クロとシロと、時々ギン

 母の意味深な発言に、私とシロ先輩は互いに顔を見合わせる。母はコホンと咳払いをして、何とかその場を仕切り直そうとした。しかし、私がジトッと見つめると、観念したように母はポツリポツリと話し始めた。

 曰く、シロ先輩は、私のお見合い相手だったと。

「はぁ!?」

 思わず大きな声を出してしまった私は、慌てて口を塞ぐ。シロ先輩も驚いたようで固まっていた。そんな私たちを見て、初めは真面目な顔をしていた母だったが、次第にクツクツと笑い出した。私はキッと母を睨む。それに気づいた母は、すぐに笑いを引っ込めた。そして、少し真面目な表情で言う。

「ほら、いつだったか、あなたに、お母さんの知り合いの息子さんに会ってみないかって聞いたことがあったじゃない」

 そう言えば、以前にそのような話をされたことがあったと思い出す。その時、私は母の話を何も聞かずに断っていた。

「まさか、あの時の相手がシロ先輩だったっていうの?!」

 信じられない気持ちでシロ先輩を見る。シロ先輩はバツの悪そうな顔をしながら、首を横に振った。自分は何も知らないと言いたいのだろう。

「一体、どういうこと? どうして今まで黙って……」

 言いたいことが溢れてきて、うまく言葉にならない。それでも、なんとか言葉を吐き出し、母に説明を求めた。

「黙っても何も、あなた、全然聞く耳を持たなかったじゃない。それに、あなたと史郎さんがお仕事のコンビで、いつも一緒にお仕事をしているなんて、お母さん知らなかったわよ。今日、二人から聞いてビックリしているんだから」

 そう言って、母は少し頬を膨らませてみせた。

 母の説明によると、シロ先輩の母親と私の母は学生時代の友人で、今でも時々連絡を取っているらしい。久しぶりに再会した際、互いの子供が同じ職場だと知って驚いたそうだ。しかも、どちらの子供にも浮いた話の一つもない。そこで、職場が同じならばちょうど良いと思った親たちは、自分たちで接点を作ろうと考えたようだった。

 そこまで聞いて、私はあることに気がついた。

「ねぇ、その話だと、お母さんはシロ先輩がうちの会社にいることを知ってたってことだよね? でも、あの時はそんな事言ってなかったよね?」
「だって、お相手が同じ職場の人だなんて言ったら、あなた身構えるでしょ。だから言わなかったの」

 私の問いに、母は素知らぬ顔で答えた。母の態度に呆れ果てる。私は頭を抱えたくなった。シロ先輩も私の隣で苦笑を浮かべている。