クロとシロと、時々ギン

 その言葉に、私は耳を疑う。本来ならば、一挙式ごとに改善点を洗い出して次に生かし、プラン体系を構築していくという形なのに。

 しかし、その条件を聞いたシロ先輩は、ふっと笑みを浮かべた。

「そのように言われるということは、既に上の確認が取れているということですか?」

 三嶋さんも負けじとニヤリと笑い返す。

「ええ。上層部同士で話はついていると聞いております」
「そうですか。では、問題なさそうですね。かしこまりました。お引き受けします」

 そう言って、シロ先輩が深々と頭を下げたので、私もそれに倣って慌てて頭を下げる。

 結局、私たちはいつもこうだ。どんなに難しい案件でも、上がGOサインを出したのなら、私達はそれに従うしかない。私とシロ先輩は、顔を上げる直前、互いに顔を見合わせてこっそりと苦笑した。

 顔を上げると、シロ先輩は早速、三嶋さんに次の挙式についていくつか質問を投げかける。時間がないので、大まかな内容を聞いておきたいのだろう。

 私は、シロ先輩のもとを離れ、披露宴が終了しパラパラと散会していくゲストの中、これまで行動を別にしていた白谷吟と萌乃のところへ向かった。

 萌乃は、私の姿を捉えると、嬉しそうに手を振って駆け寄ってきた。

「お疲れさまです、明日花さん」

 萌乃は疲れた様子を一切見せずにニコニコしている。

「萌ちゃん、お疲れ様。どうだった? 初めての大役は」

 私が尋ねると、彼女は頬を紅潮させて答える。

「白谷さんが付いていてくださったので、とても安心して臨むことができました。私、結婚式って初めて参加したんですけど、皆さんお幸せそうで、こちらまで嬉しくなりますね!」

 その言葉に嘘はないようだ。彼女は本当に楽しかったようで、今もなお興奮冷めやらぬといった感じである。そんな彼女の様子を見て、私は思わず微笑んだ。

「明日花さんの方は、どうでした?」

 彼女の期待に満ちた視線に、私は少し考えてから答えた。

「そうね。概ね予定通りだったし、大した混乱もなかったように思うから、まあ、成功と言えるんじゃないかしら」

 実際、大きな問題はなかった。

 しかし、小さなトラブルはあった。例えば、シェルパウダーが風に流されて、ゲストにかかってしまったこと。幸い、おおごとにはならなかったが、ゲストに不快な思いをさせてしまったので、これは要検討だ。

 他にも、料理提供の際にゲストが転倒してしまったりなど、数え出したらキリがないほど、細かな問題は起きていた。