舞台が終わった次の日の放課後。
今日の部活動では、撮った芝居を鑑賞しながら部室で感想を言い合ったり、お菓子を食べたりのんびりしながらお疲れ会をする。
僕は持ってきた新作のクッキーなどのお菓子を隅に寄せてある机のひとつに適当に並べた。
綾小路くんは芝居映像が観られるように、黒板前で液晶モニターの調整などをしてくれている。ちなみに普段映像研究部で使っているモニターで、映像研究部は映像の細かいところまで調べたりもするから結構画面は大きい。
美桜さん含めた僕以外の部員たちは椅子を並べている。
「あっ、そういえば、演劇部の部員って地味だけど顔面偏差値地味に高くない?」
部室の前を通りかかる女子たちの明るい声が聞こえてきた。
「自分たちが噂をされている?」
「されてるよね」
僕と手越くんが外に漏れないように小声で呟くと部員たちは目を合わせた。そして快くんを除いた演劇部員たちの動きは完全に停止し、聞き耳を立てる。
「分かる! こないだの劇で、そうだなぁ……特にセイって役の人、可愛かったな~」
「私はカイくん派」
「カイくんは安定だよね~」
「というか、あれ、BLだよね絶対! セイが受けでカイが攻めでしょ?」
続きの会話が気になるけれど、だんだんと女子たちの声は遠のいていった。
……ボ、ボーイズラブ。
僕はその言葉を聞いた快くんの反応が気になりすぎて凝視した。だが当の本人は無反応で、椅子を並べ続けている。
僕たちはまだ、舞台前の会話から恋の事情は発展していない。
いや、舞台で発展したのか?
いや、あれは役であるから全く別なのか?
僕は舞台が終わってからずっと快くんについて考えていた。そして快くんのお願いに対しての答えは決まっていた。だけどなかなか伝えるタイミングが見つからない。見つからないわけではなくて、タイミングはいつでも良くて。逃げてしまっているというか……難しいな。素直に気持ちを伝えればいいことなのに。
――僕は、快くんのことが。
快くんのことを考えていると、手伝ってくれた生徒たちもわらわらと集まってきた。シャドウ先生も来た。全員が座り始めたから、僕と快くんは一番後ろの廊下側の席に並んで座った。
「み、皆さま、まずはお疲れ様でした。皆さまが今回のお芝居に関わってくださったお陰で、無事に成功をおさめることができ、本当に感謝しております。今日はお疲れ会を楽しんでくれたら、幸いです!」
緊張した様子で挨拶をした山下くん。挨拶が終わると部室のカーテンを閉め、モニターに映像が流れ始めた。
映像をこうやって観るのも緊張する。自分の芝居を確認するのもだけど、予想外な展開が多数あったし、それに、今、横には快くんがいるし――。
物語は進んでいき、回想の映像シーンが流れてきた。そして撮影の時にどんなふうになるのかなと気になっていた乗馬のシーンが。映像のシーンは僕も意見を言ったけれど、ほとんど綾小路くんと美桜さんにお任せしていた。このシーンは実際カッコよく編集するのは難しいなぁとなり、可愛い雰囲気に仕上げられた。
これはもう駆け回る馬ではなくて、そのままメリーゴーラウンド。ラブを意識していなかった時には感じなかったけれど……見つめ合う時に首をわずかに曲げて微笑みあったりなど指示を受けてした芝居を今あらためて見ると、メリーゴーラウンドに乗っている僕たちは恋人とデートをしているようだ。
ふんわりモードの映像加工との相乗効果でラブラブしている雰囲気がすごい。これが分かる人には分かる、におわせというものなのか?
「へへへ。上手く映像でもにおわせられたなぁ!」と、綾小路くんは満足している。
「というか、本当に可愛い受けの顔をしているかも」
僕の前に座っていた小田川くんは後ろを向き、僕の顔をまじまじと見つめてきた。なんだか恥ずかしくなって顔を伏せようとすると、なんと、快くんが手を大きく開いて僕の顔を小田川くんが見えないように隠してくれた。小田川くんは一瞬驚いた顔をしたものの、何事もなかったかのように前を向いた。
……今の快くんの動き、なんだかボディガードの人みたい。かっこいい!
「快くん、ありがとう」
「うん」
目を合わせて一方的に微笑むと視線を再び舞台映像の方に向けた。
馬に乗り戦う場所へと移動する夜のシーンが流れた。メリーゴーラウンドっぽさは残っているものの、こっちの方は加工も多くされていて、割とかっこいい感じに編集されている。やっぱりさっきの回想シーンはにおわせるために計算されていたのか。
物語は進んでいく。
舞台本番での殺陣は手応えを感じていた。今映像を確認してその手応えは確かなものとなった。
上手くいったのは周り、特に快くんのお陰。快くんは筋トレや稽古を見えないところでも頑張っていたし、僕も快くんに影響されていつもよりも真面目に頑張ったから。そして快くんが本番の日に本気の空気を出してくれたから。
後で快くんに色々お礼を言いたいなぁ。
快くんをチラリと見る。快くんは画面から目を離さずに真剣に観ている。
殺陣のシーンの後あたりから観ていて恥ずかしくなってきた。だって僕の表情が時々、恋をしているピュアな男子の顔をしていたから。僕自身もにおわせてしまっているではないか……。
カイに膝枕されてるシーン、テゴ軍団とカイが戦っているのを見つめているシーン。そして、強く抱きしめられていたシーン!!
自分の表情を見て、想像以上に恋しててびっくりした。
どのシーンもドアップで映っているわけではないが、顔の表情がほんのり分かる。特にラストの抱きしめ合うラブシーン時の、いや、ラブシーンではなくてバディとなりお互いの背中を預け合う関係となった時の僕の表情は……うっとりしているではないか!!
ラストのシーンが終わった瞬間、快くんは静かに部室から出ていった。
お手洗いかな? 快くんの背中しか見えなかったけれど、ちょっと悩んでいるようにも見えた。僕の思い込みかな?なんて考えたけれど、気になりすぎたから僕も快くんの後を追った。
廊下に出ると開いた窓のところに快くんがいた。窓枠に肘をつけ、頭を抱えていた。悩んでいるように見えたのは、僕の妄想ではなかった。
「快くん、大丈夫?」
快くんはゆっくりと振り向いた。だけど、何も言わずにただ僕を見つめている。しばらくみつめあっていたら快くんは静かな声で言った。
「星くん、ごめん」と。
「えっ? なぜ謝るの? 快くんは僕に対して謝ることなんて何もしていないよ」
「だって、練習の時と違うお芝居をたくさんしちゃったから……」
「大丈夫だよ。ベテラン役者のおじさんとかが本番で急にアドリブしたりして客を笑わせてたりすることもよくあるらしいから」
普段凛としている快くんが下を向きながらしょんぼりしている。上手く励ますことができなかったかな。
快くんが落ち込む姿を見るだけでモヤモヤしてきて胸が苦しくなってくる。僕は言葉を懸命に探した。
「快くんのお陰で殺陣が良かったんだよ!」
「えっ?」
快くんは勢いよく僕の顔を見た。
快くんが前向きになってくれそうな言葉を見つけた!
「快くんが陰でたくさん筋トレや練習をしてきたから、僕も頑張れたんだよ!」
もっと言いたい、快くんの良かったところ。
「快くんはかっこいいから、どんな設定にしても似合っていて……だから設定をストーリーに出し切れないぐらいにたくさん考えることができて。快くんのキャラを考えるのがとにかくすごく楽しかったよ!」
もっともっとたくさん伝えたい。快くんの良かったところ。快くんが落ち込まないように、もっと自信を持ってくれるように――
「星くん、ありがとう……」
快くんが笑顔を見せてくれた。
そう、僕が見ていたいのは落ち込んだ快くんではなくて、このレアな笑顔。かっこよくて、でも可愛さもあって、とにかく無敵な笑顔。
「いや、こっちの方が謝りたいぐらいだよ。舞台の上で好き好きオーラ出しちゃったし……もう隠せないよね、僕の気持ち」
昔からたまに誤解されちゃうぐらいに自分の気持ちを表に出すのも、伝えるのも苦手な快くん。そんな快くんが頑張って僕に気持ちを伝えてくれたのだから、僕も頑張って快くんに気持ちを伝えたい。伝えるんだ!
「僕もね、快くんのことが好き! だから付き合ってください!」
快くんは驚いた表情をした。それから「うん」と、柔らかく微笑みながら頷いてくれた。
「まさか、僕たちが付き合うことになるなんてね」
微笑みあった瞬間、開いている窓からふわっと優しいピンク色のような風が入ってきた気がした。
「そろそろ部室に戻ろうか」
「うん」
部室に戻るとまだ映像は続いていた。
メイキング映像も編集してくれていたらしい。
稽古をしている時、遊園地で撮影している時のNGシーンや使われなかったシーン、そして合宿の映像も。
僕と快くんが合宿中の夜に筋トレしている映像も流れてきた。壁に頭からつま先をつけて背筋を伸ばしている僕たち。そうしているだけなのに、すごく幸せそうな僕の顔。
――この時から僕は快くんのことが好きだったのかもしれないなぁ。
なんて、快くんに恋していたことに気がついた今となっては、そんなふうにも思ってしまう。具体的にいつから好きだったのかは分からないけれど、今はハッキリと僕の気持ちが分かる。
快くんのことがすごく好きだなぁって。
あぁ、急に手を繋ぎたくなってきた。
勢いで繋いでしまおうか。
僕はそっと、誰にも気づかれないように、快くんの手を握った。快くんもぎゅっと握り返してくれた。
*
お疲れ会が終わり、僕は途中まで快くんと帰った。
「快くんはこれからも演劇部にいてくれるの?」
「うん」
「そっか、じゃあこれからも毎日芝居が楽しくなるなぁ」
「うん」
「次はどんな物語にしようかな……あ、次は違うメンバーが書くのかなぁ」
「うん」
「次はお互いに舞台の上で好き好きオーラを出さないようにする練習もしないとだね!」
快くんが「ふふっ」と、声を出して笑ってくれた。
僕はお芝居が大好きだ。
僕は快くんが大大大好きだ。
これからも好きなことを好きな人と一緒にできますように!
*·.⟡┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⟡.·*.
『舞台ではどうか、好き好きオーラをださないでください。』
完
.*·.⟡┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⟡.·*.
今日の部活動では、撮った芝居を鑑賞しながら部室で感想を言い合ったり、お菓子を食べたりのんびりしながらお疲れ会をする。
僕は持ってきた新作のクッキーなどのお菓子を隅に寄せてある机のひとつに適当に並べた。
綾小路くんは芝居映像が観られるように、黒板前で液晶モニターの調整などをしてくれている。ちなみに普段映像研究部で使っているモニターで、映像研究部は映像の細かいところまで調べたりもするから結構画面は大きい。
美桜さん含めた僕以外の部員たちは椅子を並べている。
「あっ、そういえば、演劇部の部員って地味だけど顔面偏差値地味に高くない?」
部室の前を通りかかる女子たちの明るい声が聞こえてきた。
「自分たちが噂をされている?」
「されてるよね」
僕と手越くんが外に漏れないように小声で呟くと部員たちは目を合わせた。そして快くんを除いた演劇部員たちの動きは完全に停止し、聞き耳を立てる。
「分かる! こないだの劇で、そうだなぁ……特にセイって役の人、可愛かったな~」
「私はカイくん派」
「カイくんは安定だよね~」
「というか、あれ、BLだよね絶対! セイが受けでカイが攻めでしょ?」
続きの会話が気になるけれど、だんだんと女子たちの声は遠のいていった。
……ボ、ボーイズラブ。
僕はその言葉を聞いた快くんの反応が気になりすぎて凝視した。だが当の本人は無反応で、椅子を並べ続けている。
僕たちはまだ、舞台前の会話から恋の事情は発展していない。
いや、舞台で発展したのか?
いや、あれは役であるから全く別なのか?
僕は舞台が終わってからずっと快くんについて考えていた。そして快くんのお願いに対しての答えは決まっていた。だけどなかなか伝えるタイミングが見つからない。見つからないわけではなくて、タイミングはいつでも良くて。逃げてしまっているというか……難しいな。素直に気持ちを伝えればいいことなのに。
――僕は、快くんのことが。
快くんのことを考えていると、手伝ってくれた生徒たちもわらわらと集まってきた。シャドウ先生も来た。全員が座り始めたから、僕と快くんは一番後ろの廊下側の席に並んで座った。
「み、皆さま、まずはお疲れ様でした。皆さまが今回のお芝居に関わってくださったお陰で、無事に成功をおさめることができ、本当に感謝しております。今日はお疲れ会を楽しんでくれたら、幸いです!」
緊張した様子で挨拶をした山下くん。挨拶が終わると部室のカーテンを閉め、モニターに映像が流れ始めた。
映像をこうやって観るのも緊張する。自分の芝居を確認するのもだけど、予想外な展開が多数あったし、それに、今、横には快くんがいるし――。
物語は進んでいき、回想の映像シーンが流れてきた。そして撮影の時にどんなふうになるのかなと気になっていた乗馬のシーンが。映像のシーンは僕も意見を言ったけれど、ほとんど綾小路くんと美桜さんにお任せしていた。このシーンは実際カッコよく編集するのは難しいなぁとなり、可愛い雰囲気に仕上げられた。
これはもう駆け回る馬ではなくて、そのままメリーゴーラウンド。ラブを意識していなかった時には感じなかったけれど……見つめ合う時に首をわずかに曲げて微笑みあったりなど指示を受けてした芝居を今あらためて見ると、メリーゴーラウンドに乗っている僕たちは恋人とデートをしているようだ。
ふんわりモードの映像加工との相乗効果でラブラブしている雰囲気がすごい。これが分かる人には分かる、におわせというものなのか?
「へへへ。上手く映像でもにおわせられたなぁ!」と、綾小路くんは満足している。
「というか、本当に可愛い受けの顔をしているかも」
僕の前に座っていた小田川くんは後ろを向き、僕の顔をまじまじと見つめてきた。なんだか恥ずかしくなって顔を伏せようとすると、なんと、快くんが手を大きく開いて僕の顔を小田川くんが見えないように隠してくれた。小田川くんは一瞬驚いた顔をしたものの、何事もなかったかのように前を向いた。
……今の快くんの動き、なんだかボディガードの人みたい。かっこいい!
「快くん、ありがとう」
「うん」
目を合わせて一方的に微笑むと視線を再び舞台映像の方に向けた。
馬に乗り戦う場所へと移動する夜のシーンが流れた。メリーゴーラウンドっぽさは残っているものの、こっちの方は加工も多くされていて、割とかっこいい感じに編集されている。やっぱりさっきの回想シーンはにおわせるために計算されていたのか。
物語は進んでいく。
舞台本番での殺陣は手応えを感じていた。今映像を確認してその手応えは確かなものとなった。
上手くいったのは周り、特に快くんのお陰。快くんは筋トレや稽古を見えないところでも頑張っていたし、僕も快くんに影響されていつもよりも真面目に頑張ったから。そして快くんが本番の日に本気の空気を出してくれたから。
後で快くんに色々お礼を言いたいなぁ。
快くんをチラリと見る。快くんは画面から目を離さずに真剣に観ている。
殺陣のシーンの後あたりから観ていて恥ずかしくなってきた。だって僕の表情が時々、恋をしているピュアな男子の顔をしていたから。僕自身もにおわせてしまっているではないか……。
カイに膝枕されてるシーン、テゴ軍団とカイが戦っているのを見つめているシーン。そして、強く抱きしめられていたシーン!!
自分の表情を見て、想像以上に恋しててびっくりした。
どのシーンもドアップで映っているわけではないが、顔の表情がほんのり分かる。特にラストの抱きしめ合うラブシーン時の、いや、ラブシーンではなくてバディとなりお互いの背中を預け合う関係となった時の僕の表情は……うっとりしているではないか!!
ラストのシーンが終わった瞬間、快くんは静かに部室から出ていった。
お手洗いかな? 快くんの背中しか見えなかったけれど、ちょっと悩んでいるようにも見えた。僕の思い込みかな?なんて考えたけれど、気になりすぎたから僕も快くんの後を追った。
廊下に出ると開いた窓のところに快くんがいた。窓枠に肘をつけ、頭を抱えていた。悩んでいるように見えたのは、僕の妄想ではなかった。
「快くん、大丈夫?」
快くんはゆっくりと振り向いた。だけど、何も言わずにただ僕を見つめている。しばらくみつめあっていたら快くんは静かな声で言った。
「星くん、ごめん」と。
「えっ? なぜ謝るの? 快くんは僕に対して謝ることなんて何もしていないよ」
「だって、練習の時と違うお芝居をたくさんしちゃったから……」
「大丈夫だよ。ベテラン役者のおじさんとかが本番で急にアドリブしたりして客を笑わせてたりすることもよくあるらしいから」
普段凛としている快くんが下を向きながらしょんぼりしている。上手く励ますことができなかったかな。
快くんが落ち込む姿を見るだけでモヤモヤしてきて胸が苦しくなってくる。僕は言葉を懸命に探した。
「快くんのお陰で殺陣が良かったんだよ!」
「えっ?」
快くんは勢いよく僕の顔を見た。
快くんが前向きになってくれそうな言葉を見つけた!
「快くんが陰でたくさん筋トレや練習をしてきたから、僕も頑張れたんだよ!」
もっと言いたい、快くんの良かったところ。
「快くんはかっこいいから、どんな設定にしても似合っていて……だから設定をストーリーに出し切れないぐらいにたくさん考えることができて。快くんのキャラを考えるのがとにかくすごく楽しかったよ!」
もっともっとたくさん伝えたい。快くんの良かったところ。快くんが落ち込まないように、もっと自信を持ってくれるように――
「星くん、ありがとう……」
快くんが笑顔を見せてくれた。
そう、僕が見ていたいのは落ち込んだ快くんではなくて、このレアな笑顔。かっこよくて、でも可愛さもあって、とにかく無敵な笑顔。
「いや、こっちの方が謝りたいぐらいだよ。舞台の上で好き好きオーラ出しちゃったし……もう隠せないよね、僕の気持ち」
昔からたまに誤解されちゃうぐらいに自分の気持ちを表に出すのも、伝えるのも苦手な快くん。そんな快くんが頑張って僕に気持ちを伝えてくれたのだから、僕も頑張って快くんに気持ちを伝えたい。伝えるんだ!
「僕もね、快くんのことが好き! だから付き合ってください!」
快くんは驚いた表情をした。それから「うん」と、柔らかく微笑みながら頷いてくれた。
「まさか、僕たちが付き合うことになるなんてね」
微笑みあった瞬間、開いている窓からふわっと優しいピンク色のような風が入ってきた気がした。
「そろそろ部室に戻ろうか」
「うん」
部室に戻るとまだ映像は続いていた。
メイキング映像も編集してくれていたらしい。
稽古をしている時、遊園地で撮影している時のNGシーンや使われなかったシーン、そして合宿の映像も。
僕と快くんが合宿中の夜に筋トレしている映像も流れてきた。壁に頭からつま先をつけて背筋を伸ばしている僕たち。そうしているだけなのに、すごく幸せそうな僕の顔。
――この時から僕は快くんのことが好きだったのかもしれないなぁ。
なんて、快くんに恋していたことに気がついた今となっては、そんなふうにも思ってしまう。具体的にいつから好きだったのかは分からないけれど、今はハッキリと僕の気持ちが分かる。
快くんのことがすごく好きだなぁって。
あぁ、急に手を繋ぎたくなってきた。
勢いで繋いでしまおうか。
僕はそっと、誰にも気づかれないように、快くんの手を握った。快くんもぎゅっと握り返してくれた。
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お疲れ会が終わり、僕は途中まで快くんと帰った。
「快くんはこれからも演劇部にいてくれるの?」
「うん」
「そっか、じゃあこれからも毎日芝居が楽しくなるなぁ」
「うん」
「次はどんな物語にしようかな……あ、次は違うメンバーが書くのかなぁ」
「うん」
「次はお互いに舞台の上で好き好きオーラを出さないようにする練習もしないとだね!」
快くんが「ふふっ」と、声を出して笑ってくれた。
僕はお芝居が大好きだ。
僕は快くんが大大大好きだ。
これからも好きなことを好きな人と一緒にできますように!
*·.⟡┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⟡.·*.
『舞台ではどうか、好き好きオーラをださないでください。』
完
.*·.⟡┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⟡.·*.



