クロとシロと、時々ギン

 萌乃が不思議そうに尋ねると、白谷吟は小さく首を横に振る。どうやら卵全般が駄目らしい。どんなに調理に手を加えていても、あのデロンとしたものが入っているのだと思うと、どうしても嫌悪感があるのだと言う。

 アレルギーではないため、卵が使われていると分からなければ問題なく食べられる。しかし、卵を使った料理が食べられても、苦手意識は拭えないのだという。だから、オムライスなどの卵料理が出てくると、つい避けて通ってしまうらしい。

 パーフェクトヒューマン白谷吟にそんな弱点があったなんて知らなかった。私と萌乃は、興味津々といった様子で、卵の何が嫌なのか詳しく聞こうとする。しかし、白谷吟は顔を赤くして、そこで話を終わらせた。

 ひとしきり笑い終わったシロ先輩が、息を整えながら口を開く。

「まぁ、こいつにも苦手なものくらいあるさ。あまりイジメてやるなよ」

 そう言って、シロ先輩は私と萌乃の肩にポンッと手を置いた。白谷吟は恨めしそうな表情でシロ先輩を睨んでいた。

「誰のせいでこんな話になったと思ってるんだよ」

 白谷吟の恨み節は、シロ先輩の耳に届いているのかいないのか、彼は楽しそうに笑みをこぼすだけだった。

 結局、その後もその話題で盛り上がり、他の話が進まなかったため、また後日改めて話し合いをすることになった。

 でも、たまにはこういう何気ない雑談をするのもいいかもしれない。私たちはチームを組んで仕事をしているのだ。仕事を円滑に進めるためには、お互いのことをもっと知って関係を深めておくべきだろう。

 そう考えると、今日のこの時間は無駄ではなかった気がする。そんなことを考えつつ、シロ先輩と白谷吟の顔を見る。二人は言い合いをしながらも、楽しげな笑みを浮かべていた。さすがは幼馴染だなと思い、自然と笑みがこぼれる。萌乃も白谷吟との距離を縮めようと思っているのか、いつもより積極的に彼に話しかけていた。

 私はそんな様子を眺めながら、このチームの絆はきっと深まるだろうと確信めいたものを感じていた。これからもっと言葉を重ねて、行動を共にして、そしていつか……。

 いつしかシロ先輩のことだけを目で追っていた私は、慌てて首を振る。私は一体何を考えているんだろう。

 気を取り直すために、パンッと頬を軽く叩く。突然の行動に驚いた三人がこちらを向いた。呆れたように私を見るシロ先輩のその瞳は、まるで私のことを見透かしているようで、心臓が小さくトクリと跳ねた。