「俺が怪我したとき、佑月さんが事務所に掛け合ってくれたんです。俺をどうにかここに残す方法はないのかって。眞鍋は、うちにどうしても必要な存在だからって。」
眞鍋さんが、ず…、って鼻水をすする。眼鏡が曇ってて、目は見えない。
「それで僕、マネージャーをすることになったんです。」
佑月くんが、白菜をフーフーってして一口でぱくって食べる。「泣くなよ。」
「もう俺この話すると泣いちゃうんすよ〜。」
「勝手に自分で始めたんだろ」佑月くんが笑う。
真鍋さんが口を尖らせて、鼻水かんで丸めたティッシュをポンって佑月くんに投げる。
「宮部さんは、何で今の仕事をしてるんですか?」
「私は、」
特にこれと言って理由はない。就活をしていてたまたま受かったのがここだけだった。それだけだ。
「特にこれといってやりたいことがあったわけでもなく、ただなんとなく今の仕事に就きました。」
だから、少し眞鍋さんが羨ましい。明確にやりたいことがあって、たとえそれが叶わなくても、結果としてそれに携わって、自分の仕事に誇りを持っている、そんな人を見ると、自分はなんて中身がない人間なんだろうと思わされる。
「全部そうなんですよね、私。特に物事にこだわりがなくって。だから、自分で好きなものや夢を見つけた人とか、それに向かって努力したことがある人を私はすごく尊敬してます。」
「じゃあ俺は?」佑月くんが自分を指さす。
「?」
「たくさんいるアイドルの中から、俺を見つけてくれて、好きになってくれたでしょ。それは、凛ちゃんの、こだわりなんじゃないの?」
うむ、それはそうだけど。
