第四話
〈修学旅行・長崎〉長崎市内の観光を楽しむ生徒たち。満月・檮木・有明・朏島・友人A・Bの六人が同じ班。
〇平和公園を見学し、出島、中華街を訪れている様子が一コマずつ描かれる。最後に、グラバー園を歩いている満月の姿。
満月M 僕たちはあれからも時々キスをしている。その度に朔君から「思い出した?」と聞かれ、何も思い出せない僕は「ううん」と俯くしかない。本当になんにも思い出せない。でも……朔君とのキスは、なんだか心がじんとして幸せな気持ちになる。それはやっぱり運命の恋人だからなのかな。思い出せなくても心は覚えてる……みたいな? 朔君は毎日のように付き合ってくれるのに、僕はなんにも思い出せなくて申し訳ない。でも……でも、僕はこの修学旅行に期待してるんだ!
〇満月は修学旅行のしおりのとあるページに目を留める。長崎ペンギン水族館の紹介ページが映る。
満月M 長崎ペンギン水族館! 僕たちは昔、フォークランドでペンギンたちと住んでたことがあるんだって!
〇満月のイメージの中、フォークランドにいる二人。モコモコの防寒着を着た二人が焚き火の前でココアを飲んでいて、周りにはジェンツーペンギンがたくさんいる。
満月M もしかして一緒にペンギンを見たら、今度こそ何か思い出せるかも!
◯メラメラしている満月を見る有明と朏島。
有明 なんか気合入ってんなー。
朏島 ……
〈夜・ビジネスホテルの個室〉ツインルームに満月と檮木がいる。
◯寝る前のTシャツ姿で、ベッドの上でキスしている二人。
檮木 ――何か思い出した?
満月 ……ううん。
檮木 そっか。
満月 朔君は?
檮木 え?
満月 僕とキスすると、前世のこと思い出す?
檮木 うん……すごく、懐かしいよ。
〇檮木が切なそうな顔をして、満月は思い出せないことに罪悪感を覚える。
満月M 僕が思い出せないせいで、朔君にこんなに悲しい顔をさせるんだ……
檮木 じゃあ、そろそろ寝よっか。
満月 朔君!
〇満月は申し訳なさと檮木を悲しませたくないという気持ちで堪らなくなり、離れようとした檮木の服の裾を掴んで引き寄せ、自分からキスをする。
満月 ごめんね、なんにも思い出せなくて。
檮木 ――満月。
〇檮木は思わず満月をベッドに押し倒す。しばらくキスをした後、体に触れられた満月はビクリとして、反射的に檮木の体を押し返す。檮木は我に返って素直に離れる。
檮木 ……ごめんね、駄目だね。満月はまだ何も思い出してないのに……
満月 うん……。あの……ごめん……。そういうのは……ええと……まだ……僕、どうしたらいいか……(ゴニョゴニョと口籠る)。
檮木 うん、そうだね、ごめん。――よし、今日はもう寝よう。おやすみ。
〇檮木は微笑んで満月の頭を撫で、自分のベッドに戻っていく。満月に背を向けて寝転がる。満月はドキドキしていて、でも、気持ちをちゃんと伝えなくてはと、シーツをギュッと握って檮木に声を掛ける。
満月 朔君!
檮木 うん?
〇檮木が振り返って満月を見る。
満月 僕、嫌だったわけじゃないからね! ――おやすみ!
〇満月は頭まで掛け布団を被って、檮木に背を向ける。ぽかんとそれを見ていた檮木は、ふっと笑う。
檮木 おやすみ……。
〈長崎ペンギン水族館〉
〇満月たちが水族館を楽しんでいる様子が描かれる。檮木と二人でペンギンを見たり、有明と朏島と三人で写真を撮ったり、ペンギンソフトクリームを食べたり。純粋にはしゃいでいた満月は、ハタと我に返って落ち込む。
満月M ――だめだ、全然思い出せない。考えてみれば、そうだよな。これまでの人生でもペンギンなんて何回も見てるけど、前世が過ぎったりしたこと一回も無いもんな……
〇水族館に面した海辺を歩きながら、独り昨夜のことを思い出す満月。
檮木 『まだ思い出してないのに……』
満月M ……ってことは、覚えてないだけで、これまでの人生で僕は朔君とそういうことしてるのか……。そっか、そりゃそうだよな。子どもがいたこともあったって言ってたし……。な、なんか変な感じだ。僕はまだそういうこと、全然経験無いのに……
〇独り照れて赤くなりながら、グルグルと考える満月。
満月M でも……、でも、嫌では無いな、全然。朔君とならきっと――
檮木 満月!
〇いつの間にか波打ち際に立っていた満月を引き寄せて、波から守ってくれる檮木。檮木は「あぶねー」と言いながら波を見ている。満月は檮木の横顔を見つめる。
満月M 朔君は優しい。それは僕が何度も恋をしてきたかつての恋人だから? 僕……、朔君のことが好きかもしれない。この気持ちは僕の前世の記憶がそうさせるんだろうか。
女の子 檮木くーん!
檮木 んー?
〇三人組の女の子たちが少し離れたところから檮木を呼ぶ。呼ばれて女の子たちと話している檮木を、満月は独り眺める。女の子たちからハートが飛んでいるのが遠目にも分かる。
満月M でも、僕は男に生まれてしまってどうしよう。朔君は今世では、別に恋人を作るつもりなんだろうか。それは――それはなんだか切ないな。
〈夜・稲佐山展望台〉長崎の街を見下ろす生徒たち。
有明 夜景だー!
〇満月・有明・朏島・友人A・Bが一緒にいる。少し離れたところで、檮木はペンギン水族館のときとは別の女の子たちと話しをしている。満月たちはそれを眺める。
有明 なんか完全にロックオンされてんな。
友人A 修学旅行ってチャンスだからな。
満月 チャンス?
友人B カップル成立のチャンス。修学旅行が終わるまでに誰が檮木の彼女になれるか、女子たちみんな必死みたいよ。
有明 なるほどねぇ。
満月 ……
〇独りで夜景を見下ろしている満月。そこに走って来る檮木。
檮木 はー、やっと満月んとこ来れた。
〇檮木は笑って、満月の隣で疲れたように肩を落とす。
満月 あはは、お疲れ様。――モテるね、朔君。
檮木 別にそんなことないよ。
満月 ……無理に僕のところに来てくれなくて大丈夫なのに。
檮木 なんで。せっかく長崎の夜景が見られるのに、前世の恋人と見ないなんて。
満月 でも、今世は恋人じゃないでしょ?
檮木 ――ああ、そう。確かにそうだね。満月は別に、俺と夜景見たいってことも無いよね。
〇檮木が少しムッとした顔をして、満月は焦る。
満月M 怒らせちゃった――。違う、そうじゃない、そうじゃないのに。
満月 朔くん――
女の子 檮木くーん!
◯またこれまでとは違う女の子が檮木に声を掛ける。
檮木 なに?
女の子 ちょっと来て、こっち。
満月 あ……
◯引っ張られていく檮木を引き留められず、満月は俯く。
〈翌日・遊園地〉
◯檮木はまた女の子たちに囲まれている。檮木を見ている満月に、有明が声を掛ける。
有明 満月。
満月 ん?
有明 何? あいつと喧嘩かなんかしたの? 檮木が満月にベタベタしてないなんて、珍しいじゃん。
満月 ううん、そうじゃないよ。ただ……ちょっと、嫌な気持ちにさせちゃったかもしれない。僕が悪いんだ。――それに朔君、彼女ができるチャンスかもしれないし。邪魔したら悪いよね。
◯満月はしゅんと肩を落とす。有明が満月とガッと肩を組む。
満月 わっ!
有明 よしよし、もう今日は檮木のことなんて気にすんな! せっかくの修学旅行、遊園地だぜ。俺たちと一緒に楽しもう! な!
満月 う、うん……
◯満月は朏島を見る。朏島が微笑む。
朏島 有明の言う通り、ちゃんと楽しもう。満月、何がしたい?
〇三人は遊園地を楽しむ。ジェットコースターに乗り、チュロスを食べて、コーヒーカップを思い切り回す。満月も楽しんでいるが、ふとしたときに檮木のことが気になってしまう。
満月M どうしても朔君のことが気になって、心が晴れない。
〇満月は観覧車を見上げる。
満月M 檮木君と乗りたかったな……
有明 よーし、遊園地の締めといったらこれでしょう! 観覧車!!
〇少し離れたところで、檮木が女の子たちから観覧車に誘われている。満月がいるのに気が付いて、檮木は女の子たちを置いて満月のところに走ってくる。
檮木 満月、来て!
〇パシリ! と檮木は満月の手を取る。満月は檮木を見上げてドキリとする。そのまま手を引かれ、満月と檮木は二人で観覧車に乗る。ゴンドラの中、無言でお互い外を見ている。
檮木 ……ごめんね。
満月 え?
檮木 前世の恋人だからって付きまとってるの、申し訳なかったなって。満月には今の人生と交友関係があるわけだしさ。――でもどうしても満月のこと気になっちゃって、最後にこれだけ、どうしても満月と乗りたかったんだ。ありがとう、付き合ってくれて。
満月 そんな! そんなことないよ。僕も朔君と観覧車乗りたかったんだ。――嬉しい。
檮木 満月……。そっか。
〇檮木はぽかんと満月を見、それから嬉しそうに笑う。満月は意を決して、気になっていたことを聞いてみる。
満月 朔君!
檮木 うん?
満月 今世はどうするの?
檮木 今世……?
満月 朔君、今世では別の彼女を見つけようと思ってる? 僕が男に産まれてしまったから……。朔君と仲良くしたいって女の子がたくさんいるのに、僕なんかといるの、勿体無いと思って。昨夜のはそういう意味だよ。僕が朔君と一緒にいたくないわけじゃない。僕、朔君がそのつもりなら、邪魔したらいけないなって思って……。
檮木 そんなことしない! 俺の恋人は何度生まれ変わっても満月だけだよ。身分が違うこともあった、歳の差があることもあった。でも俺は毎度君を愛した。今回だっておんなじだ。大好きだよ、満月。――俺は、今世だって満月の恋人になりたい。
〇檮木は一気に言って、ハッと冷静になり、ニッコリ笑う。
檮木 いつか、満月が全部思い出して、そうしたいと思ってくれたらね。
満月 朔君……
〇二人は観覧車から降りる。
友人B おーい! 集合だぞー!
檮木 行こう。
◯檮木は微笑んで満月の手を引いてくれる。
満月M 朔君……、僕、僕ね。何にも思い出してないけど、でも、朔君が好きだよ。もしずっと思い出せなくても、それでもいつか、恋人になってくれますか……?
◯檮木の告白が嬉しく、集合場所でぽけーっとしている満月。朏島が何か言いたげに満月を見つめている。
〈修学旅行・長崎〉長崎市内の観光を楽しむ生徒たち。満月・檮木・有明・朏島・友人A・Bの六人が同じ班。
〇平和公園を見学し、出島、中華街を訪れている様子が一コマずつ描かれる。最後に、グラバー園を歩いている満月の姿。
満月M 僕たちはあれからも時々キスをしている。その度に朔君から「思い出した?」と聞かれ、何も思い出せない僕は「ううん」と俯くしかない。本当になんにも思い出せない。でも……朔君とのキスは、なんだか心がじんとして幸せな気持ちになる。それはやっぱり運命の恋人だからなのかな。思い出せなくても心は覚えてる……みたいな? 朔君は毎日のように付き合ってくれるのに、僕はなんにも思い出せなくて申し訳ない。でも……でも、僕はこの修学旅行に期待してるんだ!
〇満月は修学旅行のしおりのとあるページに目を留める。長崎ペンギン水族館の紹介ページが映る。
満月M 長崎ペンギン水族館! 僕たちは昔、フォークランドでペンギンたちと住んでたことがあるんだって!
〇満月のイメージの中、フォークランドにいる二人。モコモコの防寒着を着た二人が焚き火の前でココアを飲んでいて、周りにはジェンツーペンギンがたくさんいる。
満月M もしかして一緒にペンギンを見たら、今度こそ何か思い出せるかも!
◯メラメラしている満月を見る有明と朏島。
有明 なんか気合入ってんなー。
朏島 ……
〈夜・ビジネスホテルの個室〉ツインルームに満月と檮木がいる。
◯寝る前のTシャツ姿で、ベッドの上でキスしている二人。
檮木 ――何か思い出した?
満月 ……ううん。
檮木 そっか。
満月 朔君は?
檮木 え?
満月 僕とキスすると、前世のこと思い出す?
檮木 うん……すごく、懐かしいよ。
〇檮木が切なそうな顔をして、満月は思い出せないことに罪悪感を覚える。
満月M 僕が思い出せないせいで、朔君にこんなに悲しい顔をさせるんだ……
檮木 じゃあ、そろそろ寝よっか。
満月 朔君!
〇満月は申し訳なさと檮木を悲しませたくないという気持ちで堪らなくなり、離れようとした檮木の服の裾を掴んで引き寄せ、自分からキスをする。
満月 ごめんね、なんにも思い出せなくて。
檮木 ――満月。
〇檮木は思わず満月をベッドに押し倒す。しばらくキスをした後、体に触れられた満月はビクリとして、反射的に檮木の体を押し返す。檮木は我に返って素直に離れる。
檮木 ……ごめんね、駄目だね。満月はまだ何も思い出してないのに……
満月 うん……。あの……ごめん……。そういうのは……ええと……まだ……僕、どうしたらいいか……(ゴニョゴニョと口籠る)。
檮木 うん、そうだね、ごめん。――よし、今日はもう寝よう。おやすみ。
〇檮木は微笑んで満月の頭を撫で、自分のベッドに戻っていく。満月に背を向けて寝転がる。満月はドキドキしていて、でも、気持ちをちゃんと伝えなくてはと、シーツをギュッと握って檮木に声を掛ける。
満月 朔君!
檮木 うん?
〇檮木が振り返って満月を見る。
満月 僕、嫌だったわけじゃないからね! ――おやすみ!
〇満月は頭まで掛け布団を被って、檮木に背を向ける。ぽかんとそれを見ていた檮木は、ふっと笑う。
檮木 おやすみ……。
〈長崎ペンギン水族館〉
〇満月たちが水族館を楽しんでいる様子が描かれる。檮木と二人でペンギンを見たり、有明と朏島と三人で写真を撮ったり、ペンギンソフトクリームを食べたり。純粋にはしゃいでいた満月は、ハタと我に返って落ち込む。
満月M ――だめだ、全然思い出せない。考えてみれば、そうだよな。これまでの人生でもペンギンなんて何回も見てるけど、前世が過ぎったりしたこと一回も無いもんな……
〇水族館に面した海辺を歩きながら、独り昨夜のことを思い出す満月。
檮木 『まだ思い出してないのに……』
満月M ……ってことは、覚えてないだけで、これまでの人生で僕は朔君とそういうことしてるのか……。そっか、そりゃそうだよな。子どもがいたこともあったって言ってたし……。な、なんか変な感じだ。僕はまだそういうこと、全然経験無いのに……
〇独り照れて赤くなりながら、グルグルと考える満月。
満月M でも……、でも、嫌では無いな、全然。朔君とならきっと――
檮木 満月!
〇いつの間にか波打ち際に立っていた満月を引き寄せて、波から守ってくれる檮木。檮木は「あぶねー」と言いながら波を見ている。満月は檮木の横顔を見つめる。
満月M 朔君は優しい。それは僕が何度も恋をしてきたかつての恋人だから? 僕……、朔君のことが好きかもしれない。この気持ちは僕の前世の記憶がそうさせるんだろうか。
女の子 檮木くーん!
檮木 んー?
〇三人組の女の子たちが少し離れたところから檮木を呼ぶ。呼ばれて女の子たちと話している檮木を、満月は独り眺める。女の子たちからハートが飛んでいるのが遠目にも分かる。
満月M でも、僕は男に生まれてしまってどうしよう。朔君は今世では、別に恋人を作るつもりなんだろうか。それは――それはなんだか切ないな。
〈夜・稲佐山展望台〉長崎の街を見下ろす生徒たち。
有明 夜景だー!
〇満月・有明・朏島・友人A・Bが一緒にいる。少し離れたところで、檮木はペンギン水族館のときとは別の女の子たちと話しをしている。満月たちはそれを眺める。
有明 なんか完全にロックオンされてんな。
友人A 修学旅行ってチャンスだからな。
満月 チャンス?
友人B カップル成立のチャンス。修学旅行が終わるまでに誰が檮木の彼女になれるか、女子たちみんな必死みたいよ。
有明 なるほどねぇ。
満月 ……
〇独りで夜景を見下ろしている満月。そこに走って来る檮木。
檮木 はー、やっと満月んとこ来れた。
〇檮木は笑って、満月の隣で疲れたように肩を落とす。
満月 あはは、お疲れ様。――モテるね、朔君。
檮木 別にそんなことないよ。
満月 ……無理に僕のところに来てくれなくて大丈夫なのに。
檮木 なんで。せっかく長崎の夜景が見られるのに、前世の恋人と見ないなんて。
満月 でも、今世は恋人じゃないでしょ?
檮木 ――ああ、そう。確かにそうだね。満月は別に、俺と夜景見たいってことも無いよね。
〇檮木が少しムッとした顔をして、満月は焦る。
満月M 怒らせちゃった――。違う、そうじゃない、そうじゃないのに。
満月 朔くん――
女の子 檮木くーん!
◯またこれまでとは違う女の子が檮木に声を掛ける。
檮木 なに?
女の子 ちょっと来て、こっち。
満月 あ……
◯引っ張られていく檮木を引き留められず、満月は俯く。
〈翌日・遊園地〉
◯檮木はまた女の子たちに囲まれている。檮木を見ている満月に、有明が声を掛ける。
有明 満月。
満月 ん?
有明 何? あいつと喧嘩かなんかしたの? 檮木が満月にベタベタしてないなんて、珍しいじゃん。
満月 ううん、そうじゃないよ。ただ……ちょっと、嫌な気持ちにさせちゃったかもしれない。僕が悪いんだ。――それに朔君、彼女ができるチャンスかもしれないし。邪魔したら悪いよね。
◯満月はしゅんと肩を落とす。有明が満月とガッと肩を組む。
満月 わっ!
有明 よしよし、もう今日は檮木のことなんて気にすんな! せっかくの修学旅行、遊園地だぜ。俺たちと一緒に楽しもう! な!
満月 う、うん……
◯満月は朏島を見る。朏島が微笑む。
朏島 有明の言う通り、ちゃんと楽しもう。満月、何がしたい?
〇三人は遊園地を楽しむ。ジェットコースターに乗り、チュロスを食べて、コーヒーカップを思い切り回す。満月も楽しんでいるが、ふとしたときに檮木のことが気になってしまう。
満月M どうしても朔君のことが気になって、心が晴れない。
〇満月は観覧車を見上げる。
満月M 檮木君と乗りたかったな……
有明 よーし、遊園地の締めといったらこれでしょう! 観覧車!!
〇少し離れたところで、檮木が女の子たちから観覧車に誘われている。満月がいるのに気が付いて、檮木は女の子たちを置いて満月のところに走ってくる。
檮木 満月、来て!
〇パシリ! と檮木は満月の手を取る。満月は檮木を見上げてドキリとする。そのまま手を引かれ、満月と檮木は二人で観覧車に乗る。ゴンドラの中、無言でお互い外を見ている。
檮木 ……ごめんね。
満月 え?
檮木 前世の恋人だからって付きまとってるの、申し訳なかったなって。満月には今の人生と交友関係があるわけだしさ。――でもどうしても満月のこと気になっちゃって、最後にこれだけ、どうしても満月と乗りたかったんだ。ありがとう、付き合ってくれて。
満月 そんな! そんなことないよ。僕も朔君と観覧車乗りたかったんだ。――嬉しい。
檮木 満月……。そっか。
〇檮木はぽかんと満月を見、それから嬉しそうに笑う。満月は意を決して、気になっていたことを聞いてみる。
満月 朔君!
檮木 うん?
満月 今世はどうするの?
檮木 今世……?
満月 朔君、今世では別の彼女を見つけようと思ってる? 僕が男に産まれてしまったから……。朔君と仲良くしたいって女の子がたくさんいるのに、僕なんかといるの、勿体無いと思って。昨夜のはそういう意味だよ。僕が朔君と一緒にいたくないわけじゃない。僕、朔君がそのつもりなら、邪魔したらいけないなって思って……。
檮木 そんなことしない! 俺の恋人は何度生まれ変わっても満月だけだよ。身分が違うこともあった、歳の差があることもあった。でも俺は毎度君を愛した。今回だっておんなじだ。大好きだよ、満月。――俺は、今世だって満月の恋人になりたい。
〇檮木は一気に言って、ハッと冷静になり、ニッコリ笑う。
檮木 いつか、満月が全部思い出して、そうしたいと思ってくれたらね。
満月 朔君……
〇二人は観覧車から降りる。
友人B おーい! 集合だぞー!
檮木 行こう。
◯檮木は微笑んで満月の手を引いてくれる。
満月M 朔君……、僕、僕ね。何にも思い出してないけど、でも、朔君が好きだよ。もしずっと思い出せなくても、それでもいつか、恋人になってくれますか……?
◯檮木の告白が嬉しく、集合場所でぽけーっとしている満月。朏島が何か言いたげに満月を見つめている。

