付けられたその楽曲は、作中ではヒロインに呪詛として付き纏う“恋の呪いの歌”として扱われているが、楽曲単体で評価すれば底抜けに甘いラブソングだ。ロカビリー調のノリのいいオーガニックなギターに乗った、脳を揺らすようなハスキーなボーカルは一度耳にしたら忘れられないほど印象的で、鼓膜を愛撫されるような甘さと枯木のような憂いを兼ね備えており、これは女性視聴者はある意味呪われてしまうに違いない。
しかし何故この曲が話題になったのかというと、この曲を歌った歌手の正体が未だ不明であるためだ。
なんでも、監督の■■■■■■がほかの関係者とラスベガスのナイトクラブへ遊びに出かけた際、ステージに立って歌っていた青年の声に一瞬で惚れ込み、オファーしたのだというエピソードが専らの事実とされている。しかし、これらの逸話も後世に語られた噂、“都市伝説”の域を出ないのが現状だ。
何故“正体不明”といわれているのかと言えば、楽曲の収録後、その場で手渡しでギャラを受け取った青年が、そのまま消息を絶ってしまったためだという。そのときに名乗っていた名前も偽名で、身元を表すようなものも何ひとつ持っていなかったとのことだ。現在、プレミア価格で流通している7インチレコードとその所有者がWeb上で公開している音源のみで彼の歌声を聴くことができるが、そのレコードに記載されている歌手名も偽名であり、本名を知る者は映画関係者やレコード会社にもひとりたりとも存在していないということになる。
(中略)あまりのリアリティの高さに現実の事件を捉えた記録映画だと勘違いする観客が多数発生してしまったのが運の尽き、映画本編自体がお蔵入りとなってしまった今となっては、主題歌を歌った歌手の正体など知る術もない。どうやら彼は戦争孤児のアジア人だったそうで、■■■■監督は晩年に行われたインタビューで「白皙の美貌で背が高く、美しい少女のような面差しからは想像もつかないほどパワフルな歌声だった」と彼を評している。
彼は今やその破壊力満点な歌声と、当時アメリカで流行だった日本の怪獣映画にちなみ、“KAIJU”という渾名で国内外からカルト的な知名度を誇っている。

