「えぇ……っ?」
亮ちゃんが、むかい側の椅子にストンと腰掛ける。
「落ち着け。」佑月くんが亮ちゃんに言う。
「落ち着けるかぁ!」
「ちょっと亮声でかいって、可哀想じゃん、熱あるのに。」
亮ちゃんが前髪を手櫛で整えてから帽子を被り直す。「ちょ、あの、イチから説明してくれ。」
「えっと…。」佑月くんが、私を指さす。「お隣さん。」
「お隣さん!?」
亮ちゃんが食い気味で、繰り返す。
佑月くんがシー!って口に手を当てる。
「あ、ごめん。」って亮ちゃんが口を手で押さえる。
「今日俺が帰って来たら、ここで、ソファーに倒れてて、心配だったから、声かけて…。」
「なにそれ。え、え…顔見知りやったん?」
「まぁ。」
「まぁ。って何やねん。お名前は?」
「凛ちゃん。」
「…知ってんねや…。」
亮ちゃんが頭をぽりぽり掻く。「ほんで?」
「ほんで……?」
「何キョトンとしてんねん。」
かみちゃんが眉間に皺を寄せる。
「ただの隣人さんにここまでする?って聞いてんねん。もたれかからせちゃって。たまたま通りかかった人とかに誤解されても知らんで。」
ごもっとも……。
私の声が佑月くんに届いたのか届いてないのかはわからないが、佑月くんが「でも、ほっとけないでしょ?」って言う。
すぅ……、とかみちゃんが息を吸って、やれやれ、って小さくため息をついた。
