クロとシロと、時々ギン

「私、シロ先輩がシロヤギさんなんじゃないかって思ったら、居ても立っても居られなくなって……。でも、今日はシロ先輩は都合が悪いみたいだし。なので、白谷先輩なら何か知っているかなと思って連絡してしまいました」

 言い終わって、なんだか子供っぽい動機だと恥ずかしくなる。きっと呆れられたに違いない。そう思って、恐る恐る白谷吟の様子を窺う。しかし、予想に反して彼の反応は穏やかなものだった。

「そっか」

 彼はそう言うと、静かに肯いた。その様子に拍子抜けしてしまう。そんな私に気がついたのか、白谷吟は少しだけ苦笑した。

「矢城さんは、僕の答えに何か期待をしていたのかもしれないけど、残念ながら僕は本当のところは何も知らないよ」

 その答えに思わず落胆しそうになるが、ぐっと堪える。そんな私を見て、白谷吟は続けた。

「でも、矢城さんの思い出話を聞いた時から、僕も、シロヤギさんは史郎なんじゃないかって思っていたよ」

 その言葉に私は目を見開きつつも、やはりそうかと思う気持ちもあった。これまでの白谷吟の言動を振り返れば、何となく察せられる部分があった。

「やっぱり、そうなんでしょうか?」

 私が尋ねると、白谷吟は口では分からないと言いながら、その眼差しの中には確信が満ちていた。

 それから、私たちはしばらく話を続けた。本当に何も聞いていないのか。しつこいくらいに確認する私に、白谷吟は何度も首を振った。自分も決定的な話は聞いたことがない。ただ、引っ越してくる前のことは少し聞いたことがあると話してくれた。

 白谷吟の話によると、シロ先輩は幼い頃は体が弱く学校を休みがちだった。シロ先輩の両親は仕事があり、そんなシロ先輩に一日中付いていることが出来ないからと、シロ先輩は一時期祖父母の家に預けられていたらしい。

「それっていつ頃の話なんですか?」

 私が食いつくと、白谷吟は困ったように笑う。白谷吟によれば、それは小学一年生か二年生頃の話だろうと言うことだった。

 私のシロヤギさんとの記憶は、おそらく三年生か四年生頃のことだ。つまり、私の記憶が正しければ、学年が一つ上のシロ先輩は、四年生か五年生頃までは、あの神社のそばで生活をしていなければ時期的には重ならない。

「でも、確か四年生の時にシロ先輩が、白谷先輩のご自宅のお隣に越してきたんですよね?」

 私が訊ねると、白谷吟は肯く。私の期待が萎んでいく。シロ先輩のシロヤギさん説は私の思い過ごしなのだろうか。