季節は夏真っ盛り。早朝だというのにセミたちの盛大な鳴き声が響き渡る。私はベッドの上で上体を起こし、軽く伸びをした。

　昨夜、寝る前にタイマーでエアコンを稼働させていたので、部屋は適度に冷えていた。

　時計を見ると、まだ朝の六時。いつもなら起きるには少し早い時間だ。しかし、今日はそういうわけにもいかない。なぜならば、今日の私は、休日ではないのだ。

　ゆっくりとベッドから抜け出すと、そのままキッチンに向かう。冷蔵庫を開けて、ミネラルウォーターを取り出すと、コップいっぱいに水を注ぎ、それを一気に飲み干した。冷たい水が喉を通り抜ける感触は、まるで身体中にエネルギーを巡らせているような気がした。

　朝食はトーストとサラダとスクランブルエッグ。簡単なものだが、一人暮らしではこれが精一杯である。パンを焼きながら、フライパンにバターを落とす。溶けたバターがジュワ〜といい音を立てた。

　トースターのチンという軽い音が聞こえてきたタイミングで、ケトルのお湯が沸く。ドリッパーに沸騰したお湯をゆっくり注ぎ入れると、コーヒー豆の香ばしい香りが広がった。

　出来上がったものをテーブルの上に並べると、ちょうどスマホのアラームが鳴った。六時半にセットしていたものだ。

　トーストを齧りながら、テレビのリモコンを操作する。朝はニュースしか見ないので、チャンネルは決まっている。画面が明るくなり、爽やかな女性アナウンサーが現れた。彼女は、にこりと微笑むと、落ち着いた口調で挨拶をした。

《おはようございます。それでは、今日のお天気です》

　天気予報が始まったようだ。私は、トーストを口にくわえたまま、画面を見入る。

《本日は全国的に晴れ。最高気温は、関東地方を中心に三十度を超える暑さとなるでしょう。熱中症対策はしっかりと行いましょう！》

　天気予報が終わると、画面はスポーツコーナーへと切り替わった。スポーツにはあまり興味がないので、朝食を食べ終えると、手早く食器を片付け、洗面所へと向かう。

　歯磨きをして顔を洗い、髪を整えた。今日も陽射しが強そうなので紫外線対策は万全にしておく。化粧水と乳液をたっぷりつけてから、ファンデーションをつける。あまり濃く塗ると肌が荒れてしまうので、薄めに。チークやリップの色味も今日はいつもより抑えめに。今日の主役は私じゃないのだから。

　クローゼットから白いブラウスを取り出し、袖を通す。鏡を見ながら、襟元のリボンを丁寧に結んだ。