クロとシロと、時々ギン

 シロ先輩と白谷吟のやり取りを唖然と見つめていた私は、ハッと我に返ると慌てて二人の仲裁に入る。

「そうですよ。何で、私と白谷先輩がプランを使うことになるんですか?」

 私が問うと、シロ先輩は少しバツの悪そうな顔をした。それから、コホンッと咳払いをすると、誤魔化すような笑みを浮かべた。

「たとえばって話だよ。食の好みが合うカップルじゃなきゃ、このプランは使えないなってこと」

 シロ先輩の返答を聞き、私は納得いかないながらも、とりあえず矛を収めることにした。白谷吟も不服そうではあったが、それ以上の追及はなかった。

 しかし、私には気になることがあった。先程のシロ先輩は、私と白谷吟が合わないと言った時に嬉しそうにしていた。なぜそんな表情をしたのか。私はシロ先輩の横顔を見つめる。その横顔からは、今は感情を読み取ることができなかった。

 室内に妙な沈黙が流れる。その空気を察してか、萌乃がいつもより少しだけ大きな声で、白谷吟に話しかけた。

「そ、それよりも、白谷さんが卵がダメだなんて知りませんでした。アレルギーですか?」

 萌乃の問いかけに、白谷吟は困ったように眉根を寄せた。

「ううん。そういうわけじゃないんだけど、何というか……昔から苦手なんだよね。食わず嫌いは良くないと思うんだけど、どうしても……」

 白谷吟の回答に、私は思わず大きな声を出した。

「ええっ? 白谷先輩、卵嫌いなんですか?」
「うん。まぁ……」

 卵が嫌いだという人に初めて会った。普段食べる機会が多い食材の筆頭とも言える卵を、まさか嫌っている人が居るとは思わなかった。

 私は大きく目を見開き、まじまじと白谷吟を見つめてしまう。そんな私から、白谷吟は居心地が悪そうに視線を逸らす。

「どうしてですか? 卵の何がダメなんですか?」

 白谷吟は苦笑いを浮かべながら答える。

「何がと言われても……そうだな。強いて言えば、見た目かな。なんかこう……フォルムが気持ち悪いんだよね」

 その言葉を聞いて、私はポカンとした表情を浮かべてしまった。萌乃も不思議そうな顔をしている。シロ先輩だけが、堪えきれず吹き出していた。

「ふぉ、フォルム……ですか?」

 私は、笑い転げるシロ先輩を無視して、白谷吟に聞き返す。白谷吟は恥ずかしさをごまかすかのように頭を掻くと、言いづらそうに口を開いた。

「そう。なんか、あのデロンとしたのがね。口に入れるのが躊躇われる感じで」
「……つまり、生卵が苦手ということですか?」