「姉は、勤めていた会社の取引先の男と不倫をしていました。私は姉のSNSを見ていたので、彼氏らしき人ができたことは知っていた。姉自身は、その男が既婚者であることは知らずに付き合ってたみたいなんですが、子供が出来たと発覚したと同時にその男に妻がいることを知ったようです」
姉は両親に相談をするために実家に帰ったようですが、両親は激怒して、姉には子供は堕ろすようにと伝えました。姉が私に電話してきたのは、その夜のことだった。
「私は今でも、あの夜のことを夢に見ます。私が姉のもとに駆けつけて、姉を力いっぱい抱きしめてあげるんです。でも、目が覚めたら姉はこの世にいない」
冷たい川に流された姉の死体は、痣と切り傷だらけで見るも無惨な状態でした。そのお腹には、姉の子がいる。
姉が死んだことは、私に世界が破滅したくらいの衝撃を与えたけれど、それ以上に、姉の死体はあまりに残酷すぎた。残酷すぎて、現実味をまるで持たなかった。姉の死体は、作り物にも思えた。
「あの夜、姉はもしかしたら私に打ち明けたかったのかもしれない。でも、姉は、私も両親と同様にその男も、姉も非難して、子供を堕ろせと言うと思ったのかもしれない。……いつでも私は姉の前では真っ当で、正しくいようとしたから、姉はそんな私に事実を打ち明けられないと思ったかも、しれません」
それに何よりも、私が“妹”だったから。最後まで、彼女は私の“姉”であろうとしたのかもしれない。
私たちは、なんでも共有できたはずだったのに。
私が、正しい人間でないから。
姉を愛したから。
間違っているから。
だから、姉は死んでしまった。



