●家の玄関前。夕方。
夏子は、幽霊の見えない鈴木に、侍の幽霊達を見せてあげたいと思っていた。
鈴木も彼らに聞きたい事がたくさんあるだろうし、みんな喜ぶだろう。
夏子「そうだ!クールガイ沢口が、何か方法を知っているかも!」
※夏子の頭の中に、ド派手な中年男性の姿が思い浮かぶ画。
篠原「くるりの者か?」
近くにいた篠原が、すぐに反応する。
篠原様の後ろの人魂も、うれしそうに来る。
夏子「鈴木さんに幽霊を見せる方法がないか、聞いてみようと思って。あー、クールガイ沢口の電話番号を聞いておけばよかった!ブログにDM送ればいいかな・・。」
夏子が考えていると。
篠原「くるりの者の『すまほお』に繋がる手立てとな。知っておるぞ。」
袂に手を入れる篠原。
夏子「え?篠原様がクールガイ沢口の電話番号知ってるの?なんで?」
夏子、驚いた顔。
篠原「わしが何故知っておるかと?くるりの者と文を交わす術が欲しかっただけじゃ。」
※家の住所を教えろとしつこくからむ篠原に、『電話番号で勘弁して!』と焦るクールガイ沢口の画。
※篠原の手元の画。
昔ながらの帳面に、墨で縦書きに漢字で、電話番号が書いてある。
夏子「・・・あ、ありがとうございます。」
苦笑いの夏子。
夏子はすぐに電話をかける。
クールガイ沢口はすぐに出た。
沢口「ああ、良かった、あんたで。あの篠原とかいう幽霊かと思った!」
隣にいる篠原は爆笑。『推し』に自分の名前を呼んでもらえて、喜びながら去って行った。
※頬を赤く染める篠原の画。
クールガイ沢口「ちょうど良かった。あんたに伝えたい事があって。」
夏子「え、私に?」
クールガイ沢口「動画のネタ集めに、廃トンネル周辺の村のお年寄りの所をまわったんだ~。そうしたら、満月の夜は『亡者の行軍』が通るから、丑三つ時に外出してはいけないっていう言い伝えが、昔からあるらしいの。」
夏子「亡者の行軍?」
クールガイ沢口「そう。実際に目撃した人もいて、落ち武者の霊が行進するらしいの。沢口、地図を持ってその人達の所へ行ったの。目撃した場所に印をつけてもらったら、こんな感じ~。」
ピコン、と音がして。
画像が届いた。
※夏子の手元の画。
スマホの画面に、地図が表示されていて、そこに赤い丸印がいくつもあった。
クールガイ沢口「地図見える?なんだか目撃された場所、廃トンネルから峠にかけてばかりなの。そこから先では目撃されてないの。これって、あの廃トンネルの怨霊だよねぇ?」
夏子「廃トンネルから出て、どこに行こうとしていたんだろう?」
クールガイ沢口「地図の峠の先、すすき平に繋がっているの。すすき平で討ち死にした怨霊なら、なんで自分達が死んだ場所に何度も行こうとするんだろ?普通、自分が死んだ場所なんて、行くの嫌じゃない?」
夏子「・・確かに。幽霊になった事はないけど、怖いイメージがある場所になんて、近づきたくないですよね。」
首をひねる夏子。
クールガイ沢口「でしょ?しかも、その『亡者の行軍』時々、着物を着た女性も一緒にいたらしいの。それも幽霊かな。」
夏子「着物を着た女性?」
そう言った時に、なぜか八重ばあちゃんの姿が頭に浮かんだ夏子。
●夏子の過去回想、
●焚火の前、夜。
夏子「田丸様達みたいに弔われていれば、雑兵も怨霊にはならなかった気がします。」
篠原「村人がこしらえた塚はあるぞ。」
小坂「すすき平口じゃな。八重は満月の夜になると、決まって出向いておったのう?」
小坂は氏家を見て言った。
氏家は軽く頷く。
●現在に戻る。
夏子(八重ばあちゃんは、満月の夜に雑兵の霊を導き、涙峠を越えようとしていた?)
ドキドキしてくる夏子。
お礼を言って電話を切った夏子。
●根まわり資料館。昼。
※「根まわり資料館」と書いた、小さな建物の外観の画。
資料館の閲覧室には、夏子以外の来館者はいない。
昼の光が古い木製の床を淡く照らしていた。
時計の音だけが響いている。
夏子は古地図の前へ行く。
クールガイ沢口から送られて来た地図をスマホで見ながら、古地図と照らし合わせる。
『すすき平口』から始まり、『涙峠』まで指で辿る。
夏子「『亡者の行軍』はここで消えちゃうんだよね・・?」
夏子はつぶやきながら、涙峠の先を見た。
夏子「ん?」
気になる所を見つける夏子。もう一度よく古地図を見る。
古地図では、涙峠を通ると分岐点になっていて、道が二手に分かれている。
夏子「あれ?こんな所に道あった?」
クールガイ沢口が送ってくれた現在の地図では、すすき平へつながる道しかない。しかし、古地図上にはかすれた墨の様な物で、細い道が描かれている。
夏子「使われていない旧道があるって事?」
夏子はドキドキしながら、その消えそうな細い旧道を指で辿る。
※夏子の手元の画。
古地図の墨で書かれた細い旧道を辿って行くと、辿り着いたのは。
「政勝公陣跡」
夏子(八重ばあちゃんは、『亡者の行軍』を導いて涙峠を超え、本来行くべきだった道を辿って陣跡に雑兵達を導こうとしていたんだ!)
手が震える夏子。
夏子はいてもたってもいられなくなり、その場を駆け出す。
ちょうど出口に現れた鈴木。
鈴木「あ、夏子さん!良かったらランチでも・・」
のんきな顔をして話しかけて来る鈴木に、
夏子「あ、あの!また今度!」
青ざめた顔で駆け出していく夏子に違和感を覚え、振り返る鈴木。
●涙峠、昼。山の中だから、少し薄暗い。
周りは木々、笹に覆われた山道。
※木々の間から、下の方に民家の屋根が小さく見える画。
高すぎないけど低すぎない、中くらいの山。
夏子(八重ばあちゃんは、雑兵達の無念を晴らそうとしていたのかも。)
夏子は、古地図に描いてあった涙峠の分岐点へ立つ。
左の道に行けば、すすき平に繋がっている。古地図にある旧道は笹に覆われていて、どこかわからない。
夏子「ずっと使われていないから、忘れ去られてしまったんだね。」
ひとりでつぶやく夏子。
それを、後ろの木の陰から見ている男。
鈴木「夏子さんの様子がおかしいから、心配になってついてきてしまった・・。」
心配そうな表情で見守る鈴木。
鈴木「夏子さん、一人でどうしたんだろう。」
そう思った瞬間。
夏子の横に、黒い影が現れる。
※目を見開く鈴木の画。
急に現れた黒い影は、夏子に向かって旧道の方を指差す。
夏子は驚き、
夏子「忠兵衛・・さん?安永・・忠兵衛さん?」
驚いた夏子が尋ねると、黒い影が静かに頷く。
すると、風がサーッと吹き、笹の下に隠れていた石が姿を現す。
夏子「あ、道!」
笹の下に隠れていた石の形状や配置が、そこにかつて道があった事を示していた。
鈴木は木の後ろから身を乗り出し、道に出てしまう。
夏子「忠兵衛さん、ありがとう。」
夏子は黒い影にお礼を言うと、黒い影はまた静かに頷く。
夏子が旧道を歩き始めると、笹がまるで意思を持った様に自ら横によけて、夏子を導こうとする。
鈴木さんは信じられない気持ちで立ちすくみ、見ていると、黒い影が鈴木に気がついた。
鈴木「あ・・あの。」
初めて幽霊を見た鈴木に、黒い影は体ごと向き直り、深く深く頭を下げた。
鈴木「あ・・、どうも。ご丁寧に。」
つられて頭を下げる鈴木の前で、黒い影は頭を下げたまま消えた。
●政勝公陣跡、昼。
夏子が笹をかき分けて旧道を抜けると、急に開けた場所に出た。
学校のグラウンドくらいの広さで、周りは木に囲まれている。遠くに和風の家の様なトイレがある。
大人の腰くらいの高さの石に『政勝公陣跡公園』と書いてある。
そして、そこには鈴木が立っていた。
夏子「鈴木さん?どうしてここに?」
驚いて、近寄る夏子。
鈴木さんは黙って頷き、
鈴木「よく戻った。ご苦労であった。」
と、腹から声を出して高らかに言った。
まるで何かが乗り移った様に見えて、
夏子「え?」
夏子は驚いた顔をする。
鈴木は、夏子の驚いた顔を見て笑い、
鈴木「きっと政勝公は、ここでこう言いたかったでしょうね。」
夏子「鈴木さん・・。」
鈴木「僕、目に見えない物って、信じないんですよ。でも、本当にいるんですね。魂って。」
微笑む鈴木。
その時、夏子はひらめいた。
夏子「これだ!!」
夏子が急に大きな声を出したので、驚く鈴木。
夏子「私にいい考えが!鈴木さんも協力してください!」
鈴木は夏子の勢いに負けて、顔をひきつらせながら、頷いた。
夏子は、幽霊の見えない鈴木に、侍の幽霊達を見せてあげたいと思っていた。
鈴木も彼らに聞きたい事がたくさんあるだろうし、みんな喜ぶだろう。
夏子「そうだ!クールガイ沢口が、何か方法を知っているかも!」
※夏子の頭の中に、ド派手な中年男性の姿が思い浮かぶ画。
篠原「くるりの者か?」
近くにいた篠原が、すぐに反応する。
篠原様の後ろの人魂も、うれしそうに来る。
夏子「鈴木さんに幽霊を見せる方法がないか、聞いてみようと思って。あー、クールガイ沢口の電話番号を聞いておけばよかった!ブログにDM送ればいいかな・・。」
夏子が考えていると。
篠原「くるりの者の『すまほお』に繋がる手立てとな。知っておるぞ。」
袂に手を入れる篠原。
夏子「え?篠原様がクールガイ沢口の電話番号知ってるの?なんで?」
夏子、驚いた顔。
篠原「わしが何故知っておるかと?くるりの者と文を交わす術が欲しかっただけじゃ。」
※家の住所を教えろとしつこくからむ篠原に、『電話番号で勘弁して!』と焦るクールガイ沢口の画。
※篠原の手元の画。
昔ながらの帳面に、墨で縦書きに漢字で、電話番号が書いてある。
夏子「・・・あ、ありがとうございます。」
苦笑いの夏子。
夏子はすぐに電話をかける。
クールガイ沢口はすぐに出た。
沢口「ああ、良かった、あんたで。あの篠原とかいう幽霊かと思った!」
隣にいる篠原は爆笑。『推し』に自分の名前を呼んでもらえて、喜びながら去って行った。
※頬を赤く染める篠原の画。
クールガイ沢口「ちょうど良かった。あんたに伝えたい事があって。」
夏子「え、私に?」
クールガイ沢口「動画のネタ集めに、廃トンネル周辺の村のお年寄りの所をまわったんだ~。そうしたら、満月の夜は『亡者の行軍』が通るから、丑三つ時に外出してはいけないっていう言い伝えが、昔からあるらしいの。」
夏子「亡者の行軍?」
クールガイ沢口「そう。実際に目撃した人もいて、落ち武者の霊が行進するらしいの。沢口、地図を持ってその人達の所へ行ったの。目撃した場所に印をつけてもらったら、こんな感じ~。」
ピコン、と音がして。
画像が届いた。
※夏子の手元の画。
スマホの画面に、地図が表示されていて、そこに赤い丸印がいくつもあった。
クールガイ沢口「地図見える?なんだか目撃された場所、廃トンネルから峠にかけてばかりなの。そこから先では目撃されてないの。これって、あの廃トンネルの怨霊だよねぇ?」
夏子「廃トンネルから出て、どこに行こうとしていたんだろう?」
クールガイ沢口「地図の峠の先、すすき平に繋がっているの。すすき平で討ち死にした怨霊なら、なんで自分達が死んだ場所に何度も行こうとするんだろ?普通、自分が死んだ場所なんて、行くの嫌じゃない?」
夏子「・・確かに。幽霊になった事はないけど、怖いイメージがある場所になんて、近づきたくないですよね。」
首をひねる夏子。
クールガイ沢口「でしょ?しかも、その『亡者の行軍』時々、着物を着た女性も一緒にいたらしいの。それも幽霊かな。」
夏子「着物を着た女性?」
そう言った時に、なぜか八重ばあちゃんの姿が頭に浮かんだ夏子。
●夏子の過去回想、
●焚火の前、夜。
夏子「田丸様達みたいに弔われていれば、雑兵も怨霊にはならなかった気がします。」
篠原「村人がこしらえた塚はあるぞ。」
小坂「すすき平口じゃな。八重は満月の夜になると、決まって出向いておったのう?」
小坂は氏家を見て言った。
氏家は軽く頷く。
●現在に戻る。
夏子(八重ばあちゃんは、満月の夜に雑兵の霊を導き、涙峠を越えようとしていた?)
ドキドキしてくる夏子。
お礼を言って電話を切った夏子。
●根まわり資料館。昼。
※「根まわり資料館」と書いた、小さな建物の外観の画。
資料館の閲覧室には、夏子以外の来館者はいない。
昼の光が古い木製の床を淡く照らしていた。
時計の音だけが響いている。
夏子は古地図の前へ行く。
クールガイ沢口から送られて来た地図をスマホで見ながら、古地図と照らし合わせる。
『すすき平口』から始まり、『涙峠』まで指で辿る。
夏子「『亡者の行軍』はここで消えちゃうんだよね・・?」
夏子はつぶやきながら、涙峠の先を見た。
夏子「ん?」
気になる所を見つける夏子。もう一度よく古地図を見る。
古地図では、涙峠を通ると分岐点になっていて、道が二手に分かれている。
夏子「あれ?こんな所に道あった?」
クールガイ沢口が送ってくれた現在の地図では、すすき平へつながる道しかない。しかし、古地図上にはかすれた墨の様な物で、細い道が描かれている。
夏子「使われていない旧道があるって事?」
夏子はドキドキしながら、その消えそうな細い旧道を指で辿る。
※夏子の手元の画。
古地図の墨で書かれた細い旧道を辿って行くと、辿り着いたのは。
「政勝公陣跡」
夏子(八重ばあちゃんは、『亡者の行軍』を導いて涙峠を超え、本来行くべきだった道を辿って陣跡に雑兵達を導こうとしていたんだ!)
手が震える夏子。
夏子はいてもたってもいられなくなり、その場を駆け出す。
ちょうど出口に現れた鈴木。
鈴木「あ、夏子さん!良かったらランチでも・・」
のんきな顔をして話しかけて来る鈴木に、
夏子「あ、あの!また今度!」
青ざめた顔で駆け出していく夏子に違和感を覚え、振り返る鈴木。
●涙峠、昼。山の中だから、少し薄暗い。
周りは木々、笹に覆われた山道。
※木々の間から、下の方に民家の屋根が小さく見える画。
高すぎないけど低すぎない、中くらいの山。
夏子(八重ばあちゃんは、雑兵達の無念を晴らそうとしていたのかも。)
夏子は、古地図に描いてあった涙峠の分岐点へ立つ。
左の道に行けば、すすき平に繋がっている。古地図にある旧道は笹に覆われていて、どこかわからない。
夏子「ずっと使われていないから、忘れ去られてしまったんだね。」
ひとりでつぶやく夏子。
それを、後ろの木の陰から見ている男。
鈴木「夏子さんの様子がおかしいから、心配になってついてきてしまった・・。」
心配そうな表情で見守る鈴木。
鈴木「夏子さん、一人でどうしたんだろう。」
そう思った瞬間。
夏子の横に、黒い影が現れる。
※目を見開く鈴木の画。
急に現れた黒い影は、夏子に向かって旧道の方を指差す。
夏子は驚き、
夏子「忠兵衛・・さん?安永・・忠兵衛さん?」
驚いた夏子が尋ねると、黒い影が静かに頷く。
すると、風がサーッと吹き、笹の下に隠れていた石が姿を現す。
夏子「あ、道!」
笹の下に隠れていた石の形状や配置が、そこにかつて道があった事を示していた。
鈴木は木の後ろから身を乗り出し、道に出てしまう。
夏子「忠兵衛さん、ありがとう。」
夏子は黒い影にお礼を言うと、黒い影はまた静かに頷く。
夏子が旧道を歩き始めると、笹がまるで意思を持った様に自ら横によけて、夏子を導こうとする。
鈴木さんは信じられない気持ちで立ちすくみ、見ていると、黒い影が鈴木に気がついた。
鈴木「あ・・あの。」
初めて幽霊を見た鈴木に、黒い影は体ごと向き直り、深く深く頭を下げた。
鈴木「あ・・、どうも。ご丁寧に。」
つられて頭を下げる鈴木の前で、黒い影は頭を下げたまま消えた。
●政勝公陣跡、昼。
夏子が笹をかき分けて旧道を抜けると、急に開けた場所に出た。
学校のグラウンドくらいの広さで、周りは木に囲まれている。遠くに和風の家の様なトイレがある。
大人の腰くらいの高さの石に『政勝公陣跡公園』と書いてある。
そして、そこには鈴木が立っていた。
夏子「鈴木さん?どうしてここに?」
驚いて、近寄る夏子。
鈴木さんは黙って頷き、
鈴木「よく戻った。ご苦労であった。」
と、腹から声を出して高らかに言った。
まるで何かが乗り移った様に見えて、
夏子「え?」
夏子は驚いた顔をする。
鈴木は、夏子の驚いた顔を見て笑い、
鈴木「きっと政勝公は、ここでこう言いたかったでしょうね。」
夏子「鈴木さん・・。」
鈴木「僕、目に見えない物って、信じないんですよ。でも、本当にいるんですね。魂って。」
微笑む鈴木。
その時、夏子はひらめいた。
夏子「これだ!!」
夏子が急に大きな声を出したので、驚く鈴木。
夏子「私にいい考えが!鈴木さんも協力してください!」
鈴木は夏子の勢いに負けて、顔をひきつらせながら、頷いた。
