うさぎの手打そば

「わかりました。次は何をすればよいのですか?」

俺が一人……一匹を目に映して話した。すると、一匹が元々丸かった目をさらに見開かせて驚いた。

「ん?もう驚くのはやめたの?」
「はい。もう慣れました」

職場では迅速に順応することが大切であると教えられたし、こんな性格なので冷静な対処に自信がある方だ。慣れたというか「考えるのをやめた」だけど。

「おおー!冷静だね!そういう子助かるよ!前新人を迎え入れた時は1ヶ月くらい動揺したからね。なんでだろう?」

多分そういうとこだぞ。

「はいはい切り替えよー!早速教えていきたいんだけど、君って接客とキッチン、どっちがいい?」
「接客がいいです」

自分は接客はおろかバイトも未経験なので雰囲気はよくわからない。だが、大学の経済学部でディスカッションをよくやっているから、人との関わりは得意な方だと思う。

「了解!でも、たまにキッチン手伝ってもらえる?極々稀だけど忙しい時、ほんとに人手が足りないからさ」
「もちろんですよ。どのくらいの頻度で起こり得ますか?」
「ありがとう!週に二~三回程度かな!」

極々稀とは。またはめられた。何でこのうさぎ折節嘘つくのか。まぁ作るのは嫌いじゃないしいいか。

「それで、どんなことを行うんですか?」
「まぁ、まだ待っておくれよ。給料欲しいでしょ?振り込むための銀行の番号欲しいんだけど、この紙に書いてもらってもいい?」

目の前のうさぎが後ろ足で立ち、長い耳を下げてこちらを向いた。
俺は呆れた顔をしながらも、何も考えずに銀行の番号を書いた。記入が終わると小さな店長……に見せた。

「ありがとう!でも僕うさぎだから視力悪いんだよね。後で飼い主に見せておきたいんだ。だからこの机に置いといて!」

飼い主って、ここに来た時に案内してくれた晴心陽(はれこはる)さんだろうか。苗字が同じだしそうだろう。というかうさぎって視力悪いんだ。捕食される側の動物だからてっきり良いものなのかと。
そんな考えが頭に巡りつつも、書類とパソコンが置いてあるデスクの真ん中に紙を置いた。

「これでOK!そしたらデスクの右にあるロッカーあるでしょ?君のロッカーは真ん中の右だから、それ使って!君の新品な制服はそこに入ってるよ」

白色のうさぎに促されて見ると六つのロッカーが壁を背にして置いてあった。真ん中の右ということは右から三番目のロッカーだ。そしてロッカーを開けると、言ってあった通り制服があった。

「ありがとうございます。でも、小さな穴がちらほらが空いているような……」
「あーそれね!ちょっと前にいた人が使ってたやつだから少し古臭いかも!新しい制服は一ヶ月ぐらいしたら届くかも!」

さっき新品って言ってたような。