クロとシロと、時々ギン

 萌乃は、私の話を興味深そうに聞いている。私は話を続けた。

「何日かして再びその場所へ遊びに行くと、私が残したメモとは違うものがあったの。なんと書かれていたのかは覚えていないけれど、私はまたそれに返事を書いて残しておいたの」
「もしかして、それで文通が始まったってことですか?」

 萌乃の問い掛けに小さく首肯する。

「なんですか、それ! すごくかわいい話じゃないですか!」

 萌乃は、興奮気味に目を輝かせている。私は、そんな様子に苦笑いを浮かべる。

「それで? その相手とはどうなったんですか? 文通はそれからも続いたんですか? っていうか、手紙のやり取りが出来る距離にいるってことは、直接会うようになったとか? ねえ、明日花さん、教えてくださいよ~」

 矢継ぎ早に質問を投げかけてくる萌乃に、私はたじろぐ。その一瞬の隙を突いて、それまで黙っていたシロ先輩が、私の方を見て真剣な面持ちで問いかけてきた。

「俺、なんかその話、知ってる気がするんだけど、クロから聞いたことあったか?」
「え?」

 シロ先輩は、何かを思い出そうとするかのように、眉間にシワを寄せていた。私もシロ先輩と同じように記憶を辿ってみる。しばらく考えて、ようやく思い至る。

「ああ、アレですよ。シロ先輩の言葉が、私が昔言われた言葉に似てたって話した時ですよ。どこで話したんでしたっけ? えっと……ファミレス?」

 私とシロ先輩の会話を聞いていた萌乃は不思議そうにしている。白谷吟は、相変わらず楽しそうに私たちの様子を眺めている。私の答えを聞いて、シロ先輩は一層眉間に皺を寄せた。それからしばらくして、シロ先輩はハッとした様子を見せた後、スッキリしたような顔になった。

「ああ、あのマンガが好きな奴の話か!」

 シロ先輩は、納得がいったという風に何度も大きく首を縦に振った。萌乃は、まだよく分からないというように首を傾げている。

 シロ先輩の言葉に、いち早くリアクションを見せたのは白谷吟だった。彼は一瞬ポカンとした表情を見せたあと、おかしそうに大声で笑い出した。

 そんな彼にシロ先輩が怪しげな視線を向けると、白谷吟はすぐに謝った。白谷吟は、目尻に浮かんだ涙を指先で拭いながら、口を開く。

「いや、ごめんごめん。君たちのやり取りがあまりにも楽しそうだからさ。あー、おかしい」

 ひとしきり笑うと満足したのか、白谷吟は、笑顔のまま私を見た。私は首を傾げる。私たちはそんなにおかしな話をしていただろうか。