それから明良は、僕の絵をいつも楽しみにしてくれるようになった。僕は明良に色弱だと伝えるのにしばらく悩んだけれど、実際明良には僕の描く色がどんな風に見えてるかが気になって、正直に伝えた。
『……匡は、俺と色の見え方がちょっと違うってこと?』
『うん。だから、色、気持ち悪いでしょ?』
『えっ?!いや、綺麗だよ、すごく。確かに俺が見えてる景色の色とは違うけど……。ごめん、俺、馬鹿だから上手く言えないけど、俺はすごく好き。なんか、優しくてさ、見てるとこう、胸がぎゅっとなる感じがするんだよね』
僕は、それってどんな感じだよ、とまた思わず笑った。だけど、やっぱりすごく嬉しかった。明良の言葉はいつも自然で飾り気がない。だからすごく、僕にとって優しく響いた。
明良は、“これを描いて”なんてリクエストはしてこなくて、僕が描きたくて描いた絵をいつも喜んで見ていた。僕の席から見える教室の景色、体育でバスケをする友人、水田で休む白鷺、僕の絵が描かれたノートを見つめる明良……。僕が見えている色と、きっとこんな色だろうかと想像の色を混ぜた絵を、明良は『奇跡みたいな絵だよ』と言った。明良は僕がもっと伸び伸びと絵を描けるようにと自分の家に呼んでくれた。僕は、休日はいつも明良の部屋に入り浸って絵を描いた。
そんな明良だったから、僕は誰にも言えなかった自分の夢を伝えた。
『僕は、将来デザイナーになりたいんだ。大きいハンデがあることは十分理解してるんだけど、これは諦められない、と思う』
『匡なら、なれる。周りがなんて言おうと、俺が応援する』
そう言って明良は、僕がデザイナーの夢に近付けるように色々なことを調べ始めた。色覚異常の正しい知識、色を判別するためのトレーニング方法、そもそもこの世にどんな色があるのかを僕に伝えようとノートに沢山書き込んできて、それを一生懸命言葉で伝えてくれた。そこまでしなて欲しいとは頼んでないのに、僕以上に僕の夢を追いかけていた。



