推しが隣に引っ越してきまして



「今はとて 天の羽衣着るをりぞ 君をあはれと思出でける」
かぐや姫が月に帰る場面で謳ったこの歌を呟く。
——今まさに、月に帰るための羽衣をまとうこの時に、あなたのことを愛しく思い出しています。


天の羽衣を着てしまえば、感情をなくしてしまうことがわかっていたかぐや姫。それでもそれを着なければならない。感情がなくなるその最後の瞬間までかぐや姫が抱いていたのは、帝への恋心だった。


大好きな一節。


本を閉じて、胸に抱えて天井を仰ぐ。


キラキラ輝く世界からやってきて、やがて帰らなきゃいけないなんて、なんだか、佑月くんの状況そのまんまみたい。
美しい世界からやってきた佑月くんは、かぐや姫。月の世界は、佑月くんが今いる世界。
佑月くんは、ここを離れたら、この日々も忘れてしまうだろうか。なかったことになってしまうんだろうか。まるで、天の羽衣をまとったかぐや姫のように——。


ツー……、と頬に涙が伝う。


「忘れてほしくない……。」
佑月くん、元の世界に戻っても、忘れないで。