ドアを閉める。シン…と静まり返った部屋。自分の鼓動だけが耳に響く。玄関のドアにもたれかかり、ずるずると膝から崩れ落ちる。
『もしもし何ぃ?今飲み会中なんだけど』
 奈緒ちゃんに電話をかける。
「奈緒ちゃんも飲んでんの?」
『えっ?も、って何?』
「佑月くんだった…。」
『え?何?聞こえない!』
「だからこの前の金髪の人、佑月くんだったの!!」
『なんだっけそれ。あ〜マンションの廊下ですれ違った人!』
「佑月くんだったの……。」
『な訳ないでしょ……。』
「ねぇ、本当なの。」
『あのマンションに住むわけないじゃん、佑月くんが。』
「ドラマ撮ってて、その撮影期間だけここ住むんだって…」
奈緒ちゃんが、始まった…って溜息をつく。
『あぁ、うん。そっか。ごめんちょっと戻るから、切るね。』
 一方的に切れる電話。
 電話が切れてから気がつく。あ、やべ早速言ってしまった。まあ、奈緒ちゃんだからいっか。絶対に誰かに言ったりしないだろう。