3-2.幼馴染み研究会(四六時中幼馴染み)
「しつれいしまーす」
準備室の隣に同じ部屋、研究会と書かれた引き戸を恐る恐る開けた。
「緊張するよな!」
「……そうだな」
初めての所にお邪魔するの、僕は緊張しない。何故なら慣れてるからね!
予定だったら、一人でこの部屋に入るつもりだった。
だけど、後ろに一人居る。幼馴染みが、本当に付いてきた。
コンビニに行くかのような軽いノリで、「入ろっかなー」って言っちゃって、散々説得したけど……無駄だった。
何なら僕よりワクワクしてて、見学の日を先導して決められた。
ノート渡す儀式の時に、一緒に帰ろうと僕から声をかけはしたけど、その日から結局何も言わずとも毎日一緒に帰ってる。バス停までだけど。
クラスの中では二人だけじゃなくてグループでわいわいしてるから薄まってはいるけど、でも絶対に一緒の輪の中に居る。
凌が女子グループにたまに囲まれていても、誰にも気付かれてないけどうっすら視線は感じる。
部活は分かれるもんだと思い込んでた。だけど、素人目に見ても動画の運動神経は凄く良くて、体育の時間も何でもこなしている凌は、帰宅部希望で
僕の部活を聞いた時から、一緒に入る一択になった……
出会った初日、一体この先どうなるのか、って真剣に悩んだけど
一緒に過ごし始めて、そんな悩みは忘れてしまって、不思議と違和感もないし、楽しいし、なんだか色んな気持ちを味わっている気もする。
今まで感じたことがない感覚もある。
ただ、麻痺ってきて分からなくなってる。
実際幼馴染みがクラスにいたとしても、こんなに一緒にいるものなの? 誰かに教えて欲しい!
振り向くと今や家族より長い時間見てる顔が有って。綺麗だなって度々新鮮に感心して。
「早くはいろ」
「あ……うん」
相変わらず握力全開で肩を捕まれて、付き添いの冷やかしのくせに凌に促され、部室に足を踏み入れた。
部室には人数は少ないけど優しそうな先輩たちが居て
「ようこそ! 今年は1年は入部まだなんだ!」
と歓迎された。
部室を見て沸き立った。見たことのない蔵書の数々! 年表や資料書類など真面目な物から、武将グッズや、ご当地の地図など楽しげな物が所狭しと並べられていて
僕は嬉しくなってはしゃいでしまった
「今日は先生最後にしか来ないけど。顧問の先生が日本史の先生なんだよ。先生自体も歴史オタクみたいなところがあるから、知りたいことがあったら聞いてみたら良いよ」
「本当ですか?楽しみだなあ」
「先生の名前は将軍の名前と同名なんだ」
「へえ! 格好良い!」
「二年にもう一人名字が武将の奴がいるよ」
「武将の名字、憧れます!」
雑談に花を咲かせた後、凌の存在を思い出し様子をうかがうと、僕を見て微笑んでいて
途端に恥ずかしくなった。
「律希は本当にこういう世界がすきなんだな」
「だって……面白いし……」
「律希って、好きな物に囲まれて興奮するとほっぺた真っ赤になるの初めて発見できた。昔からそう?」
「えーー!そんなの、知らないょ」
はしゃいでる姿を冷静な目で見られるの恥ずかしい! 凌も自分の好きな何かに入れば良いのに と言おうとしたら
「俺も勉強しようー」
と入る気満々の声が聞こえてきて助言は諦めた。
「とりあえずの仮入部でも嬉しいんだけど、二人はいってくれるの?」
「はい。凌も……?」
「俺も勿論」
差し出された(仮)入部届に、なんと凌が先に名前を書きはじめた。
僕に合わせて部活まで選ぶなんて……と最初は思っていたけど、積極的に署名してるし、退屈そうでもなかったし、地味に勉強できるみたいだからこの間言ってた 受験や内心の足しなるならメリットはあるし
凌が居てくれて、ちょっとホッとしている気持ちもある。見学は一人で平気だけど、もし一年で僕一人だけだったとしたら、流石の僕もこの紙に一人でサインできてたかな? と考える。学年一人で部活に入っている人は一杯い居るだろうけど、僕はいざとなったら勇気がないタイプなのを自分でも知ってるから。
それに正直な気持ち、自分が好きな物を好きになってくれたら、なんか嬉しいと思ってしまう。今までこんな気持ちを共有するに至らず、引っ越しを続けてきた気がする。
元々同じ趣味だとか、同じ漫画が好きだ――とか歌が好きだーって友達と盛り上がった事はあったけど、僕の好きな物に興味を示して好きになってくれた事って誰もなかったな。 向こうが言ってきたらのっかるパターンばっかりで、自分が好きな物を発信して知ってもらった事ってあったっけ……
「初めてかも」
「ん? なんか言った?」
「えっ、なんでもないっ」
凌に独り言を聞かれて、焦って置いてあった武将の扇子で上気した顔を扇いだ。
* * *
「週に数回活動なんだな。良いペース。たまにお出かけあるのも楽しそう」
「そうだね。凌、あの今度さ、凌が中学から好きだって教えてくれたバンドのライブ、一緒に行こうよ」
「え? 律希、知ってんの?結構マイナーだけど」
「ううん、知らなかった。こないだ試聴はしてみたら好きな感じだった」
「ほんと?! ちゃんと聞かせるし、中学ん時は親にライブ行くの禁止されてたし、このバンド誰との話題に出たことないから、言ったこともなかった。律希がもし一緒に行ってくれたら嬉しい!」
「凌も僕と同じだあ」
「何?」
「何でもない!」
-続く-
「しつれいしまーす」
準備室の隣に同じ部屋、研究会と書かれた引き戸を恐る恐る開けた。
「緊張するよな!」
「……そうだな」
初めての所にお邪魔するの、僕は緊張しない。何故なら慣れてるからね!
予定だったら、一人でこの部屋に入るつもりだった。
だけど、後ろに一人居る。幼馴染みが、本当に付いてきた。
コンビニに行くかのような軽いノリで、「入ろっかなー」って言っちゃって、散々説得したけど……無駄だった。
何なら僕よりワクワクしてて、見学の日を先導して決められた。
ノート渡す儀式の時に、一緒に帰ろうと僕から声をかけはしたけど、その日から結局何も言わずとも毎日一緒に帰ってる。バス停までだけど。
クラスの中では二人だけじゃなくてグループでわいわいしてるから薄まってはいるけど、でも絶対に一緒の輪の中に居る。
凌が女子グループにたまに囲まれていても、誰にも気付かれてないけどうっすら視線は感じる。
部活は分かれるもんだと思い込んでた。だけど、素人目に見ても動画の運動神経は凄く良くて、体育の時間も何でもこなしている凌は、帰宅部希望で
僕の部活を聞いた時から、一緒に入る一択になった……
出会った初日、一体この先どうなるのか、って真剣に悩んだけど
一緒に過ごし始めて、そんな悩みは忘れてしまって、不思議と違和感もないし、楽しいし、なんだか色んな気持ちを味わっている気もする。
今まで感じたことがない感覚もある。
ただ、麻痺ってきて分からなくなってる。
実際幼馴染みがクラスにいたとしても、こんなに一緒にいるものなの? 誰かに教えて欲しい!
振り向くと今や家族より長い時間見てる顔が有って。綺麗だなって度々新鮮に感心して。
「早くはいろ」
「あ……うん」
相変わらず握力全開で肩を捕まれて、付き添いの冷やかしのくせに凌に促され、部室に足を踏み入れた。
部室には人数は少ないけど優しそうな先輩たちが居て
「ようこそ! 今年は1年は入部まだなんだ!」
と歓迎された。
部室を見て沸き立った。見たことのない蔵書の数々! 年表や資料書類など真面目な物から、武将グッズや、ご当地の地図など楽しげな物が所狭しと並べられていて
僕は嬉しくなってはしゃいでしまった
「今日は先生最後にしか来ないけど。顧問の先生が日本史の先生なんだよ。先生自体も歴史オタクみたいなところがあるから、知りたいことがあったら聞いてみたら良いよ」
「本当ですか?楽しみだなあ」
「先生の名前は将軍の名前と同名なんだ」
「へえ! 格好良い!」
「二年にもう一人名字が武将の奴がいるよ」
「武将の名字、憧れます!」
雑談に花を咲かせた後、凌の存在を思い出し様子をうかがうと、僕を見て微笑んでいて
途端に恥ずかしくなった。
「律希は本当にこういう世界がすきなんだな」
「だって……面白いし……」
「律希って、好きな物に囲まれて興奮するとほっぺた真っ赤になるの初めて発見できた。昔からそう?」
「えーー!そんなの、知らないょ」
はしゃいでる姿を冷静な目で見られるの恥ずかしい! 凌も自分の好きな何かに入れば良いのに と言おうとしたら
「俺も勉強しようー」
と入る気満々の声が聞こえてきて助言は諦めた。
「とりあえずの仮入部でも嬉しいんだけど、二人はいってくれるの?」
「はい。凌も……?」
「俺も勿論」
差し出された(仮)入部届に、なんと凌が先に名前を書きはじめた。
僕に合わせて部活まで選ぶなんて……と最初は思っていたけど、積極的に署名してるし、退屈そうでもなかったし、地味に勉強できるみたいだからこの間言ってた 受験や内心の足しなるならメリットはあるし
凌が居てくれて、ちょっとホッとしている気持ちもある。見学は一人で平気だけど、もし一年で僕一人だけだったとしたら、流石の僕もこの紙に一人でサインできてたかな? と考える。学年一人で部活に入っている人は一杯い居るだろうけど、僕はいざとなったら勇気がないタイプなのを自分でも知ってるから。
それに正直な気持ち、自分が好きな物を好きになってくれたら、なんか嬉しいと思ってしまう。今までこんな気持ちを共有するに至らず、引っ越しを続けてきた気がする。
元々同じ趣味だとか、同じ漫画が好きだ――とか歌が好きだーって友達と盛り上がった事はあったけど、僕の好きな物に興味を示して好きになってくれた事って誰もなかったな。 向こうが言ってきたらのっかるパターンばっかりで、自分が好きな物を発信して知ってもらった事ってあったっけ……
「初めてかも」
「ん? なんか言った?」
「えっ、なんでもないっ」
凌に独り言を聞かれて、焦って置いてあった武将の扇子で上気した顔を扇いだ。
* * *
「週に数回活動なんだな。良いペース。たまにお出かけあるのも楽しそう」
「そうだね。凌、あの今度さ、凌が中学から好きだって教えてくれたバンドのライブ、一緒に行こうよ」
「え? 律希、知ってんの?結構マイナーだけど」
「ううん、知らなかった。こないだ試聴はしてみたら好きな感じだった」
「ほんと?! ちゃんと聞かせるし、中学ん時は親にライブ行くの禁止されてたし、このバンド誰との話題に出たことないから、言ったこともなかった。律希がもし一緒に行ってくれたら嬉しい!」
「凌も僕と同じだあ」
「何?」
「何でもない!」
-続く-



