推しが隣に引っ越してきまして



「今日、可燃ゴミの日ですよ。」
後ろから声をかけられて、飛び跳ねる。あ、そうだった。今日は火曜日、可燃ゴミの日だ忘れてた。もうでも今日はいいや。とりあえず、ありがとうございます、そう言おうとして顔をあげて、ハッとした。


「お久しぶりですね、宮部。」
ちぐはぐな言葉づかい。エントランスの脇の生垣に腰を下ろした眞鍋がいた。


ゲ。
私が露骨に表情に出しても、眞鍋は表情をちっとも変えない。
「その感じだと、やっぱり、佑月さんはここに来てるんですね。」立ち上がってお尻の辺りを払う。
はぁ、と眞鍋がため息を吐く。


眞鍋に、部屋の鍵を渡す。
「え。」
眞鍋が握らされた鍵を見つめる。
「えっと……、鍵、閉めてきちゃったので。」私が言うと、眞鍋が、はぁ、と相槌を打つ。
佑月くんがあの家のドアを開けるまで家の前で待ちぼうけをする眞鍋を想像したら可哀想になった。なんて、私が同情するのもおかしな話だけど。
「鍵はポストに入れておいてください。では行ってきます。」
「……行ってらっしゃい……」