凛side


ベランダに出る。


空を見上げる。
天高く登った月。満月のせいか、星の数がいつもよりもなんだか少ない気がした。


言えなかったな。あなたが好きです、って言えなかった。
あんなに手紙書いたけど、結局本当に伝えたかったことは最後まで言えずじまいだった。


佑月くんにキスされた。


言えなかった?言わせてもらえなかった?


「どっちだろ。」


柵に寄りかかって顎を乗せる。






タバコの香りがしてこない。隣のベランダに、佑月くんはもういない。


蝉の鳴き声だけが、聞こえてくる。