玄関を開けたら、僕の大好きな青くんが僕の弟に壁ドンをしていた。
あれ、2人ってそういう関係だったの?
全く気が付かなかった。
「兄さん、おかえり」
陸は平然としている。
壁ドンに見えるけど、転びそうだったとか、壁に蚊がいて叩いただけとか、そういう感じなのかもしれない。
「ただいま」
僕は一瞬だけ陸と目を合わせた後に、青くんのことを見つめた。
「そ、空くん、お邪魔してます」
青くんは壁についていた手を離して、そっぽを向いてしまった。明らかに動揺している。
やっぱり壁ドンだったのだろう。
このまま気づかないふりをして、自分の部屋に行ってしまった方がいいのかもしれない。けど今聞かなかったら後悔するだろう。
僕、花坂空は、弟の友達である東雲青音に恋をしているから。
うやむやになんてしない。あとで色々考えるくらいなら、今はっきりさせる。決心をして、口を開いた。
「2人は何してたの?」
陸は青くんを見て、青くんが何かを言うのを待っている。視線に気がついた青くんはタジタジしながら、
「えっと、バランスを崩しちゃって」
と答えて、右の耳を触った。これは隠し事をしている時の仕草だ。
そうなんだねと青くんの嘘に気づかないふりをするか迷うけど、嘘をつくということは何かやましいことがあるのだろう。それは何かと想像するより、現実を受け止めた方がいい。深呼吸をしてから、恐る恐る聞いた。
「本当に?」
僕は青くんの瞳をじっと見つめた。ややあって、青くんは降参というように下を向く。
「ごめん、壁ドン」
納得と同時に失恋をした。
青くんと陸が付き合ってるということなのだろう。偶然の壁ドンなら、たまたま壁ドンをしている体制になってしまっただけなら、壁ドンとは言わない。姿勢を崩してと説明するだろうから。
そして、ごめんというのは気持ちには答えられませんという意味なのだろう。青くんに僕の気持ちに気づいていたのか、特に隠したりはしてなかったけど、伝わっていたのか。
お母さんに隠し事がバレた子どものように、青くんは僕を見ている。
そんな目をしたって、僕の気持ちには答えてくれないくせに、可愛い。
「の練習でしょ」
と付け加えたのは陸だった。
「どういうこと?」
「青音が」
青くんが慌てて陸の口を塞いだので、続きの言葉が聞けなかったけど、青くんが壁ドンの練習をしたいってお願いしたのだろう。
「言わないって約束だったじゃん」
「いや、でも状況が違くない?」
「でも、空くんには……」
「壁ドンって言ったのは青音だからね?」
「まぁ」
「転びそうだったとか、壁に蚊がいたとか言えばよかったのに」
「いや、バランス崩したって言ったよ? でも空くんが疑うから」
2人が喧嘩を始めてしまった。
「そうだって言えばよかったじゃん」
「空くんに嘘はつけないから」
「じゃ正直に言ってよかったじゃん」
「でも、練習って言ったらさ」
「なに? じゃ壁ドンしてましたでよかったの?」
「うーん」
「変じゃない? 友達で壁ドンはしないよ? まぁ恋人だからってするわけでもないけど」
あっ、恋人だからって壁ドンしないのかと僕の心に突き刺さる。恋人が居たことはないので分からないけど、そうかもしれない。
ということは、青くんと陸は付き合っているわけじゃないのか。いや、恋人だからって壁ドンしないなら、付き合ってる可能性が消えたわけじゃないのか。
「そうなんだけど」
「なに?」
「ごめん、上手く言えないや」
「なんだよ、せっかく付き合ってあげたのに」
えっ、今、付き合ってあげたって、やっぱり青くんと陸は付き合っているのか。
でも恋人だからって壁ドンはしないって、いやそれは壁ドンしたから恋人ってわけじゃないってだけであって、恋人が壁ドンしないって意味じゃないのか。
僕の頭の中がショート寸前である。
「ねぇ、部屋で詳しく聞かせてくれない?」
2人は同時に僕を見てから、顔を見合わせた。
「いいよ」
と陸が返事をしたら、青くんも頷いてくれた。
僕の部屋の丸い机を3人で取り囲んでいる。いつもは楽しくゲームをしたり、漫画を読んだりするのだけど、今は気まずい空気だけが流れていた。
青くんか陸が何かを言ってくれるだろうと思っていたけど、黙ったままだから僕から聞かないといけないのだろう。聞きたくないけど、部屋に呼んだのは僕だから責任を取らないといけない。
「あの、2人は付き合ってるの?」
僕がそう言って2人を見ると、2人とも鳩が豆鉄砲を食ったような表情をしてから、陸は笑って、青くんは慌てながら、
「それはない」
と手を横に振る。
嘘をついてるようにも、はぐらかされてるようにも見えないけど、本当に付き合ってないのか。
「でも、さっき付き合ってあげたとか言ってなかった?」
2人の頭にハテナが浮かんでいるようで、沈黙が訪れる。ちょっと経ってから陸が何かを思いついたように笑いながら、
「壁ドンの練習にね」
と言った。
あぁ、壁ドンの練習に付き合ってあげたね。よく考えれば、そういう話の流れだった気がするけど、さっきは余裕がなかった。
「僕も壁ドンの練習に付き合ってあげようか?」
下心満載の提案だけど、青くんに壁ドンしてもらうチャンスを逃すわけにはいかない。
青くんはバツが悪そうにして、
「ごめん、それはいい」
と断った。断られてしまったのだ。
「なんで?」
「なんでって、難しいけど」
「よくない?」
「よくない」
「陸がよくて、僕じゃダメなの?」
「そう」
もう少し食い下がりたいけど、このままでは決着がつかなそうである。
僕は青くんに近寄るが、途中でバランスを崩して青くんに覆い被さってしまう。
「兄さん、それは床ドン」
陸の笑い声と心臓の音がうるさかった。
あれ、2人ってそういう関係だったの?
全く気が付かなかった。
「兄さん、おかえり」
陸は平然としている。
壁ドンに見えるけど、転びそうだったとか、壁に蚊がいて叩いただけとか、そういう感じなのかもしれない。
「ただいま」
僕は一瞬だけ陸と目を合わせた後に、青くんのことを見つめた。
「そ、空くん、お邪魔してます」
青くんは壁についていた手を離して、そっぽを向いてしまった。明らかに動揺している。
やっぱり壁ドンだったのだろう。
このまま気づかないふりをして、自分の部屋に行ってしまった方がいいのかもしれない。けど今聞かなかったら後悔するだろう。
僕、花坂空は、弟の友達である東雲青音に恋をしているから。
うやむやになんてしない。あとで色々考えるくらいなら、今はっきりさせる。決心をして、口を開いた。
「2人は何してたの?」
陸は青くんを見て、青くんが何かを言うのを待っている。視線に気がついた青くんはタジタジしながら、
「えっと、バランスを崩しちゃって」
と答えて、右の耳を触った。これは隠し事をしている時の仕草だ。
そうなんだねと青くんの嘘に気づかないふりをするか迷うけど、嘘をつくということは何かやましいことがあるのだろう。それは何かと想像するより、現実を受け止めた方がいい。深呼吸をしてから、恐る恐る聞いた。
「本当に?」
僕は青くんの瞳をじっと見つめた。ややあって、青くんは降参というように下を向く。
「ごめん、壁ドン」
納得と同時に失恋をした。
青くんと陸が付き合ってるということなのだろう。偶然の壁ドンなら、たまたま壁ドンをしている体制になってしまっただけなら、壁ドンとは言わない。姿勢を崩してと説明するだろうから。
そして、ごめんというのは気持ちには答えられませんという意味なのだろう。青くんに僕の気持ちに気づいていたのか、特に隠したりはしてなかったけど、伝わっていたのか。
お母さんに隠し事がバレた子どものように、青くんは僕を見ている。
そんな目をしたって、僕の気持ちには答えてくれないくせに、可愛い。
「の練習でしょ」
と付け加えたのは陸だった。
「どういうこと?」
「青音が」
青くんが慌てて陸の口を塞いだので、続きの言葉が聞けなかったけど、青くんが壁ドンの練習をしたいってお願いしたのだろう。
「言わないって約束だったじゃん」
「いや、でも状況が違くない?」
「でも、空くんには……」
「壁ドンって言ったのは青音だからね?」
「まぁ」
「転びそうだったとか、壁に蚊がいたとか言えばよかったのに」
「いや、バランス崩したって言ったよ? でも空くんが疑うから」
2人が喧嘩を始めてしまった。
「そうだって言えばよかったじゃん」
「空くんに嘘はつけないから」
「じゃ正直に言ってよかったじゃん」
「でも、練習って言ったらさ」
「なに? じゃ壁ドンしてましたでよかったの?」
「うーん」
「変じゃない? 友達で壁ドンはしないよ? まぁ恋人だからってするわけでもないけど」
あっ、恋人だからって壁ドンしないのかと僕の心に突き刺さる。恋人が居たことはないので分からないけど、そうかもしれない。
ということは、青くんと陸は付き合っているわけじゃないのか。いや、恋人だからって壁ドンしないなら、付き合ってる可能性が消えたわけじゃないのか。
「そうなんだけど」
「なに?」
「ごめん、上手く言えないや」
「なんだよ、せっかく付き合ってあげたのに」
えっ、今、付き合ってあげたって、やっぱり青くんと陸は付き合っているのか。
でも恋人だからって壁ドンはしないって、いやそれは壁ドンしたから恋人ってわけじゃないってだけであって、恋人が壁ドンしないって意味じゃないのか。
僕の頭の中がショート寸前である。
「ねぇ、部屋で詳しく聞かせてくれない?」
2人は同時に僕を見てから、顔を見合わせた。
「いいよ」
と陸が返事をしたら、青くんも頷いてくれた。
僕の部屋の丸い机を3人で取り囲んでいる。いつもは楽しくゲームをしたり、漫画を読んだりするのだけど、今は気まずい空気だけが流れていた。
青くんか陸が何かを言ってくれるだろうと思っていたけど、黙ったままだから僕から聞かないといけないのだろう。聞きたくないけど、部屋に呼んだのは僕だから責任を取らないといけない。
「あの、2人は付き合ってるの?」
僕がそう言って2人を見ると、2人とも鳩が豆鉄砲を食ったような表情をしてから、陸は笑って、青くんは慌てながら、
「それはない」
と手を横に振る。
嘘をついてるようにも、はぐらかされてるようにも見えないけど、本当に付き合ってないのか。
「でも、さっき付き合ってあげたとか言ってなかった?」
2人の頭にハテナが浮かんでいるようで、沈黙が訪れる。ちょっと経ってから陸が何かを思いついたように笑いながら、
「壁ドンの練習にね」
と言った。
あぁ、壁ドンの練習に付き合ってあげたね。よく考えれば、そういう話の流れだった気がするけど、さっきは余裕がなかった。
「僕も壁ドンの練習に付き合ってあげようか?」
下心満載の提案だけど、青くんに壁ドンしてもらうチャンスを逃すわけにはいかない。
青くんはバツが悪そうにして、
「ごめん、それはいい」
と断った。断られてしまったのだ。
「なんで?」
「なんでって、難しいけど」
「よくない?」
「よくない」
「陸がよくて、僕じゃダメなの?」
「そう」
もう少し食い下がりたいけど、このままでは決着がつかなそうである。
僕は青くんに近寄るが、途中でバランスを崩して青くんに覆い被さってしまう。
「兄さん、それは床ドン」
陸の笑い声と心臓の音がうるさかった。


