追放された転生第7王子、マニアックなスキル【ポーション生成・合成】でぼっちスローライフ満喫……のはずが、作ったポーションが凄すぎて美少女依存者が続出してしまい俺を離してくれない

 「まぁまぁまぁ~ゴマ粒みたいにちっさくなていきますわ♪ さすがお兄様」

 アイリアが吹っ飛ばされていくダムロス大司教を見て、ふふんとその大きな胸を揺らした。

 「とんでもない速さ、それにとてつもない一撃だ……やはりクレイ殿はとんでもないな!」

 横にいたエトラシアも、空を見上げて「ふはぁ」と感嘆の声を漏らす。

 フロンド住民たちからは勝鬨があがり、なんかクレイコールもついでに巻き起こる。
 大歓声が響く中で、俺の背後にシュッと気配が。

 「リアナか、お疲れ」
 「いえ、やるべきことをしたまでです。それよりもクレイ様、着地点まで走り確実に仕留めますか?」

 戦闘侍女のリアナが、メイド服のロングスカートを揺らして俺に問いかけてきた。

 「いや、やめておこうリアナ」

 大司教の飛ばされたあの方角は魔の森だ。

 つい先刻、大司教が広域殲滅魔法で森の一部を焼いている。
 おそらくあの森は、手負いの魔物で溢れかえっているだろう。

 手負いは基本的に危険度が上がる。
 想定外な動きや力を出すことがあるので、絶対になめてかかってはいけない。

 今そんな森へ行くのは、危険が大きすぎる。

 「はい、クレイ様。仰せのままに」

 今にも飛びだしそうだったリアナは、スッと身を引いた。

 さて、サイコ司教のことよりも……

 俺は一人の少女の元へと静かに歩を運んだ。

 その少女は、地べたにぺたんと座ってうつむいていた。
 頬にかかる綺麗な青髪がその顔を隠しており、表情はうかがい知れない。

 「ラーナ」

 「う……うぅ……」

 ゆっくりと顔をあげたラーナは、安心と不安が混在したような表情で、俺の顔を見る。
 脅威が去ったことで冷静な思考回路が戻り、自身の責任を重く受け止めてしまったのだろうか。

 「そう真面目に落ち込むな」

 「だって……」

 「ラーナ、大丈夫だ」

 「だけど、みんなが……」

 「たしかに町の門は壊れちまったし、塀もボコボコの穴だらけだな」

 「そ、そうじゃなくて……」

 彼女は答えに詰まり、視線をさまよわせた。
 ラーナが最も気にかかっていること。まあ、おおよそ予想はつく。

 「クレイ殿下~~」

 そこへマットイさんの声が聞こえてきた。
 せぇ~はぁ~と息を切らしながらも、俺に報告をあげるマットイさん。

 「クレイ殿下! 正門部隊、負傷者はいるものの死者はゼロですぞ!」
 「クレイの兄貴! 西戦闘班もみんな生き残ったぜ!」
 「「東、北戦闘班も同じく! 死人はゼロ!」」

 バッドたちからも元気な声が飛んできた。

 「ほら、大丈夫だったろラーナ」

 「ふあぁ……クレイさん……みんなぁ……よかったぁ」

 安堵のあまり途切れ途切れになる声。喉奥でつかえていたものが、ふっと抜けるように。
 その表情は、いつものラーナに戻り始めていた。

 にしてもよく頑張ったな。
 みんな傷だらけではあるが、死人は出ていないのだ。

 俺の作戦を忠実に守り、無理せずこまめに回復ポーションを飲んでくれたというのもあるが、やはり戦闘メイドのリアナの存在が大きい。
 彼女がフロンド戦闘班の援護に徹底してくれたからだ。その持ち前の俊足を飛ばして、縦横無尽にナイフを振るい、時には投げて。
 あとはティナの援護魔法も戦闘班の危機をいくつも救っている。

 「キャンキャン!」

 「わぁ~~フェルちゃんも無事です~!」

 ラーナに飛びつくちっこい子犬。
 フェルは外壁まわりで、魔術師隊全員を相手に大立ち回りをしてくれた。
 たった一匹で、50人の魔術師相手だからな。さすがのフェルも魔力を極限まで使い果たしたようで、ラーナの膝に飛び込むと速攻で寝息を立て始めた。


 俺はポーション屋敷のメンツ全員と、フロンド住民の安否を確認したのち聖騎士団長と面会する。

 彼らは俺たちへ謝罪したのち、即時撤退を約束した。

 辺境視察の名目で準備されていた物資は、彼らが帰りの分を除きすべて俺たちに譲渡すること。
 また、大司教の馬車から出てきた大量の金貨も没収。
 そして、ラーナの罪に関しては聖教国で無罪を公表すること。
 あと今回の件、表向きは辺境視察の際に賊の急襲をうけたことにする。

 王国が知っても碌なことが起きないのは分かり切っている。
 正体を隠しているとはいえ、死んだことになっている妹(姫)たちもいるし。あの兄はいらん動きしかしないだろうし。

 聖騎士たちも大司教に騙されたのだが、それは彼らの問題だ。当の本人は吹っ飛ばされて行方不明だが、俺たちは関知しない。あとは本国でやってくれ。

 ということで話はついた。

 ふぅ……やっとひと段落ついた。

 「ふぉお~~」
 「お疲れさまですね、クレイさん」

 ラーナが、水筒を渡してくれた。
 どうやら、すっかり元に戻ったようだな。

 「やっぱ、ラーナは笑顔が一番だな」
 「ふふ、そうかもですね」

 くっと水を飲み干して、ぐ~~っと両腕を伸ばす。
 そんなこんなで、一息ついていると。

 待ってましたとばかりに、マットイさんたちが駆けつけてきた。

 「クレイ殿下、負傷者全員分の回復ポーションが足りませんぞ」
 「クレイの兄貴、こっちもだ。補充してもらったポーションが無くなちまった。すまねぇ」

 さらに先ほど面会をした聖騎士団長も、こちらに来て申しわけなさそうに声を出す。

 「その……お約束通りすぐにでも帰国したいのですが……町の外でいいので、一晩野営してもよろしいでしょうか?」

 野営?

 ああ……そういうことか。

 まだ地面から起き上がれない聖騎士も多く、魔術師たちも全員が魔力体力尽き果てている。

 「よし、ならおまえたちのポーションも作ってやる」
 「よ、よろしいのですか? その、我ら全員を元に戻すポーションだけでも大量に作ってますし……あの、クレイ様への負担が……」

 「え? まったく大丈夫だけど」

 俺の即答にキョトンとする騎士団長。
 ラーナがクスクスと笑いながら口を挟む。

 「騎士団長さん、大丈夫ですよ。クレイさんは、ポーション狂いですから」

 てことで―――

 「よし、じゃ聖水たのむわ。ラーナ」
 「はい! クレイさん、いきますよ~~!」


 住民の分と、騎士団の分。すべてのポーションを作りまくるのだった。