【青春BL】舞台ではどうか、好き好きオーラをださないでください。

 合宿は毎日順調に進み、無事に終えることが出来た。

 快くんは二日目の夜も頭からつま先まで壁につけていた。だからさりげなく偶然を装って通りすがり聞いてみた。

「僕も一緒に鍛えてもいいかな?」と、勇気を出して。

快くんは、一瞬ためらいを見せてきた気がするけれども、頷いてくれた。

 快くんとふたりきりでした深層筋トレは時が経っても詳しく思い出せるくらいに深い思い出となった。

――今も鮮明に思い出せる。

 外の月明かりでわずかに明るい夜の廊下の色。

 壁に身体全体をつけぴんと伸ばしていた時の、特に腹筋の深い部分辺りが喜んでいるような感覚。

「深層筋のトレーニングって、精神の深層筋も鍛えられるよね」

と、僕が独り言のように呟いた時に微笑んでくれた快くんの表情。

 それだけではなく、その体勢でセリフ合わせまでしてくれた。

 記憶だけに残しとくのもったいない空気だなと思っていたら、なんと美桜さんが最終日前夜の時に思い出として動画を撮ってくれた。

と、そんな感じで芝居の稽古もしたけれど、快くんと過ごした夜の時間が一番記憶の中で濃い。

 そして合宿が終わっても稽古の日々。

 筋トレ、そして殺陣の練習量が明らかに足りないことに気がつき、練習量を増やした。そうしてあっという間に日が経ち、もうひとつのイベントである遊園地での撮影の日がやってきた。



「はい、こんにちは。演劇部部長の山下でございます。全員お集まりになられましたでしょうか? 本日は晴天で――」と、バスガイドみたいな雰囲気をまとう山下くんが言う。演劇部のみんなは芝居をしていない時は人前で話すのが高確率で緊張してしまうタイプなので架空の人物になりその場を乗り切ることもある。

 今日は借りたバスに乗り遊園地に行く。今は三時過ぎ。

バスの真ん中辺りの窓側に座っていると、横の席に快くんが来た。一緒に筋トレをした日からかな。僕の隣に快くんがいてくれることが多くなった。

一緒に深層筋を鍛えることにより絆は深まったのか。筋トレは素晴らしい。でもなぜか今、快くんが隣に座った瞬間から心臓の動きが走った時みたいに早くなり、謎のドキドキが起こった。そういえば合宿の時、隣の布団で快くんが寝ていた時も似たようなドキドキの感覚があった気がする。近いと謎のセンサーが反応してしまうのかな。

 部長山下くんが人数を確認すると、バスは出発した。僕は快くんに何か話しかけようとしたけれども、特に何も思い浮かばず。僕たちは遊園地に着くまで無言だった。ちなみに遊園地メンバーも合宿メンバーとほぼ一緒。

 僕たち部員は演劇のための基礎レッスンもするけれど、ほとんど妄想話からの即興芝居をして遊んでいる感じ。なのでこういう日は特別感があり、やっぱり気持ちが高まりいつもよりも自称明るい性格な男子高校生になれる気がする。

 バスで一時間ぐらい走ると、遊園地に着いた。五時から貸切で撮影できるのでその時間までは下見。

 今回演出などを担当してくれる映像研究部の綾小路くんと動画部の美桜さん、そして僕たち演劇部のメンバーを中心としてどこでどんなふうに撮るかなどを話し合いながら遊園地を一周した。そしてついに貸切の時間が。それぞれ衣装に着替え、ヘアメイクもしてスタンバイする。

「はい、じゃあまずは今回のメインであるメリーゴーラウンドの馬のシーンを撮ります。今の明るい時間はライバルがまだ親友だった時期で仲が良い雰囲気で馬に乗ってる回想シーンなどを、そして夜はライバルとなり、戦うために村人のいない場所へと馬に乗り向かうシーンを撮ります」

 綾小路くんの指示に従い、カメラ担当の美桜さんと役者が動いていく。ちなみに今回はモブとして快くん応援隊の皆様もチョイ役で出演する。

「乗り物が動くたびにオルゴールのような可愛い音楽が流れるから、今回はセリフなどの音は後から入れます」

「快くん、頑張ろね」
「うん」

 僕たちは真剣に見つめあって頷きあった。

「それでは、撮影始めまーす!」

 まずはチョイ役の村人も混じって、僕と味方、そして快くんが広場で談笑していたり、ふたりが遊びで殺陣をして本気の喧嘩になってくるけれどもすぐに仲直りしたり……そんなふうに色々楽しんでいる回想シーンから撮影された。ちなみにこのシーンは、舞台本番時には僕がピンライトを浴びて懐かしい頃を思い出し、それからスクリーンに映像が映される。

 快くんは元々器用で、さらに影で努力を沢山していたからひとつひとつの動きがかっこよくて上手だった。僕も快くんを見習っていつもよりも真面目に稽古をしたから結構自信がある。

「はい、このシーンOKです! そのまま次のふたりの乗馬シーンに移ります!」

 僕と快くんはメリーゴーラウンドへ。僕は白い馬で快くんは黒い馬にふたり横に並んで乗った。

「思ったよりも可愛いし、馬たちがぎゅうぎゅう詰めだなぁ。綾小路くん、ここで撮ってもきちんとかっこいい馬のシーンが撮れるのかなぁ」
「まかせてください。美桜さんの撮影技術はすごいですから。それに、今なら色々消せますし、進化した最新の編集技術もあります!」

 自信満々に言う綾小路くんの言葉を聞いて、安堵した。

 メリーゴーラウンドは回りだす。仲良い頃のイメージだから、僕は快くんに微笑んだ。快くんも微笑んでくれた。しかも普段見せないぐらいな眩しい笑顔で。それも役としてなのだろう。だけど、嬉しくて涙が出そうになった。わずかな微笑み超えて、勝手にニンマリしてくる僕の顔。

「ありがとう快くん――」

 思わず言葉を表に出してしまった。だって、昔、僕に向けてくれていた、大好きな快くんの笑顔だったから。快くんは言葉に対して、優しく、そして再び眩しい笑顔で頷いてくれた。

心臓の音が、今まで聞いたくらいに大きくどんとなり、全身が熱くなる。僕の体に大きな異変が起きた。風邪かな……だけど撮れる日は今日しかないから風邪を引いてないふりをしないと。

 そんな自分のことよりも、この快くんを普段から見せてくれればよいのにな、なんて。芝居と現実がごちゃごちゃになってしまっている。だけどモニターチェックしたら本当に仲が良い幼なじみに見え、声も後撮りで入らない。そして綾小路くんからもテンション高めで満足感ある様子な「OK」。撮ったシーンは使われることになった。

 と、そんな感じで撮影は進んでいき、夜のシーン。快くん応援隊のメンバーが舞台当日も、村人役など、早着替えをして複数の役で出演してくれる。そして今は大きな戦いが行われるために、その村人たちのいない場所へと馬に乗って移動するシーンを撮る。今回は僕が先頭になり、後ろに快くん。そしてその他戦うメンバーがわらわらとついてくる。停止すると馬からカッコ良く降り、戦う姿勢になったつもりだった。

「なんか、違う。もっと、戦う姿勢になるまでにこんなふうに……」

 綾小路くんは降りた後の動きを再現した。
 飛ぶ動きをしている!?

「でも、これはワイヤーがないと難しいのでは?」
「ワイヤーやりたい……」

 いつも何も発言しない快くんが、自ら挙手してワイヤーの立候補をした。

「人間がワイヤーになるなんて。それに、僕と快くんはメインで出演するし……」
「出来る!」

 美桜さんが言い切った。

「で、出来るの?」
「まずはお手本を見せるね。星くん、ちょっと失礼します!」

 なんと、美桜さんは僕を軽々と持ち上げた。そして美桜さんの動きにより、僕は浮き、さらに浮かびながら回転もした。

「いや、でも今の動き、ただ戦う場所に着くだけなのに必要なくない?」

「じゃあ作れば良いじゃない! 綾小路くん、何か案が浮かんだ顔してるけど?」

「快くんが演じるカイは、まだ星くん演じる幼なじみのセイを攻撃する決心がついていないと思うから、ここはカイチームにいる山下くん演じるヤマジーがセイを攻撃して……」
「そうそう。そしてこれをこうして攻撃をかわして……」

 綾小路くんと美桜さんは意見を次々と交わしあっている。僕はめったに発生しない快くんの願いを叶えたいから、快くんが自然とワイヤーになれる方法ばかりを考えていた。そして閃いた!

「僕を攻撃するヤマジー。敵だけど心の底ではセイを傷つけたくないと思っているカイ。そのカイが分身影ワイヤーとなって、セイをヤマジーの攻撃から守ってくれるんだ!」

「えぇ、じゃあ話が変わってこない? それに、カイが味方につけば、ヤマジーひとりぼっちになるよ? なんか可哀想……」

「それは大丈夫。一瞬の出来事すぎて、誰も気が付かないぐらいに早いから、他のメンバーは気が付かない」

 手越くんの疑問に僕は答えた。

「あっ! アイディアが! じ、じゃあ、ラスト辺りに手越くん演じるテゴとヤマジー、におわせませんか?」

 以前のミーティングでも綾小路くんは「におわせ」について提案していたな。

「例えば、どんなふうに?」
「セイとカイは、主に誤解が原因でカイが敵の方へと行くのですが、実は味方であるテゴがそうなるように内側から仕組んだのですよ。そしてラスト辺りにそれを明かして、実はテゴとヤマジーがぁ!!みたいな。具体的にはお任せいたしますが」

 言い終えて満足した様子の綾小路くんが僕に向けて手を〝どうぞ〟の形にしてきた。

「なるほど……物語を一本の木に例えると、枝分かれした細かな設定部分がさらに増えて深みが増すかもだなぁ。でも……」

 僕は役者全員の顔を順に見る。やり始めたばかりの殺陣はギリギリ間に合うかなって感じで不安要素満載だし、せっかくまとまってきたものを変えるなんて。僕はまとまってきた芝居が本番近くに色々変わるのが苦手だ。「セリフが変わります~」と言われて本番当日に焦る夢を何回もみるほどに。

「出来る!」

 山下くんがそう言うと、他のメンバーも頷いた。普段なら無理かもと言いそうな部員たちだけど、撮影開始時には覚醒モードに入っていたから自信満々で前向きな様子。

 そして、その時だった。重要な言葉を快くんは放ったのだ。

「やっぱりきちんと殺陣、星くんとやりたい。戦いたい。今のままじゃ、なんだか不自然だから……」と。

 快くんの願いが――芝居に対して真剣に向き合ってくれているのは本当に嬉しいが、そこも変えないとなのか……あちこち台本変えないといけない雰囲気で頭が混乱してくる。

「とりあえず、今やるべき事をやろうぜ!」と、僕の味方ダガワ役である小田川くんが元気よく言い、同じく味方であるカモト役の仲本くんが頷いた。

 今やるべきことは、快くんワイヤー。

「快くん、ワイヤー時の衣装はどうしたら……」

 僕は呟いた。

 その時、ふと、先生の服装が目に入った。昼は白い服だったのに、今は黒地に星が散りばめられているゆったりとした長袖チュニックに、ゆったりとしたデザインの足元まである黒いパンツを履いている。先生は撮影現場でも影でいるために、昼夜用の影服を分けて着ていたのだ。しかも黒い手袋までしていた。

「シャドウ先生が着ているその服、今、撮影でお借りできますか?」
「えっ? うん、いいけど」
「今日の星空と合った服装、ナイスです!」
「あ、ありがとう。今日の夜の天気予報は晴れだったからね!」

 快くんは急いでシャドウ先生の服に着替えた。筋肉あるのにレディースの服も着こなすなんて、本当にモデルのようで、かっこいい。

 そうしてカイの分身影にワイヤーされるシーンの撮影が始まった。持ち上げられるために快くんの手が僕の脇と腰辺りに触れる。快くんの手から放出される暖気が僕の全身に伝わってきたからか、全身が熱くなる。

 軽々と持ち上げられた。とても、それはもう本当にドキドキしすぎた――。

 遊園地での撮影も無事に終了。漫画などの娯楽時間をなくしてシーンを変えたり増やしたりして台本の中身を整理した。そしてそのままの時間の使い方で稽古も頑張った。今までこんなに頑張った感を得た記憶はない。快くんの努力の影響を受けたから、こんなに頑張れた。新しく増えた快くんとの殺陣も一緒に頑張ったから良くなった。

 この調子で本番はきっと順調だな!と想像できたのに、快くんとの事件は本番直前に起きた。



 ついに今日は高校の文化祭で舞台本番の日。午後から始まる。部室で着替えると先に他のメンバーは教室から出ていった。僕と快くんがふたりきりになる。

 快くんが僕の顔を穴が空くほど見つめてきた。

「快くん、大丈夫? 何かあった?」

 真剣な眼差しだったから芝居について気になることがあるのかな?

「星くん……」
「何?」
「舞台が成功したら、ひとつだけお願いを聞いて欲しくて……」
「うん、分かった! 快くんはめったにお願いごとしてこないから何でも聞く。内容がすごく気になるなぁ……どんなこと?」

 僕の質問に答えず、なぜか頬を赤らめる快くんは廊下に向かって歩いていく。何も言わずにここから出ていくのかな?って背中を見つめていたら、ドアのところで振り向いた。僕たちは目が合う。

 そして、今にも泣きそうな、頑張って気持ちを伝えてくれたのだなと思える雰囲気で快くんは言った。

「星くんが好きだから、付き合って欲しい!」と。

 言葉を部室に残して快くんは去っていった。

 はぁぁぁぁ????
 えぇぇぇぇ????

――告白?

 快くんが僕のこと好き?
 えっ? 少女漫画の急展開。過去から今までで、なんか恋の伏線あった?

 いきなり緩やかだった物語のジェットコースターが勢いよく回転してキャー!と思い切り叫びたくなるような展開。しかし、なぜ本番前の今なの? 気が散るからこのタイミングはやめて欲しかった。せめて舞台後にしてよ……

 ずっと頭の中だけで叫びながらフリーズしていると、山下くんが「もう始まるよ」と、迎えに来てくれた。気持ちを舞台集中の方へ入れ替える意識をしながら舞台袖に向かった。 体育館が薄暗くなると床やパイプ椅子に座って観る準備をしてくれている生徒たちの声は静まった。ついに、僕と快くんが初共演する芝居の本番が始まった!

 本番前に色々、もう本当に色々変わりすぎたし大きなハプニングもあったけれども、とにかく頑張ろう。



 幻想的な和風の花の映像が舞台上にあるスクリーンに映し出され『カイセイの契り』とタイトルが黒いお習字の文字で浮かび上がる。

映像が消えると舞台中央のスポットライトに剣を持った、和と中華が合わさったようなふんわりデザインの衣装を着た、全てが白を基調としたセイ(星)が立っている。戦う音、悲鳴などの音が流れてくる。複雑そうな表情で視線を左右に動かすセイ。

セイの衣装をかっこよくした雰囲気の、全て黒を基調とした衣装を着ているカイ(快)が、槍を持ち青系で細いデザインの衣装を着ている手下のヤマジー(やさぐれ担当山下)と共に登場する。

「久しぶりだな、カイ。5年ぶりか……お前はなぜ裏切り、敵の黒影に寝返った? お陰で均等に保たれていた国のバランスは崩れ、今は僕、かつてお前も住んでいたこの国はこのありさまだ」
「……」
「……もう戻ってはこないのか?」
「……」

 客席の方を向き、語るセイ。

「カイと過ごしていたあの時間は、毎日が充実していて争いもなく平和な日々だった」

 スクリーンに映し出される過去。

 幼なじみだったセイとカイ。村の人々と楽しそうに交流をしたり食事をしたりしている。それからふたりで遊びの殺陣をして喧嘩をするけれどもすぐに仲直りして……楽しい雰囲気で過ごした後は馬に乗り、ふたり並んで笑い合いながら駆け回っている。

 映像は消える。

「もう戻れない。全てが変わってしまったんだ。俺の心も――」
「そうか、じゃあ今から決着をつけようか」

 セイが提案すると、頷くカイ。

刀を握るカイ。セイも剣を持ち構える。とその時、後ろからセイの味方である赤系のダガワ(やんちゃ担当の小田川)と、緑系のカモト(おだやか担当の仲本)、黄色系のテゴ(甘えん坊担当の手越)が現れる。

 カイは隅の方で怯える村人を見つけた。じっと村人を見つめるカイ。カイの視線を追うことにより村人を見つけるセイ。

「ここでは戦えない……移動しよう」と、セイが提案すると馬に乗り五人は移動する。役者たちが舞台から消えると、スクリーンには馬に乗り移動するシーンの映像が。戦う場所に着き馬から降りると、いきなり槍を持つヤマジーの先制攻撃がセイに。誰にもバレてない例のカイのワイヤー影分身によりセイの身体が勝手に浮き回転などして、素早く攻撃を回避。無傷なセイ。なにか不自然だと疑問顔になるセイとヤマジー。

……ここまでは、練習通りだった!! 順調だった!! 

映像が終わると舞台上で役者たちの本格的な殺陣シーンが始まった。
カイとセイ以外が戦い始めると、しばらく様子を見ていたふたりも戦い始める。

……練習と様子がかなり違う!?

なんか、練習時よりもカイからの圧力のようなものを感じ、カイの力が強い。気合いが入っているのか? 感情が溢れている感じで、練習の時よりも目が本気。

 本番に憑依するタイプの役者? 

互角な予定だったのにカイが本気で追い詰めてくる。しかもカイがセイの耳元で「成功して、星くんと本当に付き合いたい」なんて、素の快くんとして呟くものだから僕も素に戻り焦る。だけどここは負けられないからセイに戻り、本気でカイとぶつかりあった。練習の時と全く動きが変わっていなかったのが幸いだった。もしも動きまで変わってしまっていたら、まだ殺陣始めたばかりでアドリブは難しいからグダグダだっただろう。

 僕は「今はその付き合いたい気持ち、心の奥に閉まっておいて、芝居に集中しよう」と耳元で優しく呟き指示もした。

 ふたりは練習した通りに芝居を続ける。

 観客からは感嘆の息が漏れ、やがて「すごい」「上手い」などと声も聞こえてきた。「かっこいい!」という声も。舞台は役者の気持ちが直接観客に伝わるから、今の本気な気持ちも伝わったのだろう。反応は良いけれど、気を抜いたのも即バレるから油断はできない。

 物語はどんどん進んでいく。

 戦いながら幼なじみのふたりは本音をぶつけ合い、明らかになっていく過去。ふたりが仲悪くなったのもカイが敵となったのも、元はと言えば誤解が原因で……お互いに殺り合うことを望んではいないと分かると戦うのをとめた。

 その時だった。

 一本の矢がセイの背中を貫いた!

なんと、矢を放ったのは、ずっと味方であったはずの甘えん坊テゴだった。実は黒幕だったテゴの背後から黒づくめのモブが五人登場する。カイはセイの背中にある矢を抜くと不思議なヒーリングパワーで傷口を塞いだ。

……ここ、動きが違う! カイの手が背中に添えられるだけだったはずだったのに、今、なぜかカイに膝枕されてる!!!!

 膝の温もり、密着感、快くんの吐息……はぁ、ドキドキしすぎてヤバい。このまま気を失いそう。

なんて思っていると「なんで仲直りしちゃうんだよ~、みんないなくなっちゃえ!」と、テゴのセリフを合図に再び戦いが始まった。

 テゴと手下たちVSカイの戦い。治療されたばかりのセイは舞台の隅の方に置かれた。

カイは強く、テゴの手下たちは一瞬で倒されていく。テゴは隠し持っていた短刀を握るが、カイが手首をトンと叩くと短刀が落下した。そしてテゴが殺られそうになった時、カイの手下であったはずのヤマジーがカイの攻撃を槍で弾き、テゴはギリギリ助けられた。

 今度はカイとヤマジーが言い争うことに。

……ひとつひとつの仕草も。カイ、全部かっこいいな。

 ハッ! 危ない。なぜか今、目がハートになるところだった。告白されてから変に意識してしまう。今は芝居に集中しないと。後で僕の気持ちを整理するんだ!

 セイと、カイにとっても幼なじみな存在のテゴ。テゴはカイとも昔は仲が良かった。そんなテゴが裏切った理由を語る。まとめると村を仕切る人たちに気にいられていたカイに嫉妬したテゴがカイの悪評を広め、セイの知らないところでカイはテゴの作戦により追い込まれていたらしい。そうして村を出て、その時に敵の組織に拾われたと。

真実を暴露したあと「さっさと僕を始末しろ」とテゴは叫んだ。

「もういい……二度と姿を現すな!」

 セイは怒りをテゴにぶつけた。テゴが去ると何かを察したカイは「お前もついていけ」とヤマジーに命令した。

 一番裏切らないなと信じていたテゴに裏切られたセイは喪失感に襲われる。

「これからは俺が近くにいるから。共に悪に立ち向かおう」と、悲しそうなセイの背中に触れ、優しく寄り添うカイ。

真のバディに、お互いの背中を預け合う男たちの熱き友情が今、始まる!!的なラスト!

……だったはずなのに、セリフはそのままだったけれどもカイの動きが予想を超えてきた。なんと、強く抱きしめられていた!! 心臓が飛び出そうなくらいに強くドンドンと祭りの太鼓みたいになっていて、汗が溢れてくる。でも同時に愛されている実感も湧いてきて、心地良さもひそかに混ざっていた。

 一方的に抱きしめられるだけなのは不自然かなと、こっちも背中に手を回した。

「みなさん、体力が消耗しているので魔法で帰りましょうか」と、カモトは左手を上にあげるとキラキラキラと音がなり、辺りは輝いた。

 舞台は暗くなり、遊園地撮影の日の帰り際に「使うか分からないですけれど撮っておきましょうか」となった、回転空中ブランコに乗っている映像が流れた。セイとカイは横に並び、微笑みあっていた。

 そしてラストにスクリーンの中心に大きく『完』の文字が。

 そうして観客席から見たらこれは、バディ超えて恋人ではないのか!!と思わせるラストを迎えて幕は閉じた。