窓から舞い込んでくる春の風。


「いい風だね〜」
凛が目をとじる。
「うん」
凛を抱きしめて、首元に顔を埋める。
「春のにおい大好き」
「春ににおいがあるの?」
「あるよ〜」
「どんなにおい?」
「え〜、においを言葉で表すのは難しいんだぁ」


「なんか、心がワクワクするにおい」
「ん〜?」
「お日さまのにおい!」
「う〜ん」


凛が俺の顔を見て、口をムッてつぐむ。次の表現を探してるみたい。


そのほっぺにチュ、ってキスをする。


机の上に置かれた桜が、春風に揺れた。