推しが隣に引っ越してきまして



「佑月くんはアイドルを辞めたいって思ったことある?」


「……あるよ。」
佑月くんが静かな瞳で頷く。
「なかなか芽が出なかったとき、辞めたいと思った。研修生だったとき、昨日隣にいた同期が突然今日来なくなる、そんな世界だった。特殊だよね。明日は俺かも、って毎日思ってた。プレッシャーに押しつぶされそうになって、辞めたいって思ったこと何回もある。


でもね、『怖いから辞めます』で辞めたくなかったんだよね。辞める理由ってなんでもいいの。逃げたっていい。振り返ったときに、しょうがなかったよね、ってきっとなるから。
でも、それが理由で辞めるってなんとなく納得がいかなくて。納得できないってことは、辞めるべきじゃないんだろうなって思ったの。
ま、諦めが悪いということなんでしょうなあ。
そうしてずるずる続けてきたら、ここに辿り着きました。」
佑月くんが私に向き直る。