会場が暗くなる。
ステージだけが明るく照らされ、眩い照明の中から5人が登場した。


「みんな〜会いたかったよ〜!!」
佑月くんが、大きな会場に向かって叫ぶ。会場が、わぁって声を上げる。


観客のペンライト。
5人を照らすスポットライト。
ステージの照明。


無数の光が、佑月くんを照らす。光の中心にいる佑月くんはとても眩しくて、キラキラしていて、まるで、無数に煌めく星のなかで白く美しく輝く月のようだった。


佑月くんが、遠い。本当に、もう、届かないところに行ってしまったんだ。


佑月くんは、元いたところに戻っただけ。そして、私も、元の日常に戻っただけ。それなのに、胸が苦しい。
キラキラした世界の中で、私だけが、黒くて、汚い。
佑月くんが、遠い。この前まであんなに近くにいたのに。あれを知ってしまったから私は、もうこの距離には戻れない。ここから見ていても、苦しくなるだけだ。


いつか、雑誌で佑月くんの名前の由来について目にしたことがある。
佑月という名前には、ひとつには、月のように美しい男の子になってほしいという願い。


そして、天や神が人を助けるという意味がある「佑」には、誰かのために頑張れる人になって欲しいという願いが込められているという。


その名前にふさわしく、美しく優しい人になった佑月くん。




たとえ叶わなくても、あなたを好きになれてよかった、なんて、今は思えない。