青春エネルギー

「なんて…楽しいんだ!」

その声は、銀河艦隊の威厳をかなぐり捨てた、ただの青春の叫びだった。
研究所長も涙を流しながら叫んだ。鼻水も出ていたがそれも構わず泣き顔だった。

「見ろ!これが人類の未来だ!青春は宇宙をも超える!」

装置のメーターは限界を突破し、針は文字盤を突き破って壁に突き刺さった。
青白いランプは点滅をやめ、代わりに「爆発まであと10秒」という文字が浮かび上がる。そんなディスプレイあったのか知らなかった。爆の字は画数多いのにけっこう鮮明に表示されている。

「やばい!止めろ!」

僕は必死にスイッチを押した。実は何のスイッチか分かっていなかった。ただ、青春エネルギー抽出装置でひときわ目立つので、多分そういうたぐいのボタンだろうと思っただけなのだが。
だが、装置はまるで笑っているかのように、さらに唸りを上げた。

「青春は…制御不能だ!」

笑いながら唸りながら泣きながら所長の声が響いた。この期に及んで笑っていられる所長は正直気持ちが悪かった。
ただ、その瞬間、装置は青白い閃光を放ち、研究所ごと吹き飛んだ。

* * *

…気がつくと、僕らは瓦礫の中に立っていた。研究所ごと吹き飛んだのに、僕たちは生きているんですね。
同僚はもはや交換する場所を失った蛍光灯を握り締めていた。研究所ごと吹き飛んだのに、蛍光灯は無傷だったんですね。

空は青く、風が吹き抜ける。

隣では一人(一体?)宇宙人がまだ踊っていた。触手を左右に揺らしながら。銀河艦隊と言いながらも単身で来たのか。
こうして5分が経った。
「青春…いいものだな」
宇宙人はそう言って、円盤に乗り込み、銀河の彼方へ帰っていった。

* * *

跡地には、焼け焦げた壁にスプレーで書かれた文字が残っていた。
「青春は制御不能」と。
僕はそれを見て、ふと気づいた。
――ああ。これが青春ってやつね。