☆君の悩みを聞いて、夜を越えた

 一粒の涙が君の頬で伝って輝いている。
 つらいなら一緒に逃げ出そう。
 夜明けの冷たい街へ。

 手を繋いで、駆ける世界はまだ静かだけど、
 胸はチューニングのようにざわめいている。
 君が臆病なのは知っているよ。
 そして、傷つきやすいことも。

 二度とは戻らない時間は平等で尊いね。
 絶望は湯せんのチョコレートのように
 簡単に溶けたらいいのに。

 「二人のままがいい」とポツリと言ったから、
 君を見ると、君は穏やかに微笑んでいた。

 夜明けの街で熱いコーヒーを飲もう。
 二人きりで。







《目次》


序章
・君の悩みを聞いて、夜を越えた


1章 強がらなくていいよ

・強がらないでいいよ・センチメンタルを壊さないで・いくつもの秋を通り過ぎて、君は愛おしい人になった・もっと、知りたいけど・素直さで癒やしたい・藍色には、もう染まらないよ・夏が終わっても、君は最高すぎるよ・無許可、海岸ロマンス・今日の憂鬱をかき消すよ・今も、ただ、走り抜けたい・世界中から集まった願いよりも・優しさのバグは嫌いと不調和を生まない・無意味に意味を生み出したい・秋が深まっても、君と進みたい・今日も夜のなかでも、嫌な気持ちは消えない・1ミリだとしても、君を癒やしたい・あと何回、自分を偽ればいいんだろう・クジラの客船に乗って、遠くへ行こう・季節は、巡りどんどん冷たくなるけど・画素数が小さい世界に君を閉じ込める・こういうとき、たまに寂しくなるんだ・一つを二つにした日のことを、たまに思い出してしまうよ・君は1年前より


2章 朝、君のことを思い出す

・君は不思議ちゃん・絶望を希望に変えよう・早朝の海、君の後ろを歩く・当たり前だから、君とずっと居たい・君は雨で冷たい・来月には甘い魔法が叶えばいいのに・君は遅刻魔・朝、君のことを思い出す・雨上がりの冷たい街を君と楽しむのは、ファンタジック・すれ違いの日々なんて、早く過ぎ去ればいいのに・チョコレートみたいに甘い決意が、冷えて固まった・雨粒を窓越しになぞっても何も変わらない・もう、秋が終わるね・センチメンタル袋詰め・ゆっくりと時間は流れる・すべて過去になった泣き笑いした日々は懐かしくて、胸が痛い・あなたとずっと居たい・うまく寝れなかったから、海を目指すことにした・カプチーノの泡がゆっくり馴染んでいく・いつもの海岸線を歩くと君を思い出す






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1章 強がらなくていいよ


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☆ 強がらないでいいよ

 「もう、大丈夫」って強がらないでいいよ。
 君は今のままでもう十分だから。
 海で拾った瓶に星の砂を集めいれる
 そんな君で十分なんだ。




☆ センチメンタルを壊さないで

 センチメンタルを壊さないで。
 君の世界はそのままていいんだよ。
 だから、思うままに、君をもっと突き詰めて。




☆ いくつもの秋を通り過ぎて、君は愛おしい人になった

 昼下がりのイチョウ並木の下で、
 君が振り向いた瞬間、
 胸がぎゅっと締め付けられる感覚がしたのは、
 君と出会ったあのドラマティックな日を、
 ふと思い出したからだよ。



☆ もっと、知りたいけど

 もっと、君のことが知りたいよ。
 そんなありきたりなことを言っても、
 君には、きっと響かないと思うから、
 自販機で2つのカフェオレを買ってきたよ。
 君にそれを渡すと、
 「ありがとう」って言ってくれたから、
 今はそれだけで、すごく嬉しいよ。




☆ 素直さで癒やしたい

 最近、頑張りすぎて疲れている君を、
 少しでも癒やしたいから、
 君と初雪みたいな素直さを共有したい。




☆ 藍色には、もう染まらないよ

 夏の思い出を瓶に詰めて、
 秋なんて、まだ始まりそうにないくらい、
 キラキラしている海に放り投げて、
 すべてを忘れようとしたけど、忘れられないよ。
 いなくなった君はもう、戻らないけど、
 深海の藍色に染まらずに、また前を向くよ。



☆ 夏が終わっても、君は最高すぎるよ

 夏が終わり、ひまわりが枯れて、
 私の孤独はきれいに消えていったよ。
 君は私の気持ちをしっかりと見ようとしているのは、
 ものすごく感じるから、もう最高すぎるよ。
 そんな君に、今日も、
 ありがとうって強く伝えたい。




☆ 無許可、海岸ロマンス

 また頑張りたくない症候群を発症した、
 私と君は学校をさぼって、ぼんやりと海を眺めている。
 「生きてるだけで肯定してくれたら最高なのに」
 ぼそっと君がそう言ったから、
 「生まれた瞬間から、歯車に過ぎないんだよ。私たち」
 そう返して、ため息をひとつ吐くと、
 「そんな悲しいこと言うなよ」と言って、
 なぜかわからないけど、君はiPhoneのカメラで、
 私に無許可で、私と海を保存した。



☆今日の憂鬱をかき消すよ


 大好きな曲をSpotifyで聴きながら、
 白色LEDに照らされたデスクで、
 今日の憂鬱をかき消していくよ。

 ペンで書く、気が付かなかった思いは、
 大嫌いな世界と自分が融合するために
 身につけた外面の自分だよね。

 自分に対して、
 大嫌い、大好きを
 あと何度繰り返せば、
 本当の自分に戻れるかな。



☆ 今も、ただ、走り抜けたい

 急ぐ人の流れのなかで、
 立ち尽くしているみたいに、
 最近は、なにもかも上手くいかないんだ。
 よく見るSNSみたいに、
 何気ない日常をキラキラさせられないよ。
 毎年、この時期になると、
 秋色の夕暮れを見るたびに、
 いつも感傷になるから、
 なんとか、今を切り抜けるエネルギーがほしい。



☆ 世界中から集まった願いよりも

 あなたの夢を邪魔する人を排除してもらって、
 強く思えるくらい、私はあなたのことを見続けるよ。
 夜空に願った世界中の無数の夢が叶うよう、
 静かに祈るより、
 私はあなたの世界が広がることを願いたい。



☆ 優しさのバグは嫌いと不調和を生まない

 好きじゃないと好きを繰り返しても、
 きっと、君は振り向いてくれないのは、
 私だって、わかりきっているんだよ。
 私の細胞をバグらせるほど、君は優しすぎるんだよ。
 君と話しているだけで、
 どうしようもなく、心を開きすぎるのをやめたいよ。
 君がこの状況を打開する方法は、ただ、ひとつだけだよ。
 ねぇ、早く油断する私に気がついてよ。



☆ 無意味に意味を生み出したい

 無意味のなかに意味を探すような、
 矛盾だらけでボロボロの毎日だ。
 それでもこの街をオレンジにする、
 冬の短い夕日は優しいね。
 大好きを大嫌いへ逆さまにして、
 ありったけの愛情を一方的に伝えまくりたい。
 こんな極化して、デタラメな、
 イライラで自分自身が無意味に壊れそうだよ。




☆ 秋が深まっても、君と進みたい

 「10℃の寒暖差で追いつかないね」
 笑いながらそう言った君のことが印象的だった。
 君の笑顔は秋が深まっても、冬が近づいても、
 変わらずキラキラしていて、風で揺れるショートボブと
 カーキのアウターが最高に似合うよ。
 君と僕は、世界に置いていかれている感覚を、
 お互いに確認しあい、仲が深まった。
 君となら季節に置いていかれてもいいと思うけど、
 君と一緒に新しい季節も楽しみたい。



☆ 今日も夜のなかでも、嫌な気持ちは消えない

 すべてが嫌になって、
 夜の淵をひとりで歩いているけど、
 過去に言われた言葉が頭のなかで、
 グルグル回り続けている。
 今の悩みなんて、星に願いを込めても、
 消えるわけないのは自分が一番わかっている。
 今日も、夜を歩いても、
 嫌な気持ちは柔らかくならないから、
 諦めて、ローソンに寄って、コーラを買って帰ろう。



☆ 1ミリだとしても、君を癒やしたい

 わかってるよ。
 どれだけ君が我慢し続けているかを。
 君が涙を流すたびに、君の気持ちが1ミリずつでも
 癒やされたらいいのに。
 ただ、その間も世界は無情に、
 新月と満月を繰り返し、季節は巡り続ける。
 わかってるつもりなんだ、君の心の傷を。
 君の心を癒やすには、まだ時間がかかることも。



☆ あと何回、自分を偽ればいいんだろう

 あと何回、自分を偽って頑張れば、
 今のつらさを出すことができるのかな。
 そんな答えが出ないことを、
 月曜日の夜のスタバで考えても、
 なにも思いつかないことも、
 もうわかりきっているんだよ。
 だからね。
 誰かに言ってもらいたい。
 「もう、無理する必要なんてないよ」って。



☆ クジラの客船に乗って、遠くへ行こう

 無理する君は、本当に限界まで頑張れるよね。
 その上限に気づいているのは、
 きっと、僕だけだと思う。
 だからさ、本当の限界が来る前に、
 君の手を引いて、日常から連れ出して、
 冥王星行きのクジラが引く客船に乗って、
 君が自分を取り戻せるようにしたい。



☆ 季節は、巡りどんどん冷たくなるけど

 季節が巡って、涼しくなっていくのに、
 海流に逆らうみたいに、急ぐ毎日の所為で、
 自分が取り残されている気がするよ。
 やるべきことばかり、課したのは自分で、
 それは自分のためだって、ずっと言い聞かせているけど、
 どうして、もう、我慢することができないんだろう。
 そんなことを考えているうちに、
 あっという間に、胸の奥で重い感覚がしたから、
 嫌だけど、今夜だけは、
 ネトフリ観て休むことにしよう。



☆ 画素数が小さい世界に君を閉じ込める

 20年前くらいの古いデジカメを手にしながら、
 夜の公園の青さと君を荒い画面越しに見る。
 両手を広げ回るウールコート姿の君を
 画素数が低い世界に君と夜を収めると、
 君は微笑んで駆け寄ってきた。
 きっと、この瞬間の君を
 20年後に思い出しそうな気がするよ。



☆ こういうとき、たまに寂しくなるんだ

 靴ひもを結び直し、再び立ち上がり、
 息をすっと吐くと白かった。
 冬が始まった夜の誰もいないホームは冷たくて、
 数分遅延している電車をひとりぼっちで、
 待ち続けるのは寂しいよ。
 だけど、今は寂しくてもいいよ。
 あと少ししたら、
 君が遠くの街から帰ってきてくれるから。





☆ 一つを二つにした日のことを、たまに思い出してしまうよ

 どうして、生きるのが不器用なんだろうって、
 君が泣いた夜の夏の公園は、少しだけ涼しかった。
 パピコを一つを二つにして、乾杯して、
 君は泣きながら、ありがとうって笑っていた。
 そんな君とはもう、接点なんてなくなって、
 ずいぶん経ってしまうけど、
 大人になった今でも、
 たまにあの日の君のことを思い出してしまうよ。





☆ 君は1年前より

 底に積もった雪が
 イルミネーションで赤と緑に輝いている。
 凍りついた世界を君とただ眺めている。
 君は1年前より、大人っぽくなったね。
 そんなことを今日のどこかで言おうと思っていたのに、
 楽しさと輝きで忘れてしまっていたよ。




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2章 朝、君のことを思い出す



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☆ 君は不思議ちゃん


 雨上がりの街は少しだけ冷やされていて、
 繋いでいる君の手も冷たかった。
 さっきカフェで雨宿りしたとき、
 君は憂鬱そうに頬杖ついて
 窓越しに灰色の街を眺めていた。
 君の尖らせた唇を微笑みに変えたくて、
 曇った窓に指先でハートを描いたら、
 穏やかに笑ってくれたね。
 君との思い出はまだまだ足りないから、
 ささやかなことで笑い合いたい。
 「変ってるね」と澄んだ声で
 すっと言われても何故か嫌じゃなかった。
 君が急に立ち止まり、空に指を指した。
 ビルとビルの間に虹が見えた。
 君も十分、変わっているよ。



☆ 絶望を希望に変えよう


 流れの中で孤立しているように
 冷めている君は美しい。
 そんな君が夜の街の中で
 ゆっくり微笑んだのが可愛くて、
 思わずドキッとした。
 マフラーに包まれた君に
 そっと声をかけると君はまだ表情を変えずに
 「生きるって悪くないね」と言った。
 絶望に慣れたはずの君と僕の仲なのに
 希望でキラキラした世界の話ができて、嬉しいよ。
 だから、お祝いに自販機で
 ココアを買って、
 公園の隅でゆっくり飲もう。
 悲しみが来ないうちに。



☆ 早朝の海、君の後ろを歩く



 好きという事実は変わらないよ。
 そう言ったあと君は振り向き、
 早朝の海岸線を走り始めた。
 ウェーブのかかった君の茶色の髪が揺れている。
 その君の後ろをゆっくり歩きついて行く。
 冷たい風、青とオレンジの境界線、
 穏やかな波の音、赤いロングスカートの裾。
 すべてが美しくて切ないのは君の所為だよ。
 モンブランのようにつまった
 つまらない日常をほぐれる気がするよ。
 走るのを止めた君は振り向き、
 不貞腐れたように手招きをする。
 微笑み返す君は首を振った。
 後ろから見ている君に見惚れただけだよ。
 ゆっくり後ろを歩かせてよ。



☆ 当たり前だから、君とずっと居たい



 昨日の続きみたいに今日も
 イチョウ並木の下で君と手を繋ぎ歩いている。
 君との言葉は今日も少ないけど、
 カラフルなグミを真空パックしたように
 君とは気まずくない。
 それだけ君のことを信頼しているよ。
 とても大好きだから。
 君は秋がとても似合うね。
 カーキのアウターと、栗色の柔らかいボブが
 なぜか切なさで光っているみたいだよ。
 幼さがまだ残っているうちに、
 君との思い出をたくさん作りたい。
 こうやって無限に平和は通り過ぎればいい。
 君を見ると君はそっと微笑んだ。




☆ 君は雨で冷たい



 君との言葉が溢れんないまま、
 冷たい雨の中でゆっくり歩いている。
 君は落ち込むのが上手い子だから、
 僕はそっとしたくなる。
 君にくだらないことは通用しないから。
 濡れて沈んでいる落ち葉を踏みつけると、
 なぜか虚しくなるのは仕方ないね。
 君は唇を尖らせたまま、
 繋いでいる手の体温は変わらず冷たい。
 雨は止む心配もないけど、
 時間は無限にあるよ。
 「ごめん、私が悪いの」
 不意にそう君は言って、髪をかき分けた。
 そんなのいいよ。
 気晴らしに近くのカフェで
 クリームブリュレ食べよう。




☆ 今更、君の夢を見ても仕方ない



 冬の始まりはいつも灰色で軽くて、
 街が丸くなる感じがする。
 枯れたコスモスを横目に日常へ急ぎ足で進む。
 目の前の駅はすでに忙しそうで、
 その中に入る前に息をそっと吸った。
 さっき見た夢の中では二入とも高校生で
 夏の海を歩いていた。
 君の表情はぼやけ、
 髪が風で流れていく。
 あのときの切なさが胸を締め付けられる。
 大好きなあの瞬間が、
 今の生活と剥離させる。
 気持ちが追いつかないまま、
 青さを胸にしまって、
 iPhoneを改札にタッチする。




☆ 来月には甘い魔法が叶えばいいのに



 突き抜けた君の優しさに
 傷つきそうになるよ。
 君の笑みに苛つきながら、
 今日も君の隣を歩いている。
 センチメンタルを炭酸に混ぜたように
 君が遠く感じるのはなぜなの?
 不甲斐ない恋はいつ虹色になるのかな。
 黄色い11月の中でそっと手を繋がれたい。
 来月も青いままは胸が弾まないね。
 ワンピースの色を変えても、
 変わるものじゃないし、
 結局、眼中にはわかりきっている。
 内に秘めたことを言ったら、
 クレープのように簡単に心変わりして
 深く慣れたらいいのに。




☆ 君は遅刻魔



 待たされるのには慣れているから、
 スタバで先にゆっくりしているよ。
 季節限定のラテを口に含むと、
 中途半端な気持ちは消えていくね。
 カップについたピンクルージュは気合の証。
 iPhoneに映されたタイムラインを
 親指で辿っていく。
 少しだけ、飽きたこの現実は凍りつかないから、
 ため息をついてもハードルは下がらない。
 キャンディボックスを逆さまにするように
 ぶちまけたい気持ちを君に聞いて貰って、
 この気持ちを早く癒やしてほしい。
 私を待たせてるわがままな君に
 たまに注文つけても
 バチはあたらないよね?




☆ 朝、君のことを思い出す



 悲しいことすべて吹き飛ばす
 魔法をぼそぼそ唱えてみたい。
 朝日が射さない地下街は今日も人混みで
 その様子をカフェのカウンターから眺める。
 iPhoneで過去をさかのぼる。
 君のいない日々には慣れたよ。
 忙しい日々がそのうち柔らかくしてくれるはず。
 足元を抜ける冷気、コーヒーの湯気、
 クロワッサンの上で溶けるバター。
 すべてがゆっくり見えるのはなぜだろう。
 憂鬱な毎日はクレープと一緒に溶かして、
 誰かと踊りたい。
 硬い心を溶かすために。
 繰り返しとループの違いもわからないほどに
 君との思い出を再生する。






☆雨上がりの冷たい街を君と楽しむのは、ファンタジック

 君と夜の街を一緒に歩いていると
 なぜ、こんなにも街が美しく見えるんだろう。

 雨上がりのアスファルトは黒く濡れていて
 街の虹色を弱く反射している。
 冷気に包まれて冬が近づいているけど、
 君の手は温かくて、優しく感じる。

 「もう二度と離さないで」

 悪戯にそんなこと言われると、
 分離したレモネードを混ぜるように
 少しだけ切なくなるから、
 今を楽しもう。

 行きたいお店まであと少し。
 街に溶けないように君を離さないよ。
 夜はまだ始まったばかりだから。



☆すれ違いの日々なんて、早く過ぎ去ればいいのに

 脳が溶けるほど恋い焦がれたあのときは
 君のことをずっと考えて、
 二人きりの時間を作ることを努力した。
 君と夜のスタバで尽きない話をして、
 ピアノを調律するように
 価値観をゆっくり馴染ませたね。

 あれから月日が経った今、
 君とはすれ違う日々が続いている。
 お互いに日常に追われて、
 今日もビルに閉じ込められたまま、
 窓越しに青く濡れた雨の街を眺めるよ。

 この忙しさを超えられるように
 時空を歪めて今を超えていって、
 雪が降る前にもう一度、
 君に好きだって伝えたい。



☆チョコレートみたいに甘い決意が、冷えて固まった

 君と二人で立ちすくむ。
 イチョウの吹雪の黄色い渦の中で
 冷たい中で左手で君を感じ、
 少しだけ涙ぐんだ。

 君という事実を噛みしめていると不意に、
 「いなくならないで」と君はポツリとそう言った。
 夏の決意が近づくにつれて、
 そっと薄くなっていったけど、
 それでも君は最高だから、
 きっとそんなことなんて起きないよ。

 ソーダ水の中に落としたシルバーリングのように
 泡の中でそっと佇んで、
 君と今を紡ぎたいと強くそう決意した。



☆雨粒を窓越しになぞっても何も変わらない

 濡れたネオン色の街を
 カフェから見下ろしている。
 憂鬱な毎日は大嫌いだけど、
 今だけはiPhoneをなぞって忘れよう。

 君との出会いは雪が降りそうな雨の中だった。
 人混みの街は今日も楽しそうに見える。
 一人街の中で孤立している気分は最高だよ。

 自分の色が合わない世界は
 自分で変えていくしかないってわかっている。
 マシンガンでオレンジを打ち込んでも
 きっと何も変わらないんだろうね。

 もし、今も君が横に居てくれたら
 なんて言うのかな。
 時間が経ち、馴染んだカフェオレを一口含むと
 なぜか、涙が溢れた。



☆もう、秋が終わるね

 ピンキーリングがイエローゴールドに反射し、
 まだ秋が続くな気がした。
 自転車で冷たい空気を切り裂いて、
 南極までこのまま行く気分のまま、
 駅まで続く商店街に入った。

 もうすぐ大好きなカラフルな季節に入るから、
 商店街の夜はファンタジックになるけど、
 日差しの中じゃそれは無効で、
 だから、今日、気持ちを明るくするために
 これから電車に乗って大きなツリーや
 イルミネーションを見に行くんだよ。

 今まで誤魔化してきたつらい気持ちは
 全部、忘れて都市の中で孤独を作り直すんだ。
 そしたら、きっと、
 また明日から何もかも上手くいくようになるよ。




☆センチメンタル袋詰め

 懐かしい切なさを思い出したのは
 黄色に染まった公園のベンチで
 白いため息をついたからだ。

 君との連絡は時間が流れて、
 簡単に消滅した。
 今も元気でいてくれたら、
 それで十分なんて言えるのは人格者だけだね。

 数週間前に食べたパフェみたいに
 君との思い出の大半はすでに喪失している。
 塗り替える新しい人は君にもいるはずだよね。
 君が青い気持ちで泣いたあの時から、
 すでにそれだけ時間が経った。

 そんな思いを胸に残して、
 ベンチから立ち上がったら、
 ちょうどLINEの通知がポケットで鳴った。



☆ゆっくりと時間は流れる

 どこにも行く気力も湧かなくて、
 悲しみがそっと、耳元で囁く。
 塞ぎ込んだって前が見えないだけじゃないか。
 だけど、今は枯れるまで気が済むようにいよう。

 窓越しで弱く風に揺れる
 黄色いイチョウを見ながら。
 別に秋が憎い訳じゃないけど、
 日々、冬に近づく冷たさが、
 さよならに似ている気がするだけだ。

 君との憂鬱な毎日は当たり前すぎて、
 今は現実が霞むよ。
 冷たい光が君をノックして、
 新しい世界を歩みだした。

 残された日常は
 青い夜の光にそっと包まれている。
 君はすべての重さを捨てて、
 立ち上がり、
 そして、そっと優しさを胸に残した。



☆外は雨だけど、待ち合わせの前は楽しみでそわそわする

 カフェの電球色の中で眠気を飛ばすように
 惰性でiPhoneを指先でなぞり、
 くだらない情報ばかりをぼんやり眺めている。

 ほとんど手を付けていない
 カプチーノの泡はゆっくり溶けていく。
 無限の楽しみをあなたと過ごせたら
 毎日、輝くだろうから、
 飛行船で世界一周ツアーを画策するように
 今じゃできないことをあなたとやってみたい。

 あなたにそんな話をしたら、
 空飛ぶジュゴンの群れを見たいって、
 きっとクールに返してくれるそうだな。

 そんな、少しだけ変わったあなたと、
 これから2時間後に
 秋雨の冷たい街で待ち合わせだよ。



☆もうすぐ君が帰ってくる

 電車は大きな橋を渡っている。
 ドアにもたれて、流れる景色を眺める。
 河川敷はすっかり冬の色になり始めていて、
 鳥の群れが電車を追うように
 素早く飛び立った。

 夏の青い切なさから、
 もう随分と経ったんだねって、
 ぼんやりと君の姿を思い出した。

 離れ離れはもう慣れたけど、
 やっぱり前を向くのだけでで精一杯だよ。
 大好きな曲が耳いっぱいに流れ始めた。

 iPhoneをバックから取り出し、
 冬に帰ってくる、
 また一緒にランチ食べようって
 指先でそっとなぞって送信した。





☆すべて過去になった泣き笑いした日々は懐かしくて、胸が痛い

 落ち葉が舞い上がり、少しだけ震える。
 魔法のように渦を巻く、赤茶や黄色が
 もう少しで楽しい季節が来ることを告げている。

 置き去りにした日々も、
 何度も巡った季節も、
 すべてが愛しく思えるね。

 自由な世界で君とダンスをするように
 透明な気持ちで楽しみましょう。
 離れ離れの君は難解さを優しくして、
 日々、溶けた時間の中で青さを残した。

 懐かしい気持ちで胸が痛いよ。
 カーキのアウターでそっと目を擦ると、
 なぜか輝いていた。



☆あなたとずっと居たい

 すっかり、季節は冬に進んだけれど、
 あなたと手を繋ぐことは変わらないね。
 昼下がりの公園の空気は凛と澄んでいて、
 無数の枯れ葉を踏むたび切ないね。

 知り合ったこの夏よりも
 あなたの印象に深みが増した気がするよ。

 幸せをジュエリーケースに飾るみたいに
 キラキラした日々がこのまま続けばいい。
 全ての懐かしさを捨てて、
 あなたのことを真っ直ぐ見たい。

 あなたの微笑みが冷めないように
 自然にいること意識して。
 来週も会えたらいいな。



☆うまく寝れなかったから、海を目指すことにした

 海まで続く踏切の前で
 ぼんやり待たされている。

 うまく眠れずに夜明け前になったから、
 冷たい風を受けることにした。
 鳴り響く警音や赤の点滅も
 別にモヤモヤを癒やしてはくれないね。

 秋の終わりの海まで行けば、
 きっと何かがあるはずだと、
 妙な直感が耳で囁いている。

 空飛ぶペンギンを追いかけるような
 心躍らせる出来事で憂鬱を打ち消したい。

 さっき買った温かいココアが入った袋を
 ブラブラさせて退屈しのいでいたら、
 貨物列車が轟音を立てて通過した。



☆カプチーノの泡がゆっくり馴染んでいく

 街は冷たい雨に包まれていて、
 カフェの窓から頬杖をつき眺めている。
 色とりどりの傘が重なる交差点は
 夢が詰まっているみたいに見える。

 カプチーノの泡はゆっくり溶けていく。
 憂鬱にさよならを告げるために
 朝からここに居るけれど、
 昔、別れた君のことを思い出して、
 切なさが胸を刺激してくる。

 センチメンタルの波を
 そっとスプーンですくいたい。
 お互いに青かった青春はもう二度と
 交わることもない関係をいたずらに作ったね。

 もし君と今一緒に居たとしたらと考えても
 何も変わらなかったと思うから、
 君が元気ならそれでいい。

 大人になってしまったからね。



☆いつもの海岸線を歩くと君を思い出す

 スニーカーの紐を締め直すと
 少しだけ心が軽くなった気がした。
 冷たい朝日は海に黄色を与えている。

 海岸線のこの道は今日も車で連なっていて、
 たまに吹く海風で髪が乱暴に乱れる。

 君を思い出すと、
 あのときの切なさが胸を青くする。

 一人の方が楽だけど、
 たまに寂しくなるよ。
 君が横にいてくれたら、
 こんな気持ちは抱かなかっただろうね。

 心を開けなくなったのは、
 あのときよりも臆病になったからなのは
 わかっているけど、
 上手いやり方もわからないから、
 今日も惰性で生きていくだけだよ。






【初出】

 序章
 蜃気羊 X(@shinkiyoh)
 https://x.com/shinkiyoh
 
 2022.11.18


 1章 
 蜃気羊 X(@shinkiyoh)
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 2024.9.1~12.24


 2章 
 蜃気羊 X(@shinkiyoh)
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 2022.11.1~11.30