クロとシロと、時々ギン

「イメージに訴える?」

 シロ先輩の提案の意図が分からず、私は首を傾げる。すると、シロ先輩が説明してくれた。

「結婚式の料理って聞くと、フルコースを思い浮かべる人が多いだろ。だから、料理は前回みたいなビュッフェ形式にするんじゃなくて、コース料理として出す。ただし、ゲスト一人一人の皿に一品ずつ料理を載せていくんじゃなくて、テーブルに一つの大きな料理を用意する。その料理をみんなでシェアしながら食べる。そうだなぁ。イメージは中華料理屋の円卓みたいな感じか……」
「へぇ。面白いかも! それならインパクトがあっていいかもしれないね」

 白谷吟が顔を綻ばせて賛同する。

「大皿で運べばアテンドするスタッフの人員を減らせますし、料理を運ぶ手間も省けますもんね」

 私もシロ先輩の意見に賛成だ。しかし、シロ先輩が苦笑いを浮かべた。

「ただ、その提供の仕方でどんなメニューができるのか、俺には分からないんだけどな」
「まあ、そこは問題だけど、まずはホテル側に提案してみよう。その反応を見てからまた考えればいいさ」

 白谷吟はシロ先輩にそう言ってから、再び私たちの方を見る。

「というわけで、今回のコンセプトは、『シェアするフルコース』ってことでいいかな。異論はあるかい?」

 白谷吟が私たちに確認を取る。

「はい。大丈夫だと思います」
「賛成です」

 私が答えると、萌乃も同じタイミングで返事をした。

「よし。それじゃあ、早速具体的なプランを考えていこうか。とりあえず、食事のコンセプトについてはこれで決まり。次はどんな感じのコース料理にするかだね。和食、洋食、中華、イタリアン、フレンチ、創作料理……色々考えられるけど、どんなものがいいと思う?」

 白谷吟が私たちに意見を求める。様々な選択肢がある中、最初に口を開いたのは萌乃だった。

「あの。料理のジャンルは、和食か洋食かと決めなければいけないんですか?」

 萌乃の疑問に、白谷吟は首を傾げる。

「どういうこと?」
「例えばですけど、一つの食材をメインテーマに使った料理だけを提供するというのは、どうでしょうか?」
「メインテーマ?」
「仮に、リンゴをメインテーマにしたとして、どの料理にも必ずリンゴを使うんです。つまりリンゴのフルコースにするんです。一つの食材を多用することで、コストカットもできるのではないでしょうか」

 なるほど。確かに、食材をまとめて購入すれば、それだけ食材にかかるコストを抑えることができるだろう。