推しが隣に引っ越してきまして

 あっという間に、俺の周りから人がいなくなり、気づいたらひとりになっていた。どうやら俺は、最も嫌われてはいけない人たちに嫌われたらしかった。
 あの日、姉と見に行ったステージで輝いていた人たち、当時研修生の中で唯一最もデビューに近いと言われた「選抜組」。俺よりも10歳近く年上のその人たちは、他の研修生とは違う雰囲気をまとい、敬われていた。その人たちに、俺は、嫌われた。無理もない。その人たちが何年もかけてたどりついたその場所に、入って間もない俺が追い付こうとしていた。そして選抜組に嫌われた俺は、周りの研修生からも距離を置かれるようになった。一ノ瀬に近づいたら、俺まで選抜組に嫌われる。そんな雰囲気があの頃研修生の間には漂っていた。
 輝かしい世界の裏側はこんなもんか。俺は、失望した。

 今度控えたライブの事前の打ち合わせ。立ち位置が配られる。俺の立ち位置は、センターだった。とうとう選抜組を追い抜いてしまった。吐き気がした。手に汗がにじむ。握った紙が、よれた。
 もう、嫌だ。俺は、もう、ここにはいたくない。