クロとシロと、時々ギン

 シロ先輩の問い掛けに、私は一瞬迷う。まさか、思い出に浸りに来たとは、何だかセンチメンタルに浸っているようで恥ずかしくて言えない。どうしようかと考えあぐねた末、私は、無難な言葉を返すことにした。

「私の実家、この近くなんですよ。暇つぶしに散歩してたら、ちょっと考え事をしてしまって……。気づいたらここに着いてました」

 私の答えを聞いたシロ先輩は、何故か驚いた顔をする。しかしすぐにフッと笑った。シロ先輩の反応の意味がわからず戸惑っている私の頭にポンッと手を置くと、シロ先輩は歩き出す。

「俺も付き合ってやるよ。その暇つぶし。まだ時間あるんだろ?」

 シロ先輩は、そのまま私の返事を待たずにズンズンと前を進んでいく。私は慌てて後を追いかけた。

「どこへ行くんですか?」

 私の問い掛けに、シロ先輩はチラッとこちらを振り返る。そしてニヤリと笑って言った。

「神社にいるんだ。まずはお参りだろ」

 シロ先輩は私の答えも聞かずに、神社の境内へと続く階段を上っていく。私は急いでその後を追った。

 境内には誰もいなかった。静まりかえった空気の中、私たちは賽銭箱の前に立つと、それぞれ五円玉を取り出し、投げ入れる。パンッと柏手を叩くと、目を閉じた。

 目を開けた私は、隣に立っているはずのシロ先輩の姿がないことに気づいてハッとする。キョロキョロと周りを見回せば、少し離れたところでぼんやりと空を見上げていた。

 私は小走りでそちらへ向かう。少し息を切らしながら駆け寄った私を見て、シロ先輩は苦笑いを浮かべる。

「今日は休みなんだ。そんなに急がなくてもいいだろ?」
「だって、置いて行かれたと思って……」

 私がそう言えば、「バーカ」と言って頭をクシャクシャと撫でられる。私はムッとして口を尖らせた。

「もう、またそうやって髪を乱す! 」

 私の機嫌が悪くなったことに気づいたのか、シロ先輩はバツが悪そうな顔をすると、パッと頭から手を離した。私は乱れた髪を整える。その様子を見ていたシロ先輩は、「悪りぃ」と口の中で小さく謝った。

 シュンとしてしまったシロ先輩の様子に、私は思わずクスッと笑う。途端に、シロ先輩の眉間にシワが寄る。

「何だよ」

 不貞腐れたように言われて、今度は堪えきれずに声を出して笑ってしまった。ますます不満げな表情を見せるシロ先輩。私は慌てて弁明をする。

「いえ、何でもないです。いいですか、シロ先輩。昨日も言ったけど、頭に手を置くときは、ポンポンですよ」