自分は頭がおかしいと思った。でも、もしかすると自分と同じような人がいるのではないかとも考えて、ネットで調べたら、とある掲示板に『生物学上人間は血のつながりがある者に対して恋愛感情を抱くことはない』という書き込みがされていました。
それなら、私は人間ではないのかもしれない。姉と姿形は全く一緒だけれど、私の中身は実は宇宙人か何かでこの地球の生物ではないとか、実は姉のクローンで失敗作ではないかとか、色々考えを巡らせましたが、結局のところ私も姉と同じ人間で、姉に対する感情は変えられなかった。
私の気持ちなど知る由もない姉は、頬と耳を赤く染めて、私にその男子のどんな所が好きかとか、今日は昨日よりも沢山話せたとか、実はその子も自分のことが気になっているらしいとか、楽しそうに、嬉しそうに教えてくれました。それから、私にまで好きな男子はいないのかと聞いてくる。その度に私は、嫉妬心と自己嫌悪で吐き気がした。
この気持ちは誰にも知られてはいけない。知られたら、きっと誰からも拒絶される。誰よりも私の理解者でいてくれる姉も拒絶するに決まっている。それが、何よりも恐ろしかった。
だから、私は誰よりも正しくあろうとしました。間違った感情を抱く間違った人間であることがバレてしまうのが恐ろしくて、自分は至極真っ当であると主張するために、規則は守るべき、間違っているものは排除すべきだと自戒も込めて周囲に主張しました。元々根暗で冷淡だったので、そんな私に誰も疑問は持つ様子はありませんでした。
高校は、姉とは別の学校に進学し、私は姉とできるだけ距離を取るように意識をしました。家でもなるべく接点を持たないようにアルバイトを掛け持ちし、平日も休日も夜遅くまで働きました。姉は、私から距離を取られているなんて微塵も考えていない様子で、私をいつも心配だと言って気に掛け、私のバイト先まで当時姉と付き合っていた1学年上の先輩と迎えに来てくれることもあった。その帰り道は私にとっては地獄みたいだった。
「姉はなぜか……そういう体質なのか、モラハラ気質がある感じの人と付き合うことが多くて、束縛されたり、なんだか利用されてるようなこともあって。けれど姉はそんな自覚はなく、心配と怒りが募る私は、姉に“そんな男と付き合うのは間違っている”といつも怒り、姉はそんな私にただ“真面目だなぁ”と笑うばかりでした」
高校を卒業し、姉は3年制のデザイン専門学校に、私は2年制のビジネス専門学校に進学しました。住まいは、お互いにアパートを借りましたが、行き来はできる距離にありました。だから、姉は、オシャレなカフェがあるとか、話題の新作映画が上映中とか、珍しい展覧会があるとか言って、暇さえあれば私を遊びに誘ってきた。
「姉が好きな映画って、大体が泣ける系の恋愛映画なんです。彼女、彼氏のどっちかが余命半年だとか、タイムリープ系で離れ離れになるとか、そんなんばっかり。姉は、ああいう映画で描かれる“ずっと相手を想う”みたいなことに憧れていたんだろうなと思う。上手く利用されてしまう恋愛ばかりする姉とは正反対」
きっと、姉も憧れるものがあったのだと思う。
そんな中、私は専門学生の1年目の冬に、バイト先の男の子から告白をされました。私は、姉への気持ちを変えるキッカケになるかもしれないと思い、その告白を受け入れました。でも、ダメだった。
「その人は純粋な好意を私に向けてくれたけれど、不純な私はそれを受け入れることができなかった。利用しているという罪悪感もありましたが、触れられそうになるとどうしても、拒絶してしまう」
その人とは半年も経たずに別れました。私の気持ちは、やはり変わらなかった。私の破局を知った姉は、残念そうにしながら『伊都に相応しい人は、きっと他にいるんだよ』と励ましの言葉をかけてくれた。



