14:【メモ】ドキュメンタリー番組『■■■■■■■■■■』202■年■月■日放送回より
あいつね、色白なんですよ。青白いぐらい。真夏に屋外のフェスとか出ると、あ、僕たちだいたい真昼の、お客さんの入りがちょっと落ち込んできたタイミングの客寄せとかで長めの持ち時間持たせて頂くことが多いんですけど、僕なんかはもう、一瞬で真っ黒になっちゃうのに、ジルはちょっと赤くなって、次の週とかにはすっかり白くなってるんです。
それが……あんな、その、人間の身体って、やっぱり筋肉と脂肪の集合体なんですね。わかってはいるつもりだったけれど、改めて目の当たりにすると……(小さく嘔吐く)すみません、ちょっと今でも引き摺ってます。
だって、僕はほかのメンバーを逃がしたりしていて、避難するのが最後になってしまったんです。救助が来るまで、その、割とすぐ近くで目にしてしまって。頬に熱波が降り注いで、焼けるように身体の表面が熱くて。でも、間違いなくジルの方が熱いだろうから。
ジルは、身体を少しだけ反らせて、舞台の上に案山子みたいに立ち尽くしていました。針金細工みたいな細長い身体が、ギリギリのバランスのまま、救急隊が来るまで放置されて。無数の、蛇の舌みたいな炎が、全身をくまなく舐め尽くしていくのが見えたんです。幻覚だったら良かったのにと何度思ったことか。僕たちそのとき、揃いの黒いスーツを着ていたんですけど、その布も、上等な、いつも衣装をオーダーしているテーラーのものです、真っ白いあの顔と一緒に、液体みたいにボトボト落ちて、蝋燭みたいに溶けてなくなるんじゃないかと思いました。ガサガサの黒い布と、ぬらぬらした白とピンクの蝋でできた、蝋燭。人のかたちを保ってくれただけでギリ有難いぐらいですよね。
本当に……もう二度と、歌えないんじゃないかと、思うときも正直、あります。あいつを失ったら僕たち、どうすればいいと思いますか。ずっと、ずっと5人でやってきたのに。
あいつね、色白なんですよ。青白いぐらい。真夏に屋外のフェスとか出ると、あ、僕たちだいたい真昼の、お客さんの入りがちょっと落ち込んできたタイミングの客寄せとかで長めの持ち時間持たせて頂くことが多いんですけど、僕なんかはもう、一瞬で真っ黒になっちゃうのに、ジルはちょっと赤くなって、次の週とかにはすっかり白くなってるんです。
それが……あんな、その、人間の身体って、やっぱり筋肉と脂肪の集合体なんですね。わかってはいるつもりだったけれど、改めて目の当たりにすると……(小さく嘔吐く)すみません、ちょっと今でも引き摺ってます。
だって、僕はほかのメンバーを逃がしたりしていて、避難するのが最後になってしまったんです。救助が来るまで、その、割とすぐ近くで目にしてしまって。頬に熱波が降り注いで、焼けるように身体の表面が熱くて。でも、間違いなくジルの方が熱いだろうから。
ジルは、身体を少しだけ反らせて、舞台の上に案山子みたいに立ち尽くしていました。針金細工みたいな細長い身体が、ギリギリのバランスのまま、救急隊が来るまで放置されて。無数の、蛇の舌みたいな炎が、全身をくまなく舐め尽くしていくのが見えたんです。幻覚だったら良かったのにと何度思ったことか。僕たちそのとき、揃いの黒いスーツを着ていたんですけど、その布も、上等な、いつも衣装をオーダーしているテーラーのものです、真っ白いあの顔と一緒に、液体みたいにボトボト落ちて、蝋燭みたいに溶けてなくなるんじゃないかと思いました。ガサガサの黒い布と、ぬらぬらした白とピンクの蝋でできた、蝋燭。人のかたちを保ってくれただけでギリ有難いぐらいですよね。
本当に……もう二度と、歌えないんじゃないかと、思うときも正直、あります。あいつを失ったら僕たち、どうすればいいと思いますか。ずっと、ずっと5人でやってきたのに。

