クロとシロと、時々ギン

 落ち込む私を励ますように、白谷吟は明るい声で言った。

「確かに史郎は、小四の頃から僕の実家の隣で暮らしている。君の言う神社からは少し離れているね。でもさ、史郎のお爺さんの家が、君の実家の近くであることは確かなことだろう? 君とシロヤギさんが出会った頃に、史郎があの神社に通っていた可能性はあるじゃないか」
「でも……」

 それでもまだ不安げにする私に向かって、白谷吟は力強く言った。

「それに、僕は君の思い出と似たような話を史郎から聞いたことがあるんだ。子供の頃に聞いただけだから、君の思い出ほどはっきりとは覚えていないけど。でもきっと、君のシロヤギさんは、史郎だよ」

 そう言って白谷吟は微笑んだ。白谷吟の言葉は、また私の期待を膨らませた。でも、一方で冷静になった自分がいるのも事実だ。果たして、シロヤギさんはシロ先輩なのか。それとも他の誰かなのか。

 私は白谷吟の顔を見る。この人はどうしてこんなにも自信あり気に言えるのだろう。ふと、疑問を口にしたくなった。

「白谷先輩は、どうしてそんなに断言できるんですか?」

 私の質問を聞くと、彼は少し驚いたような顔をした。それから、嬉しそうに微笑む。

「だって、そうだったら嬉しいでしょ。二人とも」

 白谷吟はそう言って笑みを浮かべる。その屈託ない笑顔に思わず見惚れてしまう。それから、白谷吟の言葉に疑問を覚えて、首を傾げた。

「二人とも?」

 誰のことを言っているのだろう。

 すると、今度は白谷吟の方が不思議そうな顔をした。

「うん。矢城さんと史郎の二人とも」

 そう言われて、私はますます分からなくなる。

「そりゃあ、シロ先輩がシロヤギさんだったら私は嬉しいですけど、白谷先輩は、何でシロ先輩も嬉しいと思うんですか?」

 私の問いに、白谷吟は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「矢城さん。まさか、史郎の気持ちを知らないなんて言わないよね?」

 私は、自分の心臓がどきりと高鳴るのを感じた。昨日の出来事が思い出され、思わず顔が赤くなる。

 白谷吟は、シロ先輩の気持ちを知っているということか。そして、頭の中でこれまでの白谷吟との会話を思い返す。もしかすると、いや、もしかするとじゃない。白谷吟は確実にシロ先輩の気持ちを知っている。

 まさか、昨日のことも知っているのではないだろうか。私は急に恥ずかしくなり、両手で頬を押さえた。

 白谷吟はそんな私の様子に、愉快そうに笑った。

「矢城さんも、もう史郎の気持ちを知っているようだね」