僕も伊都さんもアルコールは弱いので、僕がノンアルコールビールを飲もうかなと言うと伊都さんも同じものを頼んだ。注文を済ませて店内を見回してみる。外装と店名を見た時には本当に中華料理屋かと疑ったけれど、内装は壁に描かれた虎龍図といい、他にも中国を連想させるようなレトロな雰囲気のランタンが天井からぶら下がっていた。

 「伊都さん、あのランタンは何色?」

 「ランタン?」

 伊都さんは僕の視線を辿ると、それを理解して「赤色です」と言った。僕には、黄土色に見えていた。

 「そうか。 内装は本当に中国っぽいんだね」

 外観がレンガ調の洋風な雰囲気だったのは、もしかして昔は違うお店だったのかもしれない。そこは改装せずにそのままなのが、外装と内装のギャップがあって面白い。また店内をぐるっと見回して目の前の伊都さんに視線を戻すと、目が合った。伊都さんの視線は、僕の目に注がれている。僕はそれがあまりに不意で、一瞬、呼吸が止まった。伊都さんは、多分、僕の見ている色を見ようとしている。僕には、どんな色で見えているのだろうと、想像している。明良と、同じ視線。

 そう思ったら、全身がかあっと熱くなる。まるで、僕だけが“あの頃”に引き戻されたようで、息が、詰まる。

 全身が、焦がれる。