夕方。
露天風呂に浸かる。
お湯から出た肩から上の部分にだけ11月の冷たい風が触れて、心地よい。
目の前に広がるのは、丁寧に手入れされたお庭。ライトアップされている。
ほぉ。心の奥からほぐれていくような感覚。心地よくて、このまま寝てしまいそうだ。
ガラガラ、と後ろの木の引き戸が音を立てて、閉じていた目を開ける。
「うわぁさっぶ〜」
佑月くんが早足で湯船に向かってきて、お湯に浸かる。
手で湯をすくい、ザバァって顔にかける佑月くん。
「うわぁ、広いお風呂気持ちいい〜」
佑月くんが目を閉じる。
2人じゃ勿体ないくらいの本当に広くて素敵なお風呂。贅沢だなぁ。
冷たい空気を思いきり吸い込む。温まった体に心地良い。
こんないい宿、私泊まったことないよ。
毎日頑張っててよかった。それにしても、日頃のご褒美にしてはお釣りが来るくらい、私には持て余すくらい立派な空間だ。こんな幸せでいいんだろうか。
「ありがとう」
佑月くんに言うと、佑月くんがゆっくり目を開ける。
「こんな立派なお宿、見つけて、泊まらせてくれて」
佑月くんが私の顔をぼーっと眺める。その目があまりにも優しくて、目が離せなくなった。胸の奥がキュンと音を立てる。
佑月くんが私に体を近づける。ぽちゃん、ってお湯が音を立てる。佑月くんの顔が近づいてきて、唇がそっと、触れた。
