おかしい。こんなの……。映画が決まった時の、佑月さんの嬉しそうな顔を思い出す。
こんなんで、それがなかったことにされてしまうなんて……。
記事を丸めて、ゴミ箱に捨てた。
部屋を飛び出して、上の階に向かう。
廊下で、佑月さんとすれ違った。
「眞鍋、どこ行くの?」
一度すれ違った佑月さんに、後ろから声を掛けられる。
「ちょっと……用事が……。」
眞鍋さんが俺の肩を掴んで、俺を振り向かせる。
言えないよ。
「俺のことなんだろ。」
その顔は、優しくて、切ない。
言えないよ、映画の主役が後輩に取られたなんて。
