「凛がね、幸せ〜って笑った後に、大体、寂しそうな顔すんの」
「あら、可哀想」
「多分さ、俺といると、未来を想像できないからだと思う」
大樹が、何言ってんだこいつは、というしらけた顔で俺を見る。「未来が想像できない?」
「うん、普通だったら、付き合ってれば来年の話とかもっと先の話をしてもおかしくないでしょ?でも、俺らは、来年も一緒にいるかわからない。ましてや数年先なんて……」
大樹がその辺にあった手鏡を見ながら、爪楊枝で歯に詰まったカスを取っている。
「凛は俺とずっと一緒にいる未来が見えないんだと思う。やっぱ俺じゃない方がいいのかも」
大樹が手鏡から顔を上げて笑う。「めんどくさっ」
「そんなの凛ちゃんに聞いてみないとわかんないじゃん。佑月じゃない方がいいかどうかは、凛ちゃんが決めること」
大樹がずっとにやにやしている。
「なんかこんな風に悩んでる佑月見んの新鮮〜!」
「へぇ〜、佑月って好きな子できるとこんな風になるんだ〜へぇ〜、えへへ」
俺はニコニコしてる大樹のほっぺをつねる。「いひゃい」
「凛ちゃんは佑月といて幸せだと思うよ。もしかしたら幸せすぎてひとりで泣いてるかもよ?」
